ショートショート 三毛猫トリプルアクセル
ミケは小学校の頃祖母が拾ってきた。「今、幾つだっけ」と母に聞いたら「16」と言われた。人間にすると80くらい。大層な長生きだ。いつも祖母と一緒だった。
「俺、見ちゃったんだけど」
と言い出したのは弟である。ミケが夜にどこかに消えるらしい。「あれ」とミケの尻尾を指差す。僅かに先が割れていた。
夜になった。祖母はオリンピックに釘付けだ。こっそり窓から抜け出すミケを私と弟は見逃さなかった。行き先は神社だ。境内に猫が集まっている。一匹の猫が中央に立ち、歌を歌った。
「化け猫の集会だ」
声を出す弟の口を塞ぐ。次の猫は口から炎を吐いた。次の猫はネズミに変わった。最後にミケが踊るようにくるりと三回転半。
「あの技は……」
知ってる。私は思った。音を立てないように家に戻った。
「最年少でトリプルアクセルだって」
祖母がテレビを見て喜んでいる。にゃあ。足元で声がして祖母の膝のミケが笑った。胸の茶色のポイントがメダルみたいに輝いていた。
ショートショート No.788
田原にかさんの毎週ショートショートnoteに参加しています。
今週のお題は「三毛猫トリプルアクセル」です。
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