【小学校の4年間が人生を変えた話 第1話】
その先生は、最初から普通じゃなかった
小学校3年の春。
クラス替え初日の教室に、新しい担任の名前が黒板に書かれていた。
阿部先生。
教室に入ってきた瞬間、子どもでも分かる圧があった。
歩き方に迷いがなくて、肩のラインがきれいで、視線がまっすぐ。
ただ立っているだけなのに、体育館にいるみたいな空気になる。
「よし。今日からお前たちは俺のクラスだ。」
普通は「よろしくお願いします」から入る。
でも、この先生は違う。
ひと言目がもう宣言だった。
その瞬間、子どもながらに悟った。
あ、この人は……普通じゃない。
◆ 1時間目から逸脱する
最初のホームルームが終わったあと、先生は時間割を見て首をかしげた。
「ふむ……5時間目、算数か。
よし、今日は体育をやる。」
クラス中「え?」となった。
でも誰も止めない。
止められる空気じゃなかった。
体育館に整列すると、先生の動きが変わった。
キュッ、と床をつかむような踏み込み。
身体の軸がブレない。
声が体育館全部に響く。
「足は置くんじゃない、つかむんだ。
体重は前に流せ。止まる前に呼吸を入れろ。」
小3にそんな指導する先生、いない。
でも言われた通りにやると、
本当に身体が軽くなる気がした。
「……なんだこれ。」
教わることがこんなに楽しいなんて、知らなかった。
◆ そして、噂が落ちてきた
その日の休み時間。
クラスの誰かがこう言った。
「おれの兄ちゃんが言ってた。
阿部先生って 体操のオリンピック選考会に出たことあるんだって。
跳馬とか鉄棒とか、めっちゃ強かったらしい。」
体育館に響いたあの声。
止まらない体幹。
無駄のない立ち姿。
全部つながった。
ああ、この人はトップを目指した人なんだ。
だからこそ教え方が本気で、
だからこそ「適当な授業」を絶対にしない空気がある。
子ども心に、少し背筋が伸びた。
こんな人に教わるの、ちょっと誇らしいと思った。
◆ この4年間が、人生を変えるなんて…
その後、体育が4時間の日が来たり、
園芸が突然授業に入り込んだり、
休日に化石掘りに連れていかれたり、
校庭に本物の用水路を作ったり…。
この時の僕はまだ知らなかった。
この先生との4年間が、
自分の好奇心の全部を作ることになるなんて。
📖 次回予告
【第2話】体育が4時間の日、そして最初の事件が起きた。
授業なんて関係なかった。
ただ、全員が妙にワクワクしていた。
いいなと思ったら応援しよう!
あなたの1つのチップが、次の1話を書く力になります。いつも読んでくれてありがとう✨
