ショートショート チョコニート
冷凍庫の中でチョコレートは憤慨していた。ガナッシュの風味は失われ、艶やかなコーティングはくもり始めている。
「『ハッピーバレンタイン』?」
すぐ隣でカップアイスがチョコレートの包みを読み上げて口をつぐんだ。今日は15日なのだ。昨日ハルカさんが「やっぱ告白なんてムリ」と言いながらチョコレートを冷凍庫に突っ込んだ。カップアイスが優しく言った。
「そのうち出番があるよ」
チョコレートは無視した。もう冷凍庫からは出ない。14日以外に食べられるなんて恥だ。お前に何が分かる。
3月になった。カップアイスはもういなかった。真っ赤に目を晴らしたハルカさんが、冷凍庫から冷たくなったチョコレートを取り出した。
「ちゃんと告白しとけば良かった!」
乱暴にチョコレートを口に放りこむ。おいしいと呟いて鼻を啜って、わんわん泣きだした。
変な気持ちだ。チョコレートは思った。カップアイスなら分かってくれるだろうか。ちゃんと話しておけば良かった。
ショートショートNo.750
たらはかに(田原にか)さんの毎週ショートショートnoteに参加しています。
今週のお題は「書庫冷凍」、裏お題は「チョコニート」です。
バレンタイン特別企画として、メンバーシップのメンバーの方の自選作品をご紹介していますよ!
どれも読み応えのあるお話ばかりなので、ぜひご覧ください。
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