見出し画像

夫婦エッセイ 第4回 夫の弟分と横並びで自宅脱毛エステ

 カピさんには弟分がいる。
 会社の二つ年下の同期だ。
 彼の名は”ビー”。
 家が近いため、しょっちゅうカピさんと行動を共にし、家にもよく来る。

 ある日カピさんは尋ねる。
「ぷさん、あれ持ってたやん? 脱毛のパチパチするやつ」

 カピさんが言っているのは
 パナソニックの光エステ機器のことであり、要するにムダ毛や産毛に光をあてて薄くする脱毛器のことである。

「うん。持ってる持ってる(最近使ってないけど)」

「ビーにやり方教えてあげて欲しい!」

 ……………………?

 はて?
 ビ、ビーに?

「ビーもこの前脱毛器買ったんよ」

「そ、そうなんや……。最近男性も脱毛する人はするもんね」

「そうそう。せな毛とむな毛が濃いの悩んでで、この前俺一緒に電気屋付いてって値切った」

 ……値切った。
 そういや私のときもそうだったな。

「わかった、いいよ」

 かくして私はビーに光エステ機器のレクチャーをすることになったのだ。


 ◇

 家の洗面所。
 三畳半。
 洗濯機、洗面台、ドレッサーが横並ぶ。
 その狭い空間で――
 私とビーは横ならんでいた。

 なんでかって?
 もちろん、光エステ機器のレクチャーのためである。

「これで、こうして、肌に一瞬あてるの」

 パチッ

 自分の光エステ機器を使ってみせる。

「おお、なるほど」
「ちなみに色の黒い場所、ほくろとかにあてたらだめだよ。火傷するから」
「おお! なるほど」

 横並びでお互いにパチパチする。

 ……なにしてんねん。

「終わった~?」

 カピさんの声。
 洗面所へ入ってくるなり「おお、やってる」としみじみ言う。

 洗面所の鏡に、三人が並んで映っていた。

 夫と、その弟分と、私。
 なぜか誰も違和感を覚えていない。


 結婚生活ってたぶん、こういう「説明できない光景」を、当たり前みたいに受け入れていくことなんやと思う。



いいなと思ったら応援しよう!

葉月すい ここまで読んでいただき、ありがとうございます。 よかったら、応援していただけると励みになります。