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自販機前で、5分弱

最近、

外で何かを落とすと、
すぐには拾えなくなった。

自販機の前で、

小銭を一枚、落とした。

金属が地面に当たる音はした。

でも、どこに転がったのかが分からない。

反射的にしゃがんで、

片手をアスファルトにつく。

昼間の日差しが強くて、

正直、ほとんど見えていない。

足元を探しているつもりなのに、

自分が今、

どこを見ているのかも、はっきりしない。

光が滲んで、

距離感がつかめない。

白と影の境目が溶けて、

小さな円形を探すには、

世界が明るすぎた。

気づくと、

ほとんど這うような姿勢になっていた。

自販機の下。

排水溝の縁。

靴の先。

手で触れた感触を、

一つずつ確かめていく。

通りすがりの人の足だけが、

視界の端を横切る。

声をかけられることは、なかった。

「今、自分は何をしているんだろう」

そう思いながら、

顔を上げることもできず、

手探りを続けた。

時間の感覚は、

そのあたりから曖昧になった。

たぶん、5分弱。

実際はもっと短かったのかもしれないし、

もっと長かったのかもしれない。

ようやく、
指先に硬貨の冷たさが触れたとき、

嬉しさより先に、

ふう、と息が漏れた。

立ち上がるまでに、

少し間が必要だった。

コーヒーは、買わなかった。

なんとなく、そのまま帰った。

こういう出来事を、

わざわざ誰かに話すことはない。

大した失敗でも、

事件でもない。

でも、

こういう「立ち止まる時間」が、

確実に、

日常の一部になってきている。

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