【ADHD】僕は、「未来の自分との待ち合わせ」が下手なのかもしれない――あの失敗もこの失敗も全部同じ場所でつまずいていた
電話を切ったあとで、ふと思い出すことがある。
「あ、あれを聞くために電話したんだった」
その瞬間、身体の奥が少し沈む。
相手とは普通に話せていた。
会話が止まったわけでもない。
むしろ、ちゃんと受け答えしていた。
でも、本来の用件だけが抜け落ちている。
電話する前には覚えていた。
メモに書くほどでもないと思っていた。
それくらい短い用件だった。
なのに、相手が別の話をした瞬間、僕の頭はそちらに反応する。
相手の事情。
言葉の温度。
話の流れ。
つい返したくなる雑談。
そういうものが前面に出てくる。
最初に持っていた用件は、消えたわけではない。
ただ、画面の奥に隠れる。
そして電話を切ったあとで、突然戻ってくる。
「何をやっているんだ、僕は」
こういう小さな失敗は、地味にこたえる。
大事故ではない。
誰かに怒鳴られるほどでもない。
でも、自分の中に「またか」という感じが残る。
僕は何度も、こういう場所でつまずいてきた。
会話だけではない。
夜中に菓子パンを食べる。
来月の固定費を忘れて、便利そうなサービスに課金する。
作業を中断したあと、次に何をするつもりだったか分からなくなる。
年齢だけ進んでいるのに、自分の中の自己像が少し前の駅で止まっている。
全部、別々の問題に見える。
でも最近、少し見え方が変わった。
もしかすると僕は、
未来の自分との待ち合わせが下手
なのかもしれない。
未来の自分が、現場に来ない
たとえば、夜中に何か食べたくなる時。
頭では分かっている。
夜中に食べれば、明日の朝に身体が重い。
小さな「まあいいか」が続けば、体重計の数字は戻ってくる。
数か月後の僕が、また同じことで困る。
そんなことは、分かっている。
でも、その瞬間の僕の隣にいるのは、明日の僕ではない。
いるのは、疲れた今日の僕だ。
少し甘いものがほしい僕。
強い刺激で一日を終わらせたい僕。
今日をなんとか乗り切ったことに、小さな報酬がほしい僕。
明日の朝の僕は、そこにいない。
だから、分かっているのに食べる。
この「分かっているのに」が、いちばん自分を責めやすい。
理解している。
経験もある。
何度も同じ結果を見ている。
それなのに、その場では未来の自分が見えない。
見えないものは、守れない。
だから僕は、未来の自分との待ち合わせ場所に、平気で遅刻する。
いや、遅刻というより、そもそも予定を忘れている。
お金でも同じことが起きていた
お金でも似たことが起きる。
僕は将来の不安がないタイプではない。
むしろ、かなり考える。
新NISAも調べる。
インデックス投資も調べる。
長期で増やすことの大切さも、理屈としては分かる。
でも、僕にとって本当に大事だったのは、増やすこと以前に、減らさないことだった。
未来の安心のために、お金を置いておく。
これは頭では分かる。
でも、買う瞬間の僕の前にいるのは、数年後の安心ではない。
今すぐ不安を減らしたい僕。
今すぐ楽になりたい僕。
今すぐ便利になりたい僕。
一つひとつの出費は、破滅的ではない。
数千円。
数百円。
ちょっとした課金。
便利そうな道具。
仕事に使うから、という自分に都合のいい理由。
でも、その場に未来の自分はいない。
来月の僕が固定費を見てどう感じるか。
数年後の僕が「あの時に残しておけば」と思うか。
疲れた日の僕が、残高の少なさにどれだけ削られるか。
そういう未来の僕が、レジ前に来ない。
ここでも、僕は待ち合わせに失敗している。
これは意志ではなく、集合場所の問題だった
こうして見ていくと、問題は「分かっていないこと」ではなかった。
むしろ、分かっている。
夜中に食べると翌朝つらい。
小さな出費は積み上がる。
電話の用件は、最初に確認したほうがいい。
仕事を中断するなら、再開場所を残したほうがいい。
知識はある。
でも、その知識が現場に来ない。
今この瞬間の刺激や不安や会話の流れが強すぎて、未来の自分が押し流される。
これを「意志が弱い」で片づけると、反省しか残らない。
また食べた。
また買った。
また聞き忘れた。
また再開できなくなった。
でも、少し見方を変えると、これは待ち合わせ場所の問題に見えてくる。
未来の自分を、頭の中で待たせていた。
これがそもそも無理だったのかもしれない。
疲れた時の頭の中は、人が多すぎる駅前みたいなものだ。
刺激が多い。
音が多い。
その場の用事が次々に割り込んでくる。
そこに「未来の自分」という相手を立たせておいても、すぐ見失う。
必要なのは、もっと分かりやすい集合場所だった。
頭の中ではなく、外に置いた目印だ。
ここまでで言葉にしたのは、僕が未来の自分を大事にしていなかったわけではない、ということだ。
大事にしたかった。けれど、その未来の自分を現場へ連れてくる場所が弱かった。
この先では、未来の自分を頭の中で待たせるのをやめる。
食べる、買う、話す、仕事を再開する。そういう生活の場面に、未来の自分が迷わず来られる目印を置いていく。
この記事は、有料マガジン
「ADHD生活実装パック」にも収録しています。
ADHDを治すのではなく、
ADHD脳のまま暮らしやすくするために、
起動、集中、過集中、休息、睡眠、ダイエット、お金の失敗を
「仕組み」で見直す記事をまとめたマガジンです。
現在、25本収録で 2,500円。
1本あたり100円です。
この記事だけでなく、ADHD生活全体の詰まりをまとめて整理したい方は、
マガジンで読むほうがお得です。
ここから先は

普通ができない人の構造翻訳アーカイブ Vol.1
▶︎「頑張ってるのに報われない」を構造で解く。発達凸凹のキャリア論まとめ。 原因の切り分け → 再設計の手順 → テンプレまで入っています。

ADHD対策パック
▶︎ ADHDを”治す”のではなく、ADHD脳のまま暮らしやすくするための実装集です。起動、集中、過集中、休息、睡眠、ダイエット、お金の失敗…
よろしければ応援お願いします! いただいたチップはクリエイターとしての活動費に使わせていただきます!
