【ADHD】僕がワーキングメモリ凸なのに話の要点を忘れるのは"OSのバグ"だった――RAMは高性能、でもプロセス管理が苦手という凸凹な僕の話。
電話を切ったあとに、急に思い出すことがある。
「あ、あれを言うために電話したんだった」
こういう瞬間が、僕には何度もあった。
話す前は覚えている。
ちゃんと目的もある。
今日これを伝えよう、と頭の中では分かっている。
なのに、いざ会話が始まると抜ける。
相手の話を聞く。
相槌を打つ。
自分の説明を組み立てる。
途中で別の質問が来る。
そうしているうちに、最初に持っていたはずの要件が、画面の奥へ引っ込んでしまう。
そして終わったあとで戻ってくる。
会議室を出たあと。
チャットを閉じたあと。
スマホを置いたあと。
そのタイミングで、なぜかはっきり思い出す。
これが地味につらい。
忘れっぽいだけなら、まだ分かりやすい。
でも僕の場合、少し話がややこしかった。
発達障害が分かったあと、WAIS-IVという検査を受けた。
そこで僕のワーキングメモリの数値は141だった。
心理士の先生からは、ADHDでここまで高い人はあまり見たことがない、と言われた。
つまり、単純な意味での「一時的に覚えておく力」は、むしろ強い側に出ていた。
それなのに現実では、牛乳も買い忘れる。
会話の要点も抜ける。
大事な確認事項を、話し終わったあとに思い出す。
この矛盾が、僕にはずっと気持ち悪かった。
「記憶力が悪い」なら話は早い。
でも検査結果だけ見ると、そうでもない。
じゃあ、僕の中で何が起きているのか。
僕の問題は、記憶容量ではなく「最前面に残せない」ことだった
今の僕は、この現象をスマホで考えるとかなり分かりやすいと思っている。
ワーキングメモリは、ざっくり言えば作業台みたいなものだ。
スマホで言うなら、同時にいくつかのアプリを動かすためのメモリに近い。
僕の場合、その作業台は狭くない。
むしろ検査上は、かなり広い。
でも、現実の会話で必要なのは、作業台の広さだけじゃなかった。
どの情報をいま前に出すか。
どの話を後ろへ下げるか。
横から入ってきた質問に、どこまで反応するか。
最初の目的へ、いつ戻るか。
この交通整理が必要になる。
ここで僕はよく詰まる。
会話中の僕の頭では、いくつもの処理が同時に立ち上がっている。
相手の表情を読む。
失礼にならない言い方を探す。
質問に答える。
話が脱線しないようにする。
自分の説明が伝わっているか確認する。
そのどれも、会話では必要なことだ。
ただ、その全部が一斉に前へ出てくると、最初に持っていた「今日これを伝える」という要件が、あっさり後ろへ回る。
消えたわけではない。
なくなったわけでもない。
ただ、会話の最中に取り出せる位置から外れてしまう。
僕が「要点を忘れる」と呼んでいたものの正体は、たぶんここだった。
記憶の棚が空なのではない。
棚の場所は分かっているのに、会話中だけ取っ手が見えなくなる。
だから反省会がいつもズレていた
昔の僕は、終わったあとに反省していた。
もっと集中しないと。
ちゃんと準備しないと。
次は忘れないようにしないと。
でも、この反省はあまり効かなかった。
なぜなら、問題の場所を間違えていたからだ。
僕は「覚えておく力」を責めていた。
でも実際に詰まっていたのは、「覚えているものを必要な瞬間に前へ出す仕組み」だった。
ここを間違えると、対策もずれる。
気合いで覚えようとする。
頭の中で何度も復唱する。
会話前に長いメモを作る。
どれも一見まじめな対策に見える。
でも、会話が始まると、結局また別の処理に押し流される。
頭の中だけに置いた要件は、相手の質問や自分の説明に簡単に埋もれる。
これは意志の弱さというより、置き場所の問題だった。
無料部分で先に渡したい、小さな見直し
もし同じように、話し終わったあとで肝心なことを思い出すなら、まず一つだけ見直してほしい。
その要件を、会話中に見える場所へ置いていたか。
頭の中にあったかどうかではない。
会話の途中で、もう一度拾える場所にあったかどうかだ。
ここを見るだけで、自責の向きが少し変わる。
「なんで僕はこんなに忘れるんだ」ではなく、
「今日の要件は、どこに置いていた?」
と見られるようになる。
要点を忘れる自分を責める前に、要点の置き場所を見る。
僕にとって、この切り替えはかなり大きかった。
記憶力の問題として抱えると、自分を変えるしかなくなる。
でも置き場所の問題として見ると、外に仕組みを作れる。
ここから先で書くのは、その仕組みの話。
会話の前、会話の最中、会話のあと。
それぞれの場所に、小さな外部装置を置いていく。
うまく話せる人になるためではない。
悪い日でも、肝心な要件だけは迷子にしないための運用だ。
ここまでで言葉にしたのは、僕が「記憶力の低い人」ではなかった、ということだ。
問題は、覚えているものを会話の最前面に残す仕組みが弱いことだった。
この先では、その仕組みを頭の外に作る。
話す前に何を一行だけ置くか。
会話中にどこへ戻るか。
言い忘れたあと、どうやって失敗ではなく回収に変えるか。
悪い日でも開ける、小さな運用として書いていく。
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