熊次郎さんのへそ 【雨乞い難民】
熊次郎さんは江戸っ子でよう、腕っ節が強くて、気風が良くて、頼まれたら嫌って言えねえ質なんだ。ある日芝浦の漁師がよう、網引っ張るの手伝ってくれっつって、熊次郎さん船に乗ったらそのまま難破しちゃった。
難破先の村でよう、やっかいになったはいいんだが、だんだんみんな冷たくなってな、わけを聞いたら、分けてやる食い物がねえっつうんだ。今年は日照りでなんともなんねってな。熊次郎さん胸叩くと俺が雨振らせてやるって請け負った。
そいでな、熊次郎さん縄なって、わっかにして大きなくくり罠作ってな、真ん中に褌ひとつで寝っ転がった。日が落ちた頃物音がして「それっ」て縄ひっぱったら、捕れたな、熊次郎さんのへそ狙った雷様が。
「離してほしけりゃ雨降らせ!」
熊次郎さんが叫ぶと雨音がざあざあ。離した雷様がほうほうの体で逃げていった。もう村の英雄よ。得意満面で江戸に戻った。おかみさんが腹見せながら話す熊次郎さんにこう言った。
「へえ、そう」。
ショートショート No.787
for「アンソロループ」
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