もう一度訪れるための本(岩手旅行記のおまけ その1)
旅先で本屋を見つけては寄ってしまう。初日だろうが最終日だろうがお構いなしだ。分かっている。絶対に荷物になる。でも買いたいものがあるのだ。その土地の本である。
例えば、限られた地域の読者を対象にした雑誌(東海圏で言うならKELLYとか)、郷土の偉人の本(新幹線の小田原駅にある本屋さんに二宮尊徳のコーナーがあるのを見たことがある)、郷土の食の本(名古屋駅ビルの本屋さんにはいわゆるなごやめしの本があります)。インターネットで大抵の本は手に入るというものの、そもそもあることを知らない本は探せもしない。
今年の6月に文学フリマ岩手に参加しに盛岡に行った。前日にチャグチャグ馬コのお祭りがあったので前泊して見に行った。お祭りを知ったのは一昨年盛岡のBOOKNERDで買った「行ってみたいトコロ盛岡」という本だ。
旅行の参考にするなら、自分とどこか気の合う本がいい。古い街並みが好きだとか、美味しいものが好きだとか、可愛いものに弱いだとか。大きな旅行案内をいくつも参考にするより、そういう本一冊が手元にあった方がよほど旅が楽しく、わくわくしたものになる。この本は東京の神楽坂で「くらしの知恵と道具 jokogumo」というお店を営んでいる。結婚相手の出身地の盛岡を何度も訪れて「盛岡! いい街だから行ってみて!」という気持ちで作った本だそうだ。中綴じ製本の軽い本で、持ち歩くのに程よい。
私は何度も同じ街を訪れるのを嬉しいと思う。いつも全部は見切れないまま旅が終わってしまうのだし、再び訪れた街は、前にいいなと思ったところはもっと好きに、前に行けなかったところは新しい好きを見せてくれる。ちょっと人間関係に似ている。会うたびに相手を知ってだんだん仲良くなる。
3年前に盛岡の文学フリマを初めて訪れるまでこうした文学イベントとは全く無縁だった。同人誌の即売会の知識といったらコミケをニュースで見たことがあるくらい。
「文学フリマ〇〇」という名前で連想していたのは「郷土の本の展示会」みたいなもの。食べ歩きマップとか郷土の歴史研究会の会報誌だとか。多分それはそれで別ジャンルの即売会があると予想されるが、誤解を抱えて会場を訪れた私はだから大変驚いた。
今でも、諦め悪く会場で郷土ならではの本を探してしまう。今年は「仙台/宮城 建築マップ」を買い求めた。
建物が主役の宮城県のミュージアム・史跡地図だ。建物が主役なので紹介文も設計や空間の説明に大方割かれている。私は建築物に明るくなく、わからないことがたくさんあるけれど、地図と建物が淡々と説明されているこの本を眺めると、目立つ場所を矢継ぎ早にアピールしてくる観光ガイドとは違って、場所の情報がすっと腹に落ちる。名前を聞いていたあの場所は駅から意外に遠いのだな、とか、あの建物とあの建物は思いの外近くにあるのだな、とか。
盛岡の街で見つけたのは「盛岡珈琲ものがたり 第一号 盛岡のちから」。
文学フリマ岩手が行われた週末、盛岡市内にあるクロステラス盛岡という施設で盛岡珈琲フェスティバルというイベントが行われていた。盛岡にはたくさん珈琲のお店がある。旅人の私には飲みきれないほどだ。自家焙煎珈琲の店を営む方々の対談があり、お店を開くまでの経緯や盛岡の珈琲文化について語られる。(中に雑誌「クウネル」が珈琲に触れるきっかけになったという話題があり、私も昔クウネルの特集を見て珈琲に興味を持ったので「おおっ」と声が出そうになりました)買った時におまけで盛岡市内の自家焙煎珈琲店などを記載した「珈琲地図2022版」がついてきた。自分の仕事柄、個人のお店というのは移ろいやすい物だという感覚がある。それが生きている街というものだ。行けるうちに、たくさんのお店に行きたい。この地図は宝物です。
岩手旅行中にマルカンビル大食堂というレストランに行っていて、「マルカンビル思い出写真集」という本も買っている。
花巻空港に「いわて花巻大食堂」という現在のマルカンビル大食堂を運営する株式会社上町家守舎の系列レストランがあり、そこでうまいうまいとソフトクリームを食べていた頃には全く知らなかったマルカンビル大食堂の歴史が書いてある。マルカンビル大食堂については別の記事を書こうと思うでの割愛するが、この写真集を見てすぐに分かるのは、ここに写っている食堂の利用者がみんな笑っていることだ。それだけで、ここがどんな場所か伝わってくる。次の旅行でも、また来られるといいです。
旅の最後に盛岡駅でお土産を買った。盛岡駅にはフェザンという駅ビルが直結していて、旅人にもとても便利だ。ここのおでんせ館1Fには「さわや書店」の支店があって、郷土の本が充実している。ずらりと店頭に並んだミニコミ誌「てくり」の最新号を買った。
盛岡のお店の人のインタビューがあったり、手作りお菓子「ゴマのおふかし」のレシピがあったり。これは、すごくいい本です。好きな本。地元にもあったらいいのに。これだけで、盛岡っていい街なんだな、って思う。
「てくり」は「行ってみたいトコロ盛岡」に紹介がある。また、私の買った「てくり34」は主に中津川沿いのお店にフォーカスがあてられており、「盛岡珈琲ものがたり 第一号 盛岡のちから」の対談記事では対談者たちが「盛岡で思い出深い場所は中津川!」と口を揃えて言う場面がある。
中津川は、馬の行列を見に行ったり、荷物を抱えて文学フリマの会場に行ったりした時に越えた大きな川だ。でも、見ただけ。忙しい旅人の目には見えなかった魅力があそこにはあるんだろう。
今度行くときはゆっくり中津川を探索しよう。私はうっかりものだ。きっとまた素敵なものを見逃す。だから多分また本を買って、少しずつ街と仲良くなろう。
ねこのまたたび No.001
今週末(9月14日(日))、hishiboshiの運営スタッフとして文学フリマ大阪に参加します。
お近くのみなさま、是非おいでください!
9月14日(日)文学フリマ大阪に「hoshiboshi/夜空舎」(ブース番号こ19〜20)のスタッフとして参加します!
— へいた@文学フリマ大阪13「hoshiboshi/夜空舎」(ブース番号こ19〜20) (@heita4th) September 10, 2025
雑誌「星々」の新刊はもちろん。140字小説セレクションの拙著「『ぴい』と鳴らせば」など充実のラインナップ28冊。
みなさまどうぞお越しください。お待ちしておりまーす! https://t.co/erlOZVQl79
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