発達障害の娘がいじめに遭った時、親として後悔したこと
もっと早く知りたかった支援と親の関わり方
「まさかうちの子が、ずっと黙って耐えていたなんて」
娘がいじめに遭っていたと知ったのは、小学6年生の4月のことでした。実際に始まっていたのは、5年生の2学期。約半年間、娘は一人で抱えていたのです。
振り返ると、サインはありました。5年生の秋ごろから「おなかが痛い」と言って学校を休む日がぽつぽつ出てきた。「行きたいけど行けない」と涙をにじませる朝もあった。でもそれは年に数回程度で、翌日にはけろっと登校していたから、「疲れたのかな」「気持ちの波があるのかな」と思っていました。
今思えば、そのたびに何かがあったのだと思います。周りを囲まれてあだ名をしつこく呼ばれ、からまれ、わざとぶつかってこられる。そんな日が積み重なって、もう限界だという日だけ「おなかが痛い」という言葉になっていたのかもしれない。
この記事は、同じように子どものいじめに悩む親御さん、特に発達障害・発達グレーのお子さんをお持ちの方に向けて書いています。 私が後悔した経験から、「もっと早くこうすればよかった」という支援と関わり方を、できる限り具体的にお伝えします。
あなたの後悔を、一つでも減らせたら嬉しいです。
① 半年間、娘は黙っていた――なぜ言えなかったのか
「変なあだ名で呼ばれて辛い。嫌だって言ったけど、やめてくれない」
学校に行きたがらない娘に、理由があるなら教えてと、なんとか聞き出そうと親子で長時間に渡って話し合いをした時、無言で散々だまっていた後…
娘が泣きながら吐き出した言葉です。
そんな事実を全く知らなかった私は、その一言が重くグサッと刺さりました。
私はASD(自閉スペクトラム症)の診断を受けている娘を育てています。元特別支援学校の教員として、障害のある子どもたちに関わってきた私が、まさか自分の子のいじめにこれほど無力感を感じるとは思っていませんでした。担任の先生は全く気づいていなかった。娘が自分で言ってくれなければ、私もまだ知らなかったかもしれない。
後から娘に聞くと、ずっと言えなかった理由がありました。「言ったら大ごとになると思った」「お母さんを心配させたくなかった」。
そして、もう一つ。「前に話した時、『無視したらいい』って言われたから」。
そこで気づいたのです。
5年生の頃、娘がぽつりと「〇〇くんたちが変な名前で呼ぶ」と言ったことがありました。その時、私と夫は口をそろえて言ったのです。「そんなのは無視したらいいよ」「無視する力も大事だよ」と。
アドバイスのつもりでした。強くなってほしかった。でも娘の目線からすれば、「お母さんもお父さんも、わかってくれなかった」という経験になっていたのだと思います。その一言が、娘が次の半年間、黙り続けた理由のひとつだったかもしれない。
今でも、あの言葉が胸に引っかかっています。
② 発達障害の子がいじめに遭いやすい理由――知っておきたい背景
「発達障害の子はいじめられやすい」という話を聞いたことがある方も多いと思います。それは残念ながら、データとしても裏付けられています。
文部科学省の調査では、特別な支援が必要な児童生徒は通常学級でもいじめを受ける割合が高いことが報告されています。その背景には、いくつかの要因があります。
場の空気が読みにくい
ASDの特性として、「暗黙のルール」や「その場のノリ」が理解しにくいことがあります。冗談を真に受けたり、相手が嫌がっているサインに気づかなかったりする。その「ずれ」が、悪意のない子どもたちにも「変な子」「面白い反応が返ってくる子」と映ってしまうことがあります。
うちの娘がされていた「あだ名をしつこく呼ばれる」という行為も、最初はからかいの延長だったのかもしれません。でも娘は「どう反応すればいいか分からない」まま固まってしまい、それがまた面白がられる、という悪循環があったと後から知りました。
断ることが苦手
「嫌だ」「やめて」を言葉にすることが苦手な子も多いです。相手が喜ぶなら、自分が嫌でもやってあげよう、という思考パターンになりやすい。娘も「やめて」が言えず、わざとぶつかってこられても黙って避けるだけだったと話していました。
感情表現が独特
嬉しくても怒った顔になってしまったり、悲しくても笑ってしまったりすることがあります。これが「本当はいじめられても平気なのでは?」という誤解を生むことも。子ども本人がサインを出しているのに、周囲が気づきにくい構造があるのです。
③ 親として「やってしまった」後悔のリスト
包み隠さず書きます。私が後悔していることです。同じことをしてほしくないので、あえて書きます。
「無視したらいい」と言ってしまった
これが一番の後悔です。娘がチラッと話してくれた時、私たちは「無視力も大事」「気にしない練習だよ」と言いました。親としては「強くなってほしい」という気持ちでした。でも発達障害の子にとって「無視する」という行為は、実は非常に難しい。相手の行動の意図を読み取って、意図的に反応しないコントロールが必要で、それ自体がとても高度なスキルなのです。
そして何より、その一言が「話しても無駄だ」というメッセージになってしまっていた。
「様子を見ていた」という名の放置
5年生の秋から何度か「おなかが痛い」「行きたいけど行けない」という日がありました。でも翌日には登校していたので「体調の波かな」と思い込んでいました。今思えば、あれだけサインが続いていたのだから、もっと早く掘り下げて聞くべきでした。「最近、学校で何かある?」という問いかけだけでも、違ったかもしれない。
「学校に行くことを優先してしまった
6年生になって不登校になってからも、「なんとか学校に行かせなければ」という焦りがありました。でも娘に必要だったのは、登校できることより、安心できる場所と人間関係の修復だったのだと、今はわかります。
④ もっと早く知りたかった支援リソース
「相談できる場所がある」と知っているだけで、親の心持ちはずいぶん変わります。私が後になって知って「もっと早く使えばよかった」と思った支援を紹介します。
スクールカウンセラー(SC)
学校に配置されているスクールカウンセラーは、子どもだけでなく保護者も相談できます。無料で使えて、守秘義務もあります。「担任に相談するのはハードルが高い」という場合、SCへの相談から始めるのがおすすめです。
教育支援センター(適応指導教室)
不登校になった後に知ったのですが、多くの自治体に「教育支援センター」があります。学校以外の居場所として、通所や相談ができる施設です。学校復帰を目指すためだけでなく、子どもが「安心できる場所」を持つという意味でも活用できます。
発達障害者支援センター
都道府県ごとに設置されている専門機関で、発達障害に関する相談を無料で受け付けています。診断の有無に関わらず相談できるので、「グレーゾーン」の子どもを持つ親でも利用可能です。
ペアレントメンター(親のピアサポート)
同じ発達障害の子どもを持つ先輩親がサポートしてくれる制度で、自治体によって実施しています。「経験者の言葉」はどんな専門家の言葉よりも心に刺さることがあります。
⑤ 子どもが「話してくれる親」になるために
娘が半年間黙っていた、その背景を考えた時、私が向き合わなければならなかったのは「子どもが話しやすい親になれていたか」という問いでした。
まず「聞く」だけに徹する
「どうすればよかったの?」「なぜそうなったの?」という問いは一切なしに、ただ「そうか、そんなことがあったんだね」と受け取る。これが最初の一歩です。
解決しようとする前に、話を聞いてもらえたという体験が、子どもの心の土台を作ります。「無視したらいい」と言ってしまったあの日に、もしそうできていたら、娘はもっと早く話してくれていたかもしれない。
小さな話をていねいに拾う
「ちょっと嫌なことがあった」という話をした時に、「そうなんだ、どんなことがあったの?」と続けられるかどうか。この積み重ねが信頼関係になります。チラッと出た言葉を「それくらいなら大丈夫」と流さず、もう一段だけ聞いてみることが大切です。
記録を残す
子どもが話してくれたこと、先生から聞いたこと、子どもの様子の変化などを日付付きでメモしておくことを強くおすすめします。感情的な状況下では記憶が歪みやすく、後になって「あの時、確かにこう言った」という証拠が必要になることもあります。
⑥ 関わり方の「変換」――私が意識を変えた3つのこと
娘のいじめ問題を経て、私は子どもとの関わり方を根本的に見直しました。正直に言うと、それまでの私は「問題を解決してあげる親」でいようとしていました。でも発達障害の娘に必要だったのは、解決策じゃなかった。
変換① 「どうしたいか」を必ず聞く
「こうした方がいい」と言う前に、「あなたはどうしたい?」を聞く習慣をつけました。子ども自身が選択肢を持ち、自分で決めた経験が、自己肯定感につながるからです。「無視したらいい」は私が決めた解決策でした。娘の気持ちを聞く前に。
変換② 登校を目標にしない
「学校に行けるかどうか」ではなく、「今日、娘が少し安心して過ごせたか」を1日の指標にしました。登校そのものより、娘が「自分は大丈夫だ」と思える時間を積み重ねることを優先するようにしました。
変換③ 私自身の感情をていねいに扱う
「この子を守らなければ」という強い使命感は、気づかないうちに焦りになり、子どもにプレッシャーを与えていたと思います。自分の気持ちを誰かに話す、書く、という習慣を作り、私自身が少しずつ落ち着いていくことで、娘との関係も変わっていきました。
おわりに――後悔は、次の誰かを助けるために
「無視したらいい」と言ってしまったあの言葉を、今でも思い出します。消えない後悔です。でもその後悔があるから、今こうして書けているとも思っています。
私が経験した「チラッと話してくれた時に流してしまったこと」「無視するよう言ってしまったこと」「半年間気づけなかったこと」。これは私の失敗です。でも同じことを繰り返してほしくないから、あえて書きました。
今日できる1ステップ:子どもが何かをチラッと言った時、「そうなんだ、もう少し聞かせて」と一言だけ返してみてください。 その一言が、子どもにとって「話していい場所」を作ることになります。
前回の投稿から書き直してみました。コメントいただいてた皆さん、ごめんなさい。でも、より私の後悔に迫ってみたかった。。。
発達障害のある子どもを育てていると、正解のない選択を毎日迫られます。それでも一緒に考え、迷い、少しずつ前に進んでいる親御さんへ、この記事が届いたら嬉しいです。
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▼ 元教員という呪縛をかかえ、いじめと向き合った私の話はこちら↓
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