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ショートショート ときめきトゥーシューズ

 ショーウィンドウの前でトゥーシューズにときめいた。私じゃなくて私のスニーカーの話だ。
 部活の帰り道だった。グラウンドを散々走り回ったスニーカーはすっかり土まみれ。私も早く帰りたい。けれど、足が止まった。とくん。わずかにスニーカーが脈打った気がした。
「気に入ったの?」私が聞く。
「うん」スニーカーが答える。「赤くて、ツヤツヤで」
「君だって素敵だよ」スニーカーに言ってみる。スニーカーが動かないと家に帰れない。仕方がない。私はスニーカーを脱いで教室用の室内靴で帰った。
 家でお母さんの裁縫箱を漁った。なんでもとっておくんだ、あの人。去年のクリスマスのリボンを見つけた。赤くてツヤツヤのやつ。スニーカーの靴紐をリボンと取っ替えた。
 次の日、登校中の私のスニーカーをみんなが見た。昨日のショーウィンドウの前で立ち止まる。
「その靴、素敵ね」
 トゥーシューズが私に言った。私は得意満面。
「君だって素敵さ」とトゥーシューズに答えた。


ショートショート No.775

田原にかさんの毎週ショートショートnoteに参加しています。
今週のお題は「ときめきトゥーシューズ」です。


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