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【ADHD】情報を収集するほど脳が混乱する人へ――あなたに必要なのは記憶力ではなく「認知の水門」だ

スマホを閉じたあとも、頭の中だけがまだスクロールしていることがある。

ほんの少しSNSを見た。
ニュースを少し眺めた。
仕事の調べものも少しだけした。

大した情報収集をしたつもりはなかった。

それなのに、画面を閉じたあと、頭の中がざわざわしている。

読んだ言葉が残っている。
誰かの意見も残っている。
少し不安になるニュースも残っている。
あとで読むに入れた記事の存在も残っている。

情報は入った。

でも、落ち着かない。

頭の中に棚が増えた感じではなく、床に紙が散らばった感じに近い。

ブックマークは増える。
スクショも増える。
あとで読むも増える。

なのに、それらが自分の考えにつながっていく感触がない。

むしろ「まだ処理していないもの」が増えた感じだけが残る。

僕は長いあいだ、これを自分の情報処理能力の低さだと思っていた。

読むのが遅い。
整理が下手。
記憶力が足りない。
今の時代の速度についていけない。

そういう反省会を、何度も頭の中で開いていた。

でも、今は少し違う見方をしている。

問題は、情報に弱いことではなかった。

僕の頭に、情報が入りすぎる入り口が開きっぱなしだった。


情報は、多いほどいいと思っていた

昔の僕は、かなり素直に「情報は多いほうがいい」と思っていた。

たくさん読めば、知識が増える。
良い記事を読めば、考えが深くなる。
SNSで話題を追えば、世の中に置いていかれずに済む。

そう思って、気になるものを見つけるたびに読もうとした。

仕事に関係しそうな記事。
発達障害についての投稿。
心理学の話。
AIの話。
誰かの成功談。
誰かの鋭い考察。
少し不安になるニュース。

どれも、見た瞬間は役に立ちそうに見える。

実際に役に立つものもある。

だから、余計に切れなかった。

全部が無駄なら、まだ閉じやすい。

でも、たまに本当に大事なものが混ざっている。

今見ておいたほうがいいかもしれない。
あとで役に立つかもしれない。
知らないままだと損をするかもしれない。
他の人はもう知っているかもしれない。

そうやって追いかけるほど、頭が疲れていく。

情報は増えているはずなのに、自分の足場は増えない。

頭の中に、未処理の切れ端だけが積み上がっていく。

これが、僕にはずっとあった。

記憶力の問題では説明がつかなかった

少し前、僕は自分がADHDではないかと思って検査を受けた。

そのとき、主治医の勧めでWAIS-IVという検査も受けた。

結果を見ると、ワーキングメモリのスコアは141だった。

かなり高い数字らしい。

正直、少し笑ってしまった。

生活の実感と、あまりにも逆だったからだ。

ワーキングメモリは、頭の中で情報を一時的に持っておく力だと説明される。

それが高いなら、なぜ僕は情報でこんなに疲れるのか。

なぜ少し読むだけで頭がいっぱいになるのか。

なぜSNSやニュースを見たあと、元の作業へ戻れなくなるのか。

しばらく、このズレが分からなかった。

でも、自分の反応を見ているうちに、少しずつ見えてきた。

僕は、情報をまったく持てないわけではない。

むしろ、その場ではいろいろ持ててしまう。

情報が入ってくると、僕の頭はそれだけを処理しない。

関連する記憶が出てくる。
自分の感情も動く。
他人との比較も混ざる。
不安や焦りも乗ってくる。
あとで読むものや、今やるべき作業のことまで片隅で抱えようとする。

つまり、僕の問題は容量の小ささだけではなかった。

入り口から入ってきた情報に、いろいろなものが連結してしまうことだった。

一つの記事を読んだだけのはずなのに、頭の中では十本くらいの枝が同時に伸びる。

だから疲れる。

だから戻れなくなる。

だから、情報収集をしたあとに、何かを得た感じより、散らかった感じが残る。

必要だったのは、認知の水門だった

あるとき、これは水に似ていると思った。

水は必要だ。

でも、一度に大量に流れ込んできたら、生活は壊れる。

田んぼに水は必要でも、家の中まで流れ込んできたら困る。

情報も同じだった。

学ぶことは大事だ。
調べることも大事だ。
新しいことを知るのも楽しい。

でも、入り口を開けっぱなしにすると、頭の中が氾濫する。

僕に必要だったのは、もっと速く読むことではなかった。

もっと記憶することでもなかった。

情報の水門を作ることだった。

今は開けていいのか。
どの話題だけ入れていいのか。
今日は閉じたほうがいいのか。

それを、読む前に決める。

この見方に変えたとき、少しだけ自責が止まった。

僕は情報に弱い人間なのではなく、情報の流量を調整しないまま暮らしていた。

水門のない水路に、大量の水を流し込んでいた。

それなら、溢れるのは当然だった。

「気になる」は、今読む合図ではない

この見方でいちばん変わったのは、「気になる」の扱いだった。

昔の僕は、気になるものを見つけるとすぐ読んでいた。

面白そうだから。
役に立ちそうだから。
不安だから。
置いていかれそうだから。

そういう理由で、すぐ水門を開けていた。

でも、気になることと、今入れていいことは違う。

ここを混ぜると、僕の頭はすぐ濁る。

とくに、感情を強く動かす情報は残りやすい。

怒り。
不安。
羨ましさ。
焦り。
自分との比較。

画面を閉じても、余韻だけが頭の中で回り続ける。

そして、元の作業へ戻れない。

だから今は、気になるものを見つけたとき、すぐには読まない。

まず見るのは、その情報の価値ではない。

今の自分の水路に、それを流していいかだ。

この先で書くのは、その水門を生活の中に置く話だ。

情報を嫌いになる話ではない。

世界から目を閉じる話でもない。

必要な情報が、自分の中で氾濫しないように、入り口の開け方を決める話だ。


ここまでで言葉にしたのは、情報収集で混乱するのは、能力不足だけではなかったということだ。

問題は、情報を入れる前に水門がなかったことだった。

この先では、読む前に止まるための小さな仕組みを作る。

悪い日でも、何を閉じればいいかが見えるようにする。

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