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ADHDの散らかった記憶の片付けはObsidianで――"ゆるツェッテルカステン"ではじめる脳内"汚部屋"の掃除機かけ

僕は何度も、同じ技術記事を読み返していた。

画面にはコードがある。
ブラウザには解説記事が開いている。
エディタには、さっきまで読んでいたはずの単語が並んでいる。

それなのに、頭の中では何もつながっていなかった。

一文ずつは読める。
言葉の意味も、まったく分からないわけではない。

でも、記事を二本、三本と読んだあたりで、急に頭の中がいっぱいになる。

新しい情報が入ってくるたびに、置き場所のない紙袋が玄関に積まれていく感じがあった。

僕は長いあいだ、これを記憶力の悪さだと思っていた。

プログラミングは小学校低学年から触っていたし、プログラマーとして約30年、コードを読む仕事もしてきた。

それでも、新しい情報がまとまって入ってくると、あっという間に頭が詰まる。

だから、自分にかなり腹が立っていた。

なんで覚えられないんだ。
なんで前に読んだこととつながらないんだ。
なんで頭の中だけ、いつも散らかっているんだ。

記憶力ではなく、置き場所の問題だった

このnote連載を続ける中で、僕は「認知負荷」という言葉に出会った。

難しく言うと、何かを考えたり覚えたりするときに脳へかかる負担のことだ。

日常語にすると、頭の作業台の上に、同時にどれくらい物を広げているかという話になる。

僕の場合、この作業台がすぐ埋まる。

しかも問題は、作業台の狭さではなかった。

作業台の奥にあるはずの棚も、ぐちゃぐちゃだった。

新しい知識が入ってきても、どの棚に置けばいいのか分からない。
前に読んだことと、今読んでいることの住所がつながらない。

だから、情報が入るたびに、頭の中で荷物が増えていく。

僕は圧倒的に左側だった。

この図を見たとき、僕はかなり腑に落ちた。

僕の脳は、空っぽなのではなかった。

むしろ、物が多すぎる。

ただ、置き場所が決まっていない。

記憶力が弱いというより、頭の中の部屋にラベルの貼られていない段ボールが積み上がっている。

これが、僕の「脳内汚部屋」だった。

Notionは書斎、Obsidianは床に広げる場所

そのころの僕は、メモアプリとしてNotionを使っていた。

もっと前はEvernoteもかなり使っていたし、メモアプリ自体は好きなほうだと思う。

Notionは今でも優秀だと思っている。

きれいなデータベースを作れる。
ページを整理できる。
まとまった資料を置くにはかなり強い。

でも、僕の脳内汚部屋を片付ける道具としては、少しだけ重かった。

頭に何かが浮かぶ。
すぐ書きたい。
でも、開くまでに少し間がある。

この「少し」が、僕には大きかった。

あれ、何を書こうとしたんだっけ。

そう思った瞬間、思考の欠片はどこかへ行く。

そして、「何かを書こうとしていた気配」だけが、頭の中に残る。

これが地味に疲れる。

一方で、Obsidianはローカルファイルで動く。

僕の環境では起動が軽く、思いついたことをそのまま投げ込める。

きれいに書かなくていい。
ページを作り込まなくていい。
まず床に出せる。

僕の中で、Notionは書斎になった。

Obsidianは、散らかったものをいったん床に広げる場所になった。

この違いは、かなり大きかった。

書斎に入るには、少し姿勢を整えたくなる。

でも、片付けの最初に必要なのは、姿勢を整えることではない。

まず、頭の中にあるものを外へ出すことだった。

ツェッテルカステンは、ADHDには荷が重い

Obsidianを使い始めてから、僕は「Zettelkasten(ツェッテルカステン)」というメモ管理手法を知った。

メモを細かく分け、相互にリンクさせることで、新しいアイデアを生み出す。

それは、かなり魅力的に見えた。

David B. Clear - David B. Clear, Zettelkasten — How One German Scholar Was So Freakishly Productive, in: The Writing Cooperative, 31 December 2019, CC 表示-継承 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=90819394による

僕は「これだ」と思った。

でも、すぐに手が止まった。

メモの粒度はこれでいいのか。
タグの表記揺れを直したほうがいいのか。
リンクは多いほうがいいのか。
一つのノートに一つの概念だけを書くべきなのか。

片付ける前に、分別ルールを完璧に作ろうとしていた。

汚部屋の床に物が散らばっているのに、ゴミ袋の色分けと収納ケースのラベルに悩んでいる。

そんな状態だった。

ここでようやく思い出した。

僕がObsidianを使い始めた目的は、立派な知識管理システムを作ることではなかった。

脳内汚部屋を、少しだけ歩ける状態にすることだった。

だから、僕は厳密なZettelkastenをいったん諦めた。

代わりに、かなり雑な「ゆるツェッテルカステン」にした。

つまり、格好いい知識管理術ではなく、頭の中に積み上がった紙袋を、まず床へ出すための掃除機みたいなものだ。

片付けは、分別より先に床を出す

ここまでで言いたいのは、散らかった思考は人格のだらしなさだけではない、ということだ。

頭の中に置いたままにするから重くなる。

置き場所が見えないから、何度も同じ情報にぶつかる。

だから最初に見るべきなのは、記憶力の強さではない。

頭の外に、いったん置ける床があるかどうかだ。

この先では、僕がObsidianをどう使っているかを書く。

ただし、設定自慢でも、完璧なZettelkasten講座でもない。

悪い日でも開けるくらい雑で、でも確実に脳内の床が少し見えるようになる運用だ。


ここまでで言葉にしたのは、僕の記憶が壊れていたのではなく、置き場所がなかったのかもしれない、ということだ。

この先では、Obsidianを「知識の宮殿」ではなく、脳内汚部屋の掃除道具として使う手順に落とす。

悪い日でも、最初の一行だけは外へ出せるようにするように設計した。

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