社不生存録#8 友人が死んだ日
友人が死んだ日のことは今も覚えている。
今からもう4年も前のお話。
僕にはAとB、2人の友人がいた。
高校生活3年間をずっと共にしてきたかけがえのない友人。
ふざけ合いつつ、何をするにも一緒だった。
放課後は一緒に帰宅し、カラオケやゲーセンなど色んなとこで時間を潰した。
大学生になって、それぞれの生活がありつつも月に1度は日にちを合わせて遊びに行っていた。
遊びの内容は高校の時と同じでカラオケ。
いつも同じ歌を歌い、適当に雑談して、山盛りのポテトを食い、持ち寄った麻雀をしていた。
「彼女できねーな〜。」なんてくだらない話しで盛り上がり、誰が最初に彼女ができるか賭けていた。
高校卒業前、Aは何もやりたいことがないと言っていたので僕の勧めで同じ大学に進むことになった。
別の学部だが、やりたいことを見つけひたむきに努力していた。
キャンパス内ですれ違う彼は垢抜けてキラキラしていた。
それを遊びの時に話すと、本気で夢ができたと言ってキラキラとした目をしていた。
だから僕とBは全力で応援した。
お前だったら絶対叶えられるよ、と。
そんなAがある日突然死んだ。
元々心臓の病を抱えており、高校生の頃から度々入院していた。
彼自身も別に何ともないといい、3人でネタにしていたりした。
死因は心臓の病が悪化したこと。
急死だった。
最初、Bから連絡が来た時タチの悪い冗談だと思った。
その後、Aの母が電話をかけてくれた。
頭が追いつかなかった。
電話を切った後、何時間くらいぼーっとしていただろうか。
そろそろドッキリでした〜って連絡が来てもいいだろうと、本気で思っていた。
財布の中に映画のチケットが入っていた。
Aが死ぬ2週間前、3人で見に行った映画のチケット。
クリスマスを題材にした映画。
僕がどうしても見に行きたいからと2人を誘って行った映画のチケット。
「次はコナン見に行こうぜ。」
Aが言っていた言葉が蘇る。
涙。
その時初めて、僕は友人が死んだことを理解してしまった。
高校生活含め4年間の間柄。
たった4年間。
急いでBに電話をかけた。
電話口のBも泣いていた。
2週間前までくだらない話で盛り上がって、騒いで、楽しかったAはもうこの世界に存在しない。
涙が溢れるのを抑えきれなかった。
それから早いもので、一週間後にAの葬式が執り行われた。
僕とBは急いで喪服を買い、葬式で必要になる知識を頭に入れながらふたりで向かった。
僕たちはAが天国で見た時恥ずかしくないように泣かないでおこうと取り決めていた。
葬式が始まり、Aの入った棺から顔を見た。
化粧されているのか綺麗だったが、顔色は青白かった。
人が死んだらこうなるのか、と恐怖した。
それと同時にAがそうなっているのを見て、溢れそうになった涙を必死に堪えた。
Bは途中からずっと泣いていた。
最初に約束したじゃん、泣いてたらAに笑われるぞ。
そういいつつ、自分も手足がプルプル震えていることに気づいた。
お葬式が終わり、皆解散していく中僕とBはまだ現実を受け止められずにいた。
「この会場にAの魂いるのかな。」
「あいつせっかちだから今頃天国のゲート越えてんじゃね?」
涙はもう引っ込み、他愛ない話をしているとAの親族がお話に来てくれた。
僕たちはAが学校でどんな人物だったか、遊んでいる時どうだったかを話した。
涙は流さないよう、ふたりでもう一度約束した。
いちばん辛いのは親族の方々だ。
僕たちが泣いてしまったら親族の方もつられて泣いてしまう、だから涙は流さないでおこうと。
親族の方々は嬉しそうに聞いていた。
最後に行った映画のことも。
そこで僕は思い出した。
「そういえば僕、映画代立て替えてもらったの返せてなかったんです。」
ジョークっぽく財布を取り出し、2000円を返そうとした。
財布の中でちらりと見えた映画のチケット。
もう、この2000円は返すことができないんだ。
抑えていた涙が決壊した。
もう会えないということがどれだけ辛く寂しいことか。
走馬灯のように思い出が駆け巡った。
「Bカップの女の子がいちばんいい感じよな。」
「俺怒らしたら心臓爆発するぞ、マジで。」
「正直この3人の中やったら俺が最初に彼女できるやろw」
「2人と出会えたことが高校でいちばん良かったことやわ。」
気づけば僕とB、親族の方々も泣いていた。
とてつもないドジで、何も無いとこでつまづいて、歌が上手くて、意外と人に気にいられるタイプで、人前で平気でゲップをして、そのくせ食べ方は綺麗で、誰よりも笑顔が眩しかった純粋なA。
僕の、僕たちの、最高の友人だった。
Bとは今もたまにカラオケに行ったりして遊んでいる。
その中で、不謹慎ながらもAの死をネタにしていた。
あいつも自分が死んだことネタにされてた方が笑いながら天国行けるやろ、という理由で。
Bと行くカラオケで最後に歌う曲はいつも同じ曲。
Aがいちばん上手く歌えるからという理由で歌っていた「ぼよよん行進曲」。
ふたりでいくら歌ってもお前の点数越えらんないよ。
僕きっと、死んだ後同じところには行けないけど。
毎日死にたいと思う時はあるけど。
でも、自殺は絶対にしないよ。
そんなことしたら天国のAも、Bも悲しむもんな。
クソみたいな人生だけど、それでも笑って3人で再会できるように頑張るよ。
