【チョコレート・アイデンティティ】ーバレンタインの罠ー
「お前、それはカモにされているんだよ」
そう、心の中にいるもう一人の私の声が聞こえてきました。
まるでTシャツにへばりつくぴょん吉がしゃべるように。

ドロンジョ一味(ヤッターマン)の
インチキ商売に引っかかった人のようだ、
と言われた気がして胸に刺さります。

今年も複雑な思いで迎えた
バレンタインデー。
とはいえ今年は休日。
仕事仲間に会うこともなく、
「義理チョコ」は回避できるかもしれない。
――そんな淡い期待を抱いていました。
しかし、その願いは前日にあっさり打ち砕かれます。
「デビルカッターは岩砕く」のごとく。

2月13日
「日ごろの感謝を込めて」
いつも見せない笑顔で…
――いや、いつも通りのやさしい笑顔で、
仕事仲間が何かを持って近寄ってくるではありませんか。
普段は自分では買わない高級そうなお菓子の数々。
甘いもの大好きな私は、
当然ながら満面の笑みで受け取ります。
ところが――
メッセージカードを開いた瞬間、表情が固まりました。
「日ごろの感謝を込めて」の下に
――11名の連名。
つまり――
11人にホワイトデーのお返しをよろしく「ね」💕、ということです。
(「ね」はキャンディ・キャンディ
主題歌を歌う堀江美都子調)

書いてはいません。
でも、私にはそう読めました。
頭の中では国生さゆりの
バレンタイン・キッスが
ヘビーローテーションを始めます。

思ってました
同時に、脳内計算機が起動。
11人で買えば一人当たりの負担はわずか。
しかし、お返しは一人から11人へ。
300円なら3,300円
いや、300円では市販チョコレベル
500円で一気に5,500円
「青春のアイドルヒットステージ
早見優・松本伊代・森口博子」
の公演に行ける値段だ。

いやいや、500円でも
大したものは買えないのでは?
じゃあ800円なら――8,800円か
IVEのニューアルバムが2枚買えるな。

――いったい私は、いくら投資するのか
そんな思考の渦に巻き込まれていると、
さらに満面の笑みが近づいてきました。
なんと、追加のチョコ( ゚Д゚)
しかも3人連名。
増えていく。
どんどん増えていく――14名。
800円だと11,200円…
1,000円で14,000円😲
いよいよ頭の中では
ミッション:インポッシブルのテーマが
流れます。
映画のヒロインでは
レベッカ・ファーガソンが好みでした。

ああ、
もうお腹が痛いふりをして帰ろうか――
なんて不謹慎なことを考えてしまう自分に、
猛烈な自己嫌悪が襲います。
器の小ささ、ここに極まれり。
マカロニほうれん荘の
トシちゃん25歳のように、
海より深く反省です。

大好きでした
いや、違う
こういうときは――
思いきりお返しすればいいのだ。
その瞬間、頭の中から
国生さゆりもトム・クルーズも消え、
代わりに半沢直樹が登場しました。
「倍返しだ!」

急に強気になります。
(何の倍だ?)
そして、落ち着くために
いただいたチョコを一口。
鉄道員(ぽっぽや)の高倉健に変身です。

――うめえ
幸せでした
さあ、仕事に戻ろう(^^)


以上、私が「バレンタインの甘い罠」に
かかった物語を最後まで読んでいただき
ありがとうございました。
ホワイトデー作戦、開始です!
