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ミサイルで本当に国防ができるのか?


①本来やるべきことは、食料・エネルギー・人を守ることではないか

日本はアメリカから巡航ミサイル「トマホーク」を最大400発導入する予定です。米国側のFMS承認額は最大23.5億ドル。日本側の防衛装備庁資料では、取得費1,694億円、維持整備費899億円、廃棄費198億円、合計2,791億円というライフサイクルコストが示されています。これは最大400発、約30年運用を前提にした試算です。(U.S. Department of War)

もちろん、ミサイルがまったく不要だと言いたいわけではありません。国防には抑止力も必要です。しかし、ここで考えたいのは「ミサイルを買うことが、本当に日本の安全保障の中心でいいのか」ということです。

②国を守るとは、領土を守ることだけではありません。

そこに住む人の暮らしを守り、子どもが生まれ、育ち、食べるものがあり、電気や燃料が途切れず、地域が維持されることでもあります。もし国の中で人が減り、貧困が広がり、食料もエネルギーも外に依存し続けるなら、ミサイルを持っていても、国の土台そのものが弱くなっていきます。

実際、日本の少子化は深刻です。2024年の出生数は68万6,173人で、統計開始以来最少。合計特殊出生率は1.15まで下がりました。死亡数から出生数を差し引いた自然減は91万9,205人で、18年連続の自然減です。これは、単なる人口問題ではなく、将来の働き手、地域社会、税収、社会保障、そして国防を支える人そのものが減っているということです。

③では、トマホーク関連の2,791億円という予算が、生活や社会基盤に使われた場合、どのくらいの規模になるのでしょうか。

児童扶養手当は、ひとり親家庭などを支える重要な制度です。令和8年度予算案は1,532億円で、対象者は約77.8万人とされています。2,791億円は、その約1.8年分にあたります。(CFA Japan)

一方で、生活保護全体は国庫負担だけで2兆7,927億円あります。つまり、2,791億円でも生活保護本体を大きく変えるほどの金額ではありません。しかし、生活困窮者自立支援、住まい支援、一時生活支援、ひきこもり支援などの予算531億円と比べると、約5.3年分になります。

ここが大事な点です。2,791億円は、社会保障全体を丸ごと変えるほどの金額ではありません。しかし、ひとり親支援、家賃補助、こども食堂、フードバンク、住まい支援、断熱改修、地域の脱炭素化といった「目的を絞った政策」には、数年から数十年分の規模になります。

たとえば住宅の断熱支援です。環境省の住宅脱炭素化支援事業は令和8年度予算案で80億円です。2,791億円はその約35年分にあたります。断熱改修の補助上限を1戸120万円とすれば、単純計算で約23万戸分になります。これは、単なる温暖化対策ではありません。冬の寒さ、夏の暑さ、光熱費の負担を減らし、高齢者や子どもの健康を守る政策でもあります。

地域脱炭素推進交付金は270.18億円です。2,791億円はその約10年分です。地域で太陽光、蓄電池、省エネ、公共施設のエネルギー自立を進めることは、温暖化対策であると同時に、有事や災害時に地域が生き残るためのインフラ整備でもあります。

④そして、もう一つ大きな論点があります。日本の本当の弱点は、食料とエネルギーを海外に依存していることです。

日本の貿易貨物は、重量ベースで99.6%が海上輸送です。輸入貨物は重量ベースで82.1%を占め、その多くはエネルギー資源や原材料です。つまり、日本は海が止まると、生活も産業も非常に大きな影響を受けます。

エネルギー自給率も低いままです。2023年度の日本のエネルギー自給率は15.2%です。発電構成では、火力発電が68.6%を占めています。日本は石油、石炭、LNGなどの化石燃料を大きく輸入に頼っており、原油は9割以上を中東に依存しています。(経済産業省)

食料自給率も同じです。2024年度の日本の食料自給率は、カロリーベースで38%、生産額ベースで64%です。食べる量のうち、国産でまかなえているカロリーは4割に届いていません。(農林水産省)

この状態で「国防」を考えるなら、ミサイルだけでは不十分です。海上交通が乱れたとき、輸入燃料が減ったとき、飼料・肥料・小麦・大豆が入ってこなくなったとき、国内でどれだけ食べられるのか。どれだけ電気をつくれるのか。病院、学校、自治体、避難所、農業、物流をどれだけ維持できるのか。これこそが、本来の国防の核心ではないでしょうか。

農林水産省の「水田活用の直接支払交付金等」は、麦、大豆、飼料作物、米粉用米などを支援する制度で、令和8年度予算案は2,752億円です。トマホーク関連の2,791億円は、ほぼこの1年分に相当します。つまり、同じ規模の予算があれば、輸入依存度の高い麦・大豆・飼料作物の国内生産を支える政策を、かなり大きく進めることができます。

さらに、フードバンクやこども食堂、買い物困難者支援などの食品アクセス支援は、資料上の当初予算が4.35億円、補正が6億円です。2,791億円は、当初予算と補正を合わせた規模の約270倍になります。

⑤ここに、今の日本の優先順位の歪みが見えます。

ミサイルを持つことは、敵に攻撃を思いとどまらせるための一つの手段です。しかし、ミサイルは子どもの食事を増やしません。家賃を払えない家庭を救いません。冷暖房費を下げません。小麦や大豆を国内で育てません。原油やLNGの輸入依存を減らしません。

私が考える国防とは、攻撃する力だけではありません。
国防とは、飢えないこと。
凍えないこと。
子どもが生まれ、育つこと。
地域に人が残ること。
災害や有事でも、食料とエネルギーが途切れないこと。
つまり、国を守るということは、武器を持つことだけではなく、人が生き続けられる基盤を守ることでもあるのだと思います。

⑥もし日本が本当に守るべきものを考えるなら、防衛費の一部を、食料自給率、エネルギー自給率、子育て、住まい、貧困対策、地域の自立に向けるべきです。

ミサイルで国は守れるのか。
一部は守れるかもしれません。
しかし、ミサイルだけでは国は続きません。

本来やるべき国防とは、武器を増やすことだけではなく、この国で暮らす人が生きていける基盤を強くすることではないでしょうか。

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