「あの日、ソファに沈み込んでいなければ… 人生が動き出した、あのコメダ珈琲の午後」
コメダ珈琲の、あのふかふかのソファ。
私は、あの日、そこに沈むようにして座っていた。
中学受験を控えた娘を、試験会場に送り届けた帰りだった。
落ち着かない心を抱えたまま、近くの喫茶店を探し、なんとなく入ったのがコメダだった。
分厚い座面、深く腰まで包み込まれるソファ。
座った瞬間、張りつめていた緊張が、じわじわと溶けていくのがわかった。
店内にはクラシックが流れ、まわりの客は本を読んだり、新聞を広げたりしていた。
私はカウンター横の本棚にふと目をやり、なんとなく手に取った一冊の本を開いた。
『小型株投資で1億円』
そんなタイトルだった。
「1億円…?そんな夢みたいな話ある?」
小さな声で笑った自分がいたけど、なぜかそのままページをめくり続けてしまった。
気づけば、ドリンクの氷はすっかり溶け、娘の試験終了時刻が近づいていた。
「あのソファに座ってなければ、今の私はいない」
その日から、何かが少しずつ変わっていった。
投資にまったく興味のなかった私が、証券口座を作り、本で勉強し、銘柄を調べるようになった。
そして、気づけば…
街を歩くと、企業が見えてくる
看板や商品が、株価の未来に見えてくる
そんなふうに、日常が違って見えるようになっていた。
最初のうちは、失敗ばかりだった。
勢いだけで小型株に100万円を突っ込んで、ジェットコースターのような値動きに震えたり、
信用取引に手を出して、40万円の損失を一晩で出したこともある。
けれど、それでも不思議と後悔はなかった。
あの日、あのソファに沈みながら、初めて「投資って、面白いかもしれない」と思った自分の感覚が、ずっと残っていたから。
「人生の転機は、静かに、ふいにやってくる」
「自分が本当にやりたいことって、何だろう?」
ずっと会社の数字に追われて、自分の感情にフタをしてきた。
子どもの前ではしっかりした父親を演じ、家庭では安心を与える存在であろうとし続けた。
でも、本音を言えば、自分が何者なのか、ずっと分からないままだった。
夢中になれるものは色々あったけど、「これだ」と言えるものは、まだなかった。
そんな中で、あのコメダのソファで、なんとなく開いた1冊の本。
そのとき初めて、「知らない世界に、こんなにも惹かれることがあるんだ」と気づいた。
あの瞬間だけは、時間を忘れて、ただ夢中でページをめくっていた。
転機って、ドラマチックな出来事じゃない。
何気ない午後、ただ座っていた場所が、人生の分岐点になったりする。
「椅子は、人生を支える舞台だ」
思い返せば、人生の節目にはいつも椅子があった。
受験前夜、父と並んで座ったファミレスのソファ。
就活で落ち込んだとき、親友と語り合った公園のベンチ。
パワハラを受けて共に耐え忍んで来た会社の椅子。
お受験で親子面接を順番を待ってる時の緊張感漂う廊下の長椅子。
子供が産まれるのを心配しながら待つ病院の長椅子。
そして、投資と出会った、あのコメダのソファ。
椅子って、ただ座るだけのものじゃない。
人が立ち止まり、自分の心と向き合う舞台みたいなものだと思う。
「いま、私はまた、ソファに座っている」
今もときどき、ふらっとコメダに行く。
あの日と同じメニューを頼んで、同じ席に座ってみる。
あの頃と違って、今の私は、夢中になって書いている。
noteに連載している『コーヒー飲んでたら投資家になってた件』というシリーズは、
まさにこのソファから始まった物語だ。
きっかけは小さくてもいい。
「座ってみる」ことで、人生はいつだって変えられる。
最後に
人生の中で、何度も座る場所がある。
だけど、人生を動かす椅子に出会うのは、そう多くはない。
あの日のコメダ珈琲店。
私は、あのソファで、新しい人生を始めたんだと思う。
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