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ショートショート 書庫冷凍

 始まりは、ちょっとした事故だった。精霊の授業中だった1年生クラスで、見本の小瓶を、うっかりものの学級委員長が床に落として割っちゃったんだ。
 ばちんと音がして、中の火の精霊が飛び出て、あろうことか隣の図書室に逃げた。それからはあっという間さ。
 火の粉が本にとんで煙が上がる。焦った1年生のひとりが水の魔法を唱えて、図書委員が悲鳴をあげた。そりゃそうさ。水で本がダメになっちゃうもの。本も床も水浸し。泣き出しそうな図書委員の肩を後ろから校長先生が叩いた。言わずと知れた大魔法使いさ。
 ふう、と校長先生が息を吐くとあっという間に本が凍った。知ってる? 濡れた紙は凍らせた方がちゃんと乾くんだって。みんなが、あ、と驚いて、校長先生も、お、と声を出した。
 なんと、みんなの声が文字に凍って床に落ちた。校長先生はこれを拾い集めて保管することにした。これが我が校誇る声の凍結記録法。冷凍された書庫に残る、この、特別な物語ってわけさ。


ショートショート No.749

たらはかに(田原にか)さんの「毎週ショートショートnote」に参加しています。
今週のお題は「書庫冷凍」です。

先週のお題は「節分胎教」。絵を描かれる小粋でポップなヒスイさんならではのお話です!

色に関する解像度の高さを感じます!

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