解散がもたらした私の人生の転換点

「はい、解散」
「えっ?」

この一言が、私に取って結婚しよう、
結婚していいんじゃないかという決め手になりました――


30も半ばを過ぎて、未だに結婚できていない自分は、ひどくみじめな気がしていました。
平日は、
仕事→ゲーム→寝る。
仕事→映画→ゲーム→映画→あっ、朝だ。

休日なんて、何したらいいかわからない。
映画→ゲーム→飯→ゲーム→映画→ゲーム→あっ、朝だ→仕事

酷いな。でも今もそんなに変わってないけど。

ともあれ、そんな怠惰な生活を送りつつ、恋愛や片思いなどもちょこっとやって、それは成就する事もなく、生活に戻る。
凄くコージーな生活をしていました。
いや、多分違う。コージーではない。

そんなコージーな生活を脅かしたのが、ある日やってきた父の友人であり、私に取っても知人である人物。
彼は一言で言うと、非常にストレートに物事を言うタイプで、割と好感も持てるタイプではありますが、同時に誤解されやすい人でもありました。

「お前、これ書け」

彼が渡したのは一枚の紙。

パチンコ攻略法。

「まちがった、こっち」

そこ間違っちゃいけないとこだと思う。
パチンコ攻略法を書けとでも?

改めて渡されたのは、自分のプロフィールを書く紙でした。

「何を書けと」
「いいから書け」

圧が凄い。
どうやら、仲人さんシステムに私を登録してやろうっていう話らしい。
ちょっと意味が分からないけど。
中身は仲人さんと呼ばれる管理者が集めた人物と、別の仲人さんが集めた人物をマッチングさせて成就させるシステムのようです。

「書け」

書きました。

名前
はっち

特技
寝ること、飯を食う

相手に臨むこと
三食昼寝付き

提出書類より

「やり直せ」
「はい」

名前
はっち

特技
料理を食べる、作る

相手に臨むこと
一緒に美味しく料理を作って食べましょう

訂正された書類より

内容は大幅に端折ってますが、大体大真面目にそんな事を書きました。

「まあ、いいだろう。後で連絡するから、がんばれ」

何を?

とはいえ、これが一つの転換点だったんでしょうね。

それから一ヶ月くらいして、早速その仲人さんから連絡がありました。

そうして、僕の前を何人もの女性が通り過ぎていったわけです。

ええ、素通りですね。
悲しみ。

そんなある日、めげずに連絡してきた仲人さん。
次がダメならもうあきらめようかな、なんて思ってもいました。

そして出会ったのが彼女でした。

他の女性の時もそうだったのですが、基本的に2~3回会って食事などをします。
今回もそういう流れでしょう。
あるいは一回も会わずにその場で断られるケースもありました。
仕方ないですね。89.5kgですから。Y9SH!

さて、今回はどうなる事かと思っていました。
ファーストインプレッションは、ウェーブの髪。

何見てんだ、と思われると思いますが、最初の印象がそれです。

ウェーブの髪。

ぶっちゃけ、それしかありませんでした。

ファミレスで仲人さんに合わせてもらって、その後若い二人で(別にもう若くもないけど)食事という段になります。
しかし、ウェーブの髪とどんな話をしたのか、まったく覚えていない。
お互い初対面ですし、無難な会話をしたのでしょうけれど。

帰り際に連絡先を交換し、とりあえずのお礼文を送りました。

今日はありがとうございました。
大変楽しい時間を過ごさせていただきました。
つきましては、またご連絡させていただきたいと思います。
どうぞ、よろしくお願いします。

彼女に送った文面(うろ覚え)

どこのビジネス文書だ。
因みに彼女は、この文面を見て、

「これ、あと連絡来ない奴だ」

と思ったらしいです。
失礼な。

そこから迷惑にならないように程々にやり取りをしつつ、迎えた初デート。

無難に食事をして、少し打ち解けた話もして、その帰りの事です。

「ちょっと複合型書店寄っていいですか?」

ゲームやプラモ、本、CDなどが所狭しと並べられた倉庫みたいな書店です。

「いいですよ」

彼女は快諾してくれました。

そして、店に入るなり彼女が言ったのが最初の一言でした。

「はい、解散」
「えっ」

一緒に回るつもりでいたのに、何だ急に、このウェーブめ。
いや、この頃にはもうストレートになってましたけど。
パーマかけてたらしいです。

「こういうとこは一人でうろついた方が楽しいでしょ?」

……一理ある。
しかし、デートとは。

最終的には、それもそうかと思い、二人は思い思いの時間を過ごします。
いや、それで納得する私も私ですが。

けれど。

――解散。
彼女がそう言った時、不思議と楽な気持ちになったのを覚えています。
無理に自分を飾ったり、虚飾をしたり、装わなくていい相手というのは、初めてでした。
いつもなら、クリスマスツリー並に飾り付けていたと思います。
電飾ピッカピカ。

でも、その一言で、ふっと力が抜けて、
こういう人が伴侶であればいいな。
なんて、ふとオニポテのポテトとオニオンリングの関係を思い出したりして。
一緒の袋に一緒に入ってる、あんな感じ。

で、この人が後に妻となるわけなんですが、ある日聞いてみたんです。

私と結婚した決め手って何?

「手がきれいだった」

なんだそれ。

妻は時々ウェーブ髪に戻ります。

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はっち あなたの大事なお金をこんな記事に絶対に投げ銭しないこと(※東北の方言で捨てるを投げると言います)