ショートショート 夜行性の黒板消し
「こんなんちっともきれいにならん!」
黒板消しを叩くリョウちんが叫んだ。
「早くせんと柳田先生に叱られるぞ」
わたしは雑巾でチョーク受けを吹き、うっかり近くの棚にぶつかった。ガタンと音がして棚の上の段ボールが落ち、中からまだ新しいチョークやら黒板消しやらがこぼれでた。
「きれいなやつあるが!」
リョウちんが大声を出す。
「なーにやっとるんだお前ら」
振り向くと生物の柳田先生だ。しっし、とわたし達を追い払う。
「これでええが!」
「ダメだ」
柳田先生がリョウちんをいつになく厳しく退けた。
「この黒板消しはな、夜用。夜行性だわ」
高校が昼間だけでなかったことを知ったのは成人してからだ。家の都合で学校を中退したわたしは就職してから学び直す決意をした。定時制高校。調べて驚いた。かつての母校がそこだった。
「よう来た。立派なったな」
すっかり白髪の柳田先生が教卓にいた。反射的に目を伏せる。
「ちょっと会いたなって、夜行性の黒板消しに」
ショートショート No.795
田原にかさんの毎週ショートショートnoteに参加しています。
今週のお題は「夜行性の黒板消し」です。
「毎週ショートショートnote」って何? という方には田原さんが4月のお題をまとめたこちらの記事をどうぞ。いろんな書き手の方のショートショートも読めて、楽しいですよ!
いいなと思ったら応援しよう!
よろしければ応援お願いします! いただいたチップはクリエイターとしての活動費に使わせていただきます! 