ショートショート 古墳症
「コフンコフン」
学食で同級生のサカイが変な咳をする。花粉症か、それとも風邪か。俺が聞こうとしたのを遮ってサカイが言った。
「『古墳症』。フィールドワークが続いたからさ」
古墳症? そんな病気は聞いたことがない。確かにサカイは考古学部で、古墳の話ばっかりしてるけど。
「遺跡の悪い粉でも吸ったんじゃないか? ツタンカーメンの呪い、みたいな」
ふふふ。サカイが笑って軽く咳をする。心底嬉しそうな顔で言った。
「呪いでもいいよ。好きなんだから。ちょっと頑張りすぎてお腹いっぱいになったんだろうけど、すぐ慣れる」
馬鹿なやつ。呆れて物も言えない。土器とか埴輪とか、一日中眺めてなにが楽しいんだ。「ほどほどに」と言って別れてスマホで時刻を確認する。今日は午後からボランティアだ。大学附属図書館の目録整理。最近寄贈された地方の名士の蔵書を読み込む。綺麗な本だった。写本もあった。古本の山につい口元が緩む。途端に咳が出た。
「コホンコホン」
ショートショートNo.790
田原にかさんの「毎週ショートショートnote 」に参加しています。
今週のお題は「古墳症」です。
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