【谷の巡礼】序③ 祖母が残した“芯”の話
~手鞠の話~
祖母は、
気が強く、
芯があり、
それでいて、
信仰の深い、
“昭和の女”だった。
昭和から平成を、
祈りとともに縫いとめた。
火鉢で暖を取りながら、
背中を少し丸くして、
丁寧に手鞠をかがる。
そんな風景が、目に浮かぶ。
私の実家は、
外から見ても、
中から見ても、
綻びだらけの家族だった。
何度も何度も、壊れかけた。
そのたびに、
体裁を繕った。
それを担っていたのは、
祖母だった。
芯があるから、
また、かがれる。
手鞠は、
昭和から平成へと転がり、
令和の今も、ここにある。
色褪せず、
形を変えず、
私の手元にある。

そして、
手鞠は静かに一句を詠みました。
