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2Eギフテッドの僕が、社会のレールから外れ続けた理由――「普通」というOSが合わなかった30年

つい最近まで、僕は自分のことを「社会不適合者」だと思っていた。働くたびに、どこかで体が止まる。組織に入るたびに、何かが噛み合わなくなる。周りの友人たちは、会社に勤め、結婚し、家を建て、人生の線路をまっすぐ進んでいるように見えた。その横で、僕だけが何度も脱線していた。

幼稚園を中退し、小学校では「聞いていないように見えるのに、当てられると答えてしまう子」だった。中学では、ほとんど勉強しないのに成績だけは上位だった。高校では、校則に書いていないからという理由で、入学式に真っ赤な靴下を履いていった。卒業後は、鉄工場のアルバイトを三か月も続けられなかった。

そのあと、電話帳をめくってソフトウェア会社に片っ端から電話をかけた。拾ってくれた小さな会社でプログラマーになったけれど、大手SIerの下請けプロジェクトで心身が限界に近づいた。独立して、フリーランスになった。講師もした。翻訳もした。文章も書いた。それでも、いつもどこかで「普通のルート」から外れていた。

長いあいだ、僕はこれを自分の欠陥だと思っていた。でも今は、少し違う見方をしている。僕は特別な人間だったわけではない。ただ、社会というOSの設計思想と、僕の脳の構造が、かなり違っていた。そしてその違いを、僕はずっと「自分が壊れている証拠」として読んでいたのだと思う。


幼稚園から、レールに乗れていなかった

僕がレールに乗れなかったのは、小学生からではない。たぶん、もっと前だ。幼稚園のことはほとんど覚えていない。ただ、幼稚園を中退したことだけは残っている。この時点で、すでに普通の入口から少し外れていた。

小学校の教室は、僕にとってかなり苦しい場所だった。一度聞けば分かる内容を、何度も繰り返す授業。みんなと同じ速度で進む時間。分かっているのに、分かっていないふりをして座っている感じ。じっとしているだけで、頭の奥がむずむずしてくる。

大人たちは、僕を「集中力がない」と見た。でも、図書室では違った。SF小説、推理小説、辞典。そこにある論理や構造の前では、僕は何時間でも集中できた。つまり、集中力がないのではなかった。集中する対象と、学校が求める態度が噛み合っていなかった。

この違いは、子どもには説明できない。だから、自分が悪いことになる。「聞いていないように見える」「落ち着きがない」「変わっている」。そう言われるたびに、僕は少しずつ、自分の感じ方を疑うようになった。

「分かる」と「従える」は、別の能力だった

中学では、ほとんど勉強しなかった。それでも、成績は上位だった。テストの点は、僕にとって競争の道具ではなかった。問題の構造を理解できたかどうかを確認する副産物だった。だから、周りが燃えているほどには燃えなかった。

順位を上げたいわけではない。誰かに勝ちたいわけでもない。ただ、解けるものを解いているだけだった。この感覚は、学校の中ではかなり浮く。学校という場所では、能力そのものより、能力を「学校が求める形で見せること」が大事になるからだ。

授業を聞いているように見せる。提出物を出す。先生の意図を読む。みんなと同じ速度で進む。僕は、内容は理解できても、その作法にはうまく乗れなかった。高IQっぽい処理があっても、社会的な作法が自動でついてくるわけではない。

ここを混ぜられると、かなり苦しくなる。「分かるなら、ちゃんとできるはず」と見られる。でも、分かることと、従えることは別の能力だった。僕の人生では、この二つがずっと分離していた。

真っ赤な靴下は、僕のOSの説明書だった

高校入学前の説明会の日、僕は生徒手帳を読んでいた。そこで、靴下に関する規定が書かれていないことに気づいた。中学では「白無地のみ」という校則に、どうにも納得できなかった。だから僕は、書いていないなら何色でもいい、と思った。

そして、真っ赤な靴下を買った。よりによって、入学式の日にそれを履いていった。体育館に入るには、靴を脱ぐ必要がある。僕は、その時点でもまだ気づいていなかった。

まずい、と悟ったのは、「入学生代表挨拶」と呼ばれた瞬間だった。壇上に上がる。学ラン。真っ赤な靴下。体育館がざわつく。そのざわつきの意味を理解した瞬間、背中に冷たいものが走った。

僕は目立ちたかったわけではない。反抗したかったわけでもない。ただ、ルールに書かれていなかったから、許可されていると思った。それだけだった。でも、社会では「書かれていないルール」が山ほど動いている。

ここで僕は、たぶん初めて大きくぶつかった。僕のOSは、明文化されたルールを読む。周りのOSは、場の常識を読む。どちらが正しいという話ではない。読んでいる場所が違った。この赤い靴下は、ただの恥ずかしい思い出ではない。僕が社会のレールから外れ続ける理由を、かなり正確に説明している。

「誰でもできる」は、僕にもできるではなかった

高校卒業後、僕は鉄工場でアルバイトを始めた。「誰にでもできる簡単な仕事だよ」と言われた。でも、そこは僕にとって小さな地獄だった。

油の匂い。金属音。同じ部品。同じ手順。同じ時間。数週間もすると、頭の中で何かが静かに錆びていく感じがした。体は動いている。でも、心だけが取り残される。このままだと、自分が人間ではなくなってしまうかもしれない。そんな予感が、毎日少しずつ重くなった。

三か月も経たないうちに、僕は工場を去った。このとき、はっきり分かった。「誰でもできる」と「僕にもできる」は違う。これは怠けの話ではない。仕事の難易度の話でもない。脳が耐えられる条件の話だった。

単純で、意味が見えず、変化が少なく、裁量がない。この条件が重なると、僕はかなり早く止まる。世の中では「簡単」と呼ばれる仕事が、僕には簡単ではなかった。ここを間違えると、「みんなできるのに、自分だけできない」という自責が始まる。でも、正確には少し違う。その仕事が僕のOSに対応していなかった。それだけのことだった。

電話帳をめくって、別の入口を探した

工場を辞めたあと、僕は考えた。自分には何が残っているのか。体を使う仕事は向いていない。でも、考えることなら少しはできるかもしれない。学生時代に少しだけ触れたコンピュータの世界を思い出した。そこには、論理と構造があった。意味がある。理由がある。仕組みがある。それなら、この壊れかけた自分でも、何とかなるかもしれない。

僕は電話帳をめくった。ソフトウェア開発会社に、片っ端から電話をかけた。三十社以上に断られた。でも、心は完全には折れなかった。折れている場合ではなかった。そのときの僕には、それが唯一残された入口に見えていた。

やがて、社員三人の小さなソフトウェア会社が拾ってくれた。社長は、僕の無謀な電話を面白がってくれた。最初はアシスタントだった。マニュアルを作った。テストをした。コードを読んだ。少しずつ、仕事が形になっていった。

でも、その先でまた壁に当たる。大手SIerの下請けプロジェクトに入ったとき、仕事は「仕様書をコードに翻訳するだけ」に近づいた。意味が薄くなる。裁量が消える。睡眠不足が続く。携帯の着信音が怖くなる。朝になると腹痛が来る。顔が真っ青だと言われる。それでもリリースまで踏ん張った。

打ち上げの席で、社長に言った。「しばらく、休みをもらえませんか」。社長は少し黙ってから、こう言った。「フリーランスってのは、どうだ?」その言葉で、僕の中の何かが静かに動いた。会社員として壊れるなら、働き方そのものを変えればいい。それは、当時の僕にとって初めての再設計だった。

高IQ × ADHDは、レール適応の能力ではなかった

独立してしばらく、僕は古巣の仕事を続けた。自分のペースで働けることが、どれだけ大きいかを初めて知った。仕事があるときは集中する。終わったら休む。意味が見える仕事なら、深く潜れる。裁量があるなら、かなり動ける。

もちろん、現実は甘くない。仕事が途切れる不安もある。派遣会社に登録しても、「大卒以上」で門前払いされることもあった。それでも、自分で問題を解く余地が残っているだけで、僕は少し生き返った。

その後、専門学校の講師を頼まれた。翻訳会社に採用された。プログラミング講師としてテレビ出演したこともあった。評価されたのは、いつも構造を読み解く力だった。複雑なものを分解する。仕組みとして説明する。言葉に変える。ここでは、僕の脳は動いた。

でも同時に、安定や協調や集団の作法は、最後までよく分からなかった。できることが増えるほど、できないことも目立つ。この矛盾が、僕をずっと苦しめていた。

三十代のある時、放課後等デイサービスの新規プロジェクトに関わった。その経験をきっかけに、僕は自分がADHDなのだと確信した。しばらくは、特性の名前が分かったなら自分でハックすればいいと思っていた。でも年齢を重ねるにつれて、ハックだけではどうにもならないことが増えた。

そして数年前、心療内科で検査を受けた。そこで分かった。僕は、WAIS-IVの全般性IQが136だった。同時にADHD的な困りごとも抱えていた。いわゆる「ギフテッド2E」と呼ばれるような構造だった。結果を聞いたとき、安心と虚しさが同時に来た。やっぱりそうだったのか。でも、だから何だというのだ。三十年探していた自分のバグが、数行のスペック表で説明されてしまったような感じがした。

ただ、そのあとで少しずつ見方が変わった。僕が戦っていた相手は、社会そのものではなかった。自分の能力でもなかった。僕が書き換える必要があったのは、「レールに乗れない自分は欠陥品だ」という読み方だった。

高IQ × ADHDは、レール適応のための能力ではない。探索し、構造化し、意味を見つけ、自分で入口を作るための回路だった。それを、ずっと学校や会社のレールの上で使おうとしていた。だから外れ続けたのだと思う。

noteは、僕のデバッグコンソールだった

僕がnoteを書き始めた理由は、たぶん孤独だった。自分の構造を理解しても、現実の中では相変わらず浮いていた。同じ構造を持つ誰かと、言葉を交わしたかった。

文章を書くことは、僕にとって自己修復のプロセスだった。頭の中で散らばったログを拾う。バグを見つける。原因を切り分ける。もう一度、自分のOSを組み直す。noteは、僕にとって心のデバッグコンソールだった。

そして、もし誰かがこのログを読んで、「この人のバグ、僕のと似ている」と感じてくれるなら。その瞬間、僕は少しだけ一人ではなくなる。たぶん、僕が書き続けている理由はそこにある。

これは自己弁明ではない。再構築の記録だ。社会のOSと互換性がない者として生きてきた僕が、自分のOSを設計し直すための長いログだ。

もし昔の僕みたいに、「自分はどこか壊れている」と思っている人がいるなら、まず疑ってほしい。壊れているのは、自分そのものではないかもしれない。今走らされているレールと、自分のOSの組み合わせかもしれない。

OSではなく、レールのほうを選び直す。980円です

壊れているのは、自分そのものではないかもしれない。いま走らされているレールと、自分のOSの組み合わせかもしれない。ここまでで、疑う先は変わったと思う。

ただ、疑う先が変わっても、明日のレールは変わらない。そして、たいていの人はもう一つ重いものを抱えている。

経歴に穴がある。

外れ続けた分だけ、空白や短い在籍や畑違いの転職が並ぶ。これを説明しようとすると、言い訳になる。言い訳になるから、面接でも職務経歴書でも、そこだけ小さく書いて通り過ぎようとする。外れた事実そのものより、外れたことを説明できないことのほうが、次の一歩を止めているように思う。

でも、あの空白は、合わない環境を実地で確かめた記録でもある。

「三年ブランク」ではなく、「その三年で、自分が動けなくなる条件が分かった」

盛っていない。順番を変えただけだ。同じ経歴が、欠落ではなく航路の記録になる。

この先で渡すのは、診断名の解説ではない。自分のOSを読み直すための作業台だ。壊れやすい条件と動ける条件、仕事の選び方、経歴の見せ方、副業の入口、AIを外部装置として使う方法、悪い日の再起動メモまで置いている。経歴の穴を言い訳のまま抱える年数より、980円のほうが安いと思う。

ここで閉じても大丈夫な人から書く。

  • 僕の人生の続きを読むだけで満足な人

  • 高IQやADHDの一般論だけ知りたい人

  • 「自分は特別だ」と確認したいだけの人

  • 具体的に働き方や環境を変えるつもりがない人

  • ログやテンプレを使う予定がない人

この先が要るのは、同じ形で外れ続けてきた人だ。

  • 学校、会社、副業で、なぜか同じようにレールから外れる人

  • 頭は回るのに、生活や仕事の運用で崩れやすい人

  • 「誰でもできる」が自分にはできず、自責してきた人

  • 自分のOSに合う働き方、収入口、環境条件を見直したい人

  • 悪い日に開ける、再起動用のメモが欲しい人

次に職務経歴書を開いたとき、穴を埋めにいくか、航路として書くかだ。

この記事は、有料マガジン「発達凸凹のキャリア設計—「頑張ってるのに報われない」を変える」にも収録しています。

ADHD、ASD、高IQ、過剰適応、熟考型など、「普通の働き方」で報われにくかった人のために、努力不足や根性論ではなく、自分の特性をどの市場、環境、働き方に置けば価値に変わるのかを考えるマガジンです。

会社員、副業、フリーランス、リモートワーク、AI活用、値付け、売り込みへの抵抗まで、DASHI自身の経験と構造思考で整理した記事を25本収録しています。この記事単体ではなく、働き方全体の詰まりをまとめて見直したい人は、マガジンで読むのがおすすめです。

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