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当たり方が変わった①/笑ってしまっただけだった

散歩中、

眩暈がして、縁石に座り込んだ。

大きな話ではない。

立っていられなくなった、

というほどでもない。

ただ、

そこに座るしかなかった。

しばらくして、

声をかけられた。

女性の声だった。

大丈夫ですか、と聞かれた。

大丈夫です、と言おうとした。

口が、動かなかった。

代わりに、

笑っていた。

なぜ笑ったのか、

今も分からない。

大丈夫と伝えたかった。

弱いところを見せたくなかった。

それは確かだと思う。

でも口は動かなくて、

顔だけが笑っていた。

意識して笑ったわけではない。

気づいたら、

笑っていた。

女性は、

少し困った顔をして。

それでも頷いて、

去って行った。

会話は、

それで終わった。

長い時間ではなかった。

大きな出来事でもなかった。

ただ、

終わったあと、

疲れていた。

疲れたのは、

声をかけられたからではない。

笑っていた自分を、

別の自分が見ていた。

ため息をついている自分が、

そこにいた。

大丈夫と言いたかった自分と、

笑っていた自分と、

それを見ていた自分が、

同じ場所に、いた。

どれが本当の自分だったのか、

帰り道も分からなかった。

身体は、

判断する前に動く。

それはもう知っていた。

手が先に止まる。

足が先に構える。

体が先に反応する。

でも笑うのは、

違うと思っていた。

笑うのは、

もう少し自分が関わっていると、

思っていた。

そうではなかった。

顔も、

判断より先に動いていた。

大丈夫ともNOとも言えないまま、

笑って終わった場面が、

今日あった。

それが正しかったのかは、分からない。

ただ、

女性は去って行った。

自分は立ち上がった。

用事は、

その後も続いた。

笑っていた自分を見ていた自分は、

今もここにいる。

ため息の理由を、

まだ整理していない。

整理する気にも、

まだなっていない。

ただ、

今日もどこかで、

判断より先に、身体が動くだろう。

笑うかもしれない。

止まるかもしれない。

座り込むかもしれない。

そのたびに、

見ている自分が、

いるのかもしれない。

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