【エッセイ】余白日記・銀の弾丸
「銀の弾丸」という言葉を知ったのは、仕事をし始めてからだった。一発ですべてを解決する特別な弾丸。どんな怪物にも効く、最後の切り札。その言葉を知ったとき、不思議と腑に落ちた。私はずっと、それを探していた気がしたからだ。
この会社なら。この資格なら。この副業なら。この人に会えば。この方法なら。どこかに、自分の人生を一度で変えてくれる答えがあるのではないか。振り返れば、そんな期待を何度も抱いてきた。
怠けたかったわけではない。楽をしたかったわけでもない。ただ、生きることが少し苦しかった。だから、努力の方向さえ間違えなければ、自分にもきっと道が開ける。そう信じたかった。
でも、銀の弾丸はいつも少し先にあった。
一つを手に入れたと思えば、「本当に必要なのは次だ」と思う。また別の銀の弾丸を探し始める。その繰り返しだった。
最近になって思う。
私が探していたのは、人生を変える方法ではなかった。「これでいい」と安心できる理由だったのかもしれない。
自分に向いている仕事は何か。何をすれば生活は楽になるのか。どうすれば経済的に自立できるのか。答えを探すことは大切だ。でも、その問いばかりを見つめていると、自分自身が見えなくなる。
本当は何が苦手なのか。どんな時間なら疲れないのか。どんな瞬間に心が動くのか。その答えは、銀の弾丸のようにどこかに落ちているものではなく、自分の中に少しずつ積み重なっていくものなのかもしれない。
今でも私は、銀の弾丸を探している。
もし一つだけで人生が変わるなら、どれほど楽だろうと思う日もある。
それでも以前とは少しだけ違う。
銀の弾丸があるかどうかよりも、その弾丸を探し続ける自分が、何から逃れたかったのかを考えるようになった。
人生を変える一発の答えは、最後まで見つからないのかもしれない。
けれど、自分という人間は、遠くを探している間ではなく、立ち止まって振り返った時に、少しずつ見えてくるのだと思う。
