これまでのサラリーマン人生で最高にキャラが濃かった人👍️
前回、これまでのサラリーマン人生の中で、自分の価値観に大きな影響を与えてくれた2人の素晴らしい上司について書きました。今回は、その逆……というわけではないのですが、これまで出会った中でも最高にキャラの濃かったAさんについて書いてみたいと思います。
Aさんの下で働くのがすごく嫌だったかというと、そういうわけでもありません。ただ、とにかくインパクトが強烈でした。今思えば、Aさんのおかげで私の精神面もかなり鍛えられた……のかもしれません。
今回は、いまだに一部の仲間内で語り継がれている、Aさんの数々の武勇伝を紹介します😁
エピソード1:「ちみー?!」
現実世界で「君」のことを「ちみー」と呼ぶ人が、本当にいるんだ。これが、Aさんと初めて話した時の印象でした。
新入社員として配属されて、まだ数日しか経っていなかった頃のことです。渡された仕事を電卓で処理していると、突然Aさんから声をかけられました。
「ちみねぇ、電卓の叩き方がなってないよ」
当時、Aさんは私の直属の上司ではありません。それでも、私が人差し指1本で電卓を叩いている姿が、どうしても許せなかったようです。その場で、人差し指、中指、薬指の3本を使った効率的な電卓の叩き方を、みっちり指導されました。
いきなり叱られたので驚きましたが、おかげで電卓を打つスピードは格段に上がりました。強烈な人でしたが、教える内容自体は意外と実用的だったりするのです。
エピソード2:買ったバイクを自宅に置けない
AさんはBMWが大好きでした。車は古いBMW、バイクもBMW。筋金入りです。そんなAさんがある日、奥さんに内緒でバイクを買い替えました。ところが、買ったことをどうしても言い出せなかったらしく、奥さんには「このバイクは借りてきた」と説明していたそうです。(この中々言い出せない所は個人的にすごく共感します😋)
当然、自宅に置いておくわけにはいきません。購入したバイクは、バイク屋さんに預かってもらっていたそうです。ツーリングから帰宅すると、疲れているAさんに奥さんがひと言。
「そのバイク、ちゃんと返してらっしゃい!」
Aさんはそのたびに、疲れた身体でわざわざバイク屋さんまで“借り物のバイク”を返しに行っていたそうです。当時は
「そんなことある?」
と完全な笑い話として聞いていました。しかし、その後、自分も奥さんに内緒でこっそりバイクを買った経験をしてからは、以前ほど素直に笑えなくなってしまいました😅
さて、ここまでの話は、言ってみれば前菜のようなものです。
ここから、いよいよAさんの本領が発揮されます。
エピソード3:お坊さんを叱責する
Aさんは、実はお坊さんでもあったと聞いています。具体的にどのようなお坊さんの資格を持っていたのか、本当に正式なお坊さんだったのかは、今となっては分かりません。ただ、葬儀や仏事の段取りには、かなり詳しかったようです。当時は、会社の人のご家族が亡くなると、職場のみんなで通夜や葬儀の手伝いに行くことがありました。そんな時、Aさんは見事なまでの仕切りを見せます。
ある日、いつものように手伝いに行くと、Aさんが誰かをものすごい勢いで叱っていました。いったい誰が怒られているのかと思って見てみると、なんと相手はお坊さんでした。どうやら段取りか準備に不備があったようで、
「ちみねぇ!」
と、例の調子で容赦なく叱責しています。葬儀の場におけるお坊さんとは、私の中では絶対的な存在でした。そのお坊さんが、会社員のAさんから普通に叱られているのです。ちょっとカオスな状態…
Aさんが本当にお坊さんだったのかどうかは、今も謎のままです。ただ、少なくともあの場で一番偉そうだったのは、間違いなくAさんでした。
エピソード4:隣人にクレームを入れたら、まさかの副社長
ある月曜日、Aさんが出社早々、週末に起きた出来事を話し始めました。
「家の隣に引っ越してきたヤツがいるんだけど、そいつがとんでもないヤツでさ」
その場にいた全員が心の中で、
「いや、あなたも十分とんでもないですよ」
と突っ込んでいましたが、もちろん誰も口には出しません。話を聞くと、隣家のエアコンの室外機から出る風が、Aさんの家のほうに向いていたらしいのです。それが許せなかったAさんは、隣人のところへ乗り込み、
「ふざけるなー」
とクレームを入れ、室外機の向きを変えさせたとのことでした。私たちは、「Aさんの隣に引っ越してきた人、かわいそうだなぁ」と思いながら、その話を聞いていました。当時、新入社員だった私は総務部に所属しており、社宅の手配も仕事の一つでした。しばらくして、総務部の先輩たちがこんな会話をしていました。
「ほら、今月から新しい副社長が来たでしょう。その人が会社で手配した家に引っ越したら、隣の人から室外機のことでクレームを受けたらしくて、向きを変えてほしいって依頼が来てるんだよね」
それを聞いた何人かの頭に、同じ人物が浮かびました。
まさか……。
調べてみると、見事に住所が一致しました。Aさんが「とんでもないヤツ」呼ばわりして怒鳴り込んだ隣人は、会社に新しく着任した副社長だったのです。当時すでに社員が1,500人ほどいた会社です。その副社長ですから、まあまあどころか、かなり偉い人です。その事実を知ったAさんは、さすがにすぐ連絡を取り、謝罪に向かいました。そして戻ってきたAさんは、いつもの勢いを完全に失い、青ざめた顔でこう言いました。
「あの、ちんちくりんだと思っていた隣人が、まさか副社長だったとは……」
Aさんにも青ざめることがあるのだと、少し安心しました😁
エピソード5:高速道路を爆走し、覆面パトカーに捕まる
Aさんはゴルフにも行っていたようで、その行き帰りには愛車のBMWで東関東自動車道を走ることがよくありました。これは、同じ部にいた別の課長から聞いた話です。その課長が東関道を走っていると、後ろからものすごい勢いで近づいてくる車がありました。バックミラーを見て、
「あれ、Aさんじゃないか?」
と気づいたそうです。ところが、その課長は少し前方に覆面パトカーがいることにも気づいていました。そのため速度を落とし、制限速度でおとなしく走っていました。しかし、覆面パトカーの存在を知らないAさんには、その様子が単にトロトロ走っているようにしか見えません。
「何をノロノロ走っているんだ!」
と言わんばかりに、その課長の車を強引に追い越し、鬱憤を晴らすようにBMWを猛加速させていったそうです。そして当然ながら、見事に覆面パトカーに捕まりました。その課長は、Aさんが誘導されていく様子を横目に見ながら、
「あーあ……」
と思いつつ、そのまま帰宅したそうです。そして翌日、会社でAさん節が炸裂しました。
「この裏切り者ー!」
「なんで覆面がいるって教えてくれなかったんだー!」
いやいや、覆面がいるから速度を落としていたのに、それを勝手に追い越して捕まったのはAさんでしょう。そんなやり取りを聞きながら、普段のAさんを知っている私たちは、申し訳ないと思いつつも、少しクスッとしてしまうのでした。
エピソード6:披露宴には呼んでいないのですが……
そんなAさんも、その後しばらくして会社を辞めていきました。それから1〜2年ほど経った頃、幕張メッセで開催されていた展示会で、偶然Aさんと再会しました。
「ちみー、元気にしてるかね」
相変わらずの「ちみー」です。久しぶりだったので私も懐かしくなり、
「はい、元気にしています。実は結婚することになって、来週、式を挙げるんですよ」
と伝えました。するとAさんは、
「なぬっ!? それはめでたい! じゃあ、お祝いに行かないとな!」
と、予想以上に食いついてきました。
とはいえ、結婚式はもう翌週です。披露宴の席も料理も、すべて決まっています。
「いやぁ、ありがたいのですが、もう席も段取りも全部決まっていまして……」
と、何とかその場を切り抜けました。いや、切り抜けたつもりでした。そして迎えた結婚式当日。
なんと、Aさんが来ていました…
会社の人を何人か招待していたので、その伝手で会場と時間を聞いたようです。悪い人ではないのです。むしろ、お祝いしようと思って来てくれたわけですから、気持ちはとてもありがたい。
ただ、呼んではいません😅
幸い、私たちの披露宴は少し変わった形式でした。親族のいる会場はフォーマルな着席式、友人や会社関係者の会場は立食形式にして、私たちがその二つの会場を行き来するスタイルです。そのため、Aさんには立食会場に入ってもらい、とりあえずは一件落着。
……と思っていました。
しばらくして会場をのぞくと、Aさんは以前同じ部にいた別の課長と、なぜか口論していました。結婚披露宴に、招待されていないのに突然現れ、しっかり参加し、最後は元同僚と口論する。ここまで来ると、もはや完璧です。
Aさん……。
なんだかんだ、憎めない人でした
こうして並べてみると、ただAさんの強烈なエピソードを書きたかっただけの記事になってしまいました。でも、何十年も経った今でも、これだけ次々とエピソードを思い出せる人は、ほかにあまりいません。周りを振り回し、時には本気で怒らせ、本人もさまざまな事件を巻き起こす。決して「理想の上司」と呼ばれるタイプではなかったと思います。
一部の人からは、本当に憎まれていたかもしれません😅それでも、不思議とどこか憎みきれない人でした。バイクを買ったのに家に置けなかったり、隣人に怒鳴り込んだら副社長だったり、覆面パトカーに自分から突っ込んでいったり、呼ばれていない披露宴にお祝いに来たり。
これだけ強烈なのに、どこか人間臭くて、どこか抜けていて、悪意がない。今振り返ると、Aさんは私のサラリーマン人生の中で、間違いなく最高にキャラの濃い人でした。そして今でも、どこかで誰かに、
「ちみねぇ!」
と言っているような気がするのです。
