ショートショート 蕎麦でも気球は浮かんでる
うわあ、と子供たちが嬉しそうに声をあげた。開けた丘で次々空にあがる気球を見上げながら、転がるようにかけて行く。空に色とりどりのバルーンが浮かぶ。おおい、とちぎれんばかりに手を振った。
「こっちですよ」
先生が子供たちを呼んだ。麓のまちから遠足できた彼らには特別な気球が用意されていた。みんな、我先にと乗り込む。
「気球はなんで浮かぶんだと思う?」
遠くなる地上を見下ろしながら先生が言った。
「風船!」
「火?」
「空気さ」
子供たちが口々に答える。
「悟君は? 気球はなんの力で浮かんでいると思う?」
眼下の街を眺めるのに夢中だった悟が顔をあげた。泳いだ目が気球を操作している髭もじゃの男の人を捉えた。
「おそば!」
「おそば?」
先生が目を丸くする。男の人がはっはっはと笑った。悟はまた下を見る。いつも手伝っているお父さんの店の屋根がピカピカ光って見えた。
「ちげえねえや」
男の人も行きつけの蕎麦屋を見下ろして、ポンと腹を叩いた。
ショートショート No.738
たらはかにさんの毎週ショートショートnoteに参加しています。
今週のお題は「それでも地球は曲がってる」。裏お題は「蕎麦でも地球は浮かんでる」です。
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