ショートショート 変人式
スマートフォンを机に伏せた。ポテトチップスを口に放り込むと、食べカスが母ちゃんに買ってもらったスーツにこぼれた。
「けえりてえなあ」
呟いて、涙がこぼれた。今頃同級生たちは何をしてるんだろう。意地を張らずに帰れば良かった。交通費ぐらいなんとかなったはずだ。紛れ込んだ近くの成人式には知り合いが誰もいなくて、寂しくて下宿に逃げ帰った。
ピンポーン。
チャイムがなって、涙を拭って玄関に出る。ゼミの先輩の橋本さんだった。変人で有名で人と話しているのを見たことがない。ビニール袋を突き出して言った。
「祝えだ。飲め」
懐かしい響きだった。「先輩も東北ですか」と聞く間もなく勝手に部屋に入り込んでくる。袋から缶ビールを取り出して僕に押し付けてきた。
「あすこの成人式、知り合いいねくて寂しかったろ?」近藤さんがビールをもうひとつ出して掲げる。「仲間だ、俺たち」
「一緒にしないでください」
僕は答えて、下宿にコツンと乾杯の音が響いた。
ショートショートNo.782
田原にかさんの毎週ショートショートnoteに参加しています。
今週のお題は「変人式」です。
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