見出し画像

2万点で棚を取る「エレコム」の正体と超おすすめ商品6選

日曜の夕方、リビングのデスクの下に手を伸ばして、棚板に挟んである充電器からケーブルを片手で引き抜きました。本体が固定されているので、片方の手で押さえなくても抜けます。

ふと、裏側の型番を見ました。EC-AC11767BK。エレコムです。

そのまま部屋を見回して、少し気になって数え始めました。電源タップ、ケーブルの先につけたマグネットの変換アダプタ、除電ブラシ、クリーニングクロス。同じ会社の製品が、デスクの周りに6つありました。

キーボードとマウスはLogicool、イヤホンはAirPods 4。そこは自分で選んだ記憶があります。ところがエレコムの5つについては、いつ、どういう理由で選んだのか、正直あまり覚えていません。売り場で「これでいいか」と手に取った気がする、という程度です。

無意識のうちに、同じ会社の製品ばかりが家に入ってきている。この会社は、いったい何をしている会社なのでしょうか。

「とりあえずエレコム」と、僕らは言う

家電量販店のケーブル売り場の前で、何分立ち止まったことがあるでしょうか。

僕はよくやります。USB Type-Cのケーブルを1本買うだけなのに、長さと出力と規格の組み合わせで棚が埋まっていて、どれが自分の用途に合うのか分からなくなる。10分ほど悩んだ末に、パッケージの見やすいものを取る。だいたい、それがエレコムです。

会社でも同じことが起きています。総務の仕事をしていると、備品の発注を頼まれます。「会議室のHDMIケーブルが足りない」「新しく来る人のマウスを1つ」。そういう依頼が来たとき、僕はメーカーで悩みません。カタログで規格と数を確認して、在庫のあるものを選ぶ。振り返ると、そこにもエレコムの型番が並んでいます。

エレコムに対する僕の認識は、たぶん多くの人と同じでした。大阪の周辺機器メーカーで、値段が手ごろで、どこの売り場にも必ずある。安心して選べる無難な国内ブランド。

ただ、この「必ずある」という部分を、僕はずっと結果だと思っていました。良い製品を作っている会社だから、店が置いてくれるのだろう、と。

順番が逆でした。

1年で3,739個。1日あたり10個以上

エレコムが持っている商品は、約2万点です。※1※2

数字だけ見ても大きさが分かりにくいので、単純に割ってみます。1点あたり1秒で眺めたとしても、全部を見終えるのに5時間半かかります。売り場でケーブル1本に10分悩む人間からすると、気が遠くなる数です。

もっと驚いたのは、増やす速度でした。ポーター賞の受賞レポートによると、2018年度の新製品投入数は3,739個。同じ期間の競合2社は、300個前後でした。※1

1年365日で割ると、1日あたり10個以上の新製品が世に出ている計算になります。競合の12倍以上です。

そして、その2万点の大半を、エレコムは自分で作っていません

同レポートによれば、エレコムは自社工場を持たないファブレスメーカーで、新商品開発の7割はサプライヤーによるODM、自社開発は3割にとどまります。自社でやるのは「購買だけでは期待するデザインや性能が得られないもの」に限る、という考え方です。※1

工場を持たず、開発の7割を外に預けて、それでも1日10個の新製品を出し続ける。ここまで並べると、この会社が本当に売っているものが見えてきます。

エレコムが取りにいっているのは、製品ではなく、家電量販店の棚です。

200人が、売り場に立っている

日本経済新聞が2026年5月に出した記事の見出しは、こうでした。「エレコム最高益支える営業の精鋭200人 商品2万点、家電量販店に提案」。※2

記事によると、エレコムには「ラウンダー」と呼ばれる営業担当者がいて、家電量販店を回り、売り場での陳列や見せ方そのものに手を入れます。※1※2 大阪の店舗でマウスの実演をしている担当者の様子から始まる記事です。

ポーター賞のレポートにも、同じことが書かれています。エレコムの売り上げの半分以上は家電小売り経由で、ラウンダーが「小売店での陳列や、商品をより魅力的に目立つように演出する」役割を担っている、と。※1

ここで、2万点という数字と200人という数字がつながります。

売り場の棚は有限です。1つの棚に置ける商品の数は決まっていて、そこに何を並べるかを決めるのは店側です。このとき、提案できる商品の点数が多い会社ほど、埋められる隙間が多くなります。「この長さのケーブルはありますか」「この規格に対応した変換アダプタは」——店の側から出てくるどんな要望にも、2万点の中から必ず1つは答えが出てくる。

答えを出せる会社は、棚をもらえます。棚をもらえた会社の製品は、僕のような客が売り場で10分悩んだ末に手に取ります。

僕が「いつ選んだか覚えていない」のは、当然でした。選んだつもりで、置いてあるものを取っていたからです。

成功した製品を、自分で捨てる

「常に鮮度と競争力を保つことであり、成功した製品や取引関係に固執することなく、自ら陳腐化させ、改廃をすることを心掛けている」※1

ポーター賞のレポートにある、エレコムの製品戦略の説明です。同レポートは、この方針を「多産多死で迅速な市場対応をする」とも表現しています。※1

売れた製品にしがみつかず、自分から古くしていく。ふつうの感覚だと、もったいない話に聞こえます。ヒット商品は長く売り続けたほうが、開発費も回収できて効率がいいはずです。

ここを、総務の実務に置き換えてみます。

備品を発注する側にとって、いちばん高くつくのは商品の値段ではありません。探している時間です。「この規格に合う型番が見つからない」「以前買ったものが廃番で、代わりが分からない」——この状態で30分検索する時間のほうが、ケーブル1本の価格差より、はるかに重い。

だから発注担当は、必ず答えが返ってくるカタログを選びます。品揃えが薄い会社は、たまに安くても、探す時間の期待値で負けます。

エレコムがやっているのは、この「必ず答えが返ってくる状態」を、2万点と1日10個の新製品で維持し続けることです。そのためには、古くなった型番を自分で棚から降ろし続けなければいけません。多産多死は、乱暴な戦略ではなく、鮮度を保つための引き算とセットになった設計でした。

決算説明会の場でも、経営陣は「強いエレコムのSKUを育てていきます」「アイテムを増やしていきたいです」「売り場を広げて成長させていきたい」と繰り返しています。※3 数を増やすことが、そのまま成長の言葉になっている会社です。

Ankerとは、真逆の勝ち方をしている

僕のデスクには、エレコムのほかにも中国発のブランドが並んでいます。Anker、UGREEN、SwitchBot。以前、その様子を1本の記事にしたことがあります。

このとき気づいたのは、Ankerの製品名を僕がだいたい言えることでした。どのシリーズを買って、どれが当たりだったか、覚えている。少ない種類を、長く、名前で売るやり方だからです。レビューが積み上がり、次に買うときの指名につながります。

エレコムは逆です。多い種類を、短く、棚で売る。僕は型番を1つも覚えていませんが、必要になったときには必ずそこにあります。

どちらが優れているという話ではありません。周辺機器という同じ売り場で、指名を取りにいく会社と、置き場所を取りにいく会社が並んで戦っている、というだけです。

そしてもう1つ、Logicoolという例もあります。以前、高級キーボードを何台か試したあげく、結局いちばん安いPEBBLE KEYS 2 K380sばかり使っている、という記事を書きました。あの会社は高価格帯で技術を見せて、安いモデルで数を取ります。縦(価格帯)で二段構えのLogicool、横(点数)で面を取るエレコム。同じ棚を、違う方向から埋めにきています。

こうして並べてみると、自分のデスクが急に見取り図に見えてきます。長く使うつもりのキーボードとマウスは、指名でLogicoolを選びました。エレコムの5つは、全部「隙間を埋めるもの」です。

それでも、2万点の会社には弱点があります

末尾のアルファベットが1文字違うだけの型番が、目の前の棚に20個ほど並んでいます。

正直に書きます。エレコムの製品で、僕が困ったことも同じだけあります。

1つ目は、選べないことです。2万点は買う側から見ると「似た型番が20個並んでいる棚」です。末尾のアルファベットが1文字違うだけで対応規格が変わることもあり、パッケージ裏を読み比べる時間が発生します。品揃えの多さは、そのまま選択の負荷として客に返ってきます。売り場で10分立ち止まる僕は、その負荷を毎回払っています。

2つ目は、開発の7割がODMであることの裏返しです。外の力を借りて数を出す設計は、逆に言えば「この分野ならこの会社にしかできない」という核が生まれにくい。エレコム自身も、決算説明の場で「パワーサプライとネットワークは負けている部分がある」と認めています。※3 得意なところと、そうでないところが、はっきり分かれる会社です。

3つ目は、多産多死そのものです。気に入って使っていた製品が、数年後に同じ型番で買えない可能性があります。デスクの棚板に挟んだクリップ型の充電器は、僕にとってかなりの当たりでしたが、次に買い替えるときに同じものが残っている保証はどこにもありません。自ら陳腐化させる会社と付き合うというのは、そういうことです。

保険の仕事に引きつけると、この構造は特約に似ています。あらゆる事態に備えて特約を並べる商品は、確かにどんな相談にも答えられます。ただ、選ぶ側の負担は増え、1つあたりの寿命は短くなる。品揃えで戦う会社は、品揃えの分だけ、客に判断を預けているわけです。

それでも、僕のデスクに6つある理由

数え直してみると、エレコムの6つは全部、主役ではありません。

充電器、電源タップ、変換アダプタ、除電ブラシ、クロス。どれも、キーボードやモニターのように「これを使いたい」と思って買ったものではなく、デスクを組んだあとに残った穴を埋めるために買ったものです。そして、穴の形はその日その日で違います。棚板に挟める形の充電器が要る日もあれば、差込口が10個要る日もある。

そういう買い物のとき、僕らが本当に欲しいのは製品ではなく、探さなくていい状態です。エレコムはそこに2万点を積んで、200人を売り場に立たせています。

2026年3月期の連結業績は、売上高1,321億円(前期比12.0%増)、営業利益155億円(同14.7%増)と伝えられています。※4 前の期は売上高1,180億円、営業利益135億円でした。※3 派手なヒット商品の話は聞こえてきませんが、隙間を埋める会社が、隙間を埋め続けたまま伸びています。

この構造が分かってから、僕の買い方は少し変わりました。

長く付き合うつもりのものは、指名で買う。キーボード、マウス、イヤホン。名前とシリーズを調べて選びます。

穴を埋めるものは、探さないで買う。ケーブル、電源まわり、掃除道具。ここは2万点の会社に任せて、浮いた時間を別のことに使う。

どちらも「安いから」ではなく、何を自分で決めて、何を人に預けるかの話です。

2万点の中から、僕の手元に残ったもの

ここまで会社の話ばかりしてきたので、最後に具体的な型番を並べておきます。

2万点というのは、裏を返せば「自分に必要な1点を、自分で見つけないといけない」という意味でもあります。選択の負荷は買う側が払う——さっき弱点として書いたとおりです。なので、ここでは僕が実際にデスクで使っているものと、同じ考え方で作られている製品を、どの穴を埋めるためのものかという順番で紹介します。値段の安さではなく、形の理由で選んでいます。

① コンセントの位置を、自由にする:クリップ型充電器 EC-AC11767BK

この記事の冒頭に出てきた充電器です。本体そのものが大きなクリップになっていて、デスクの端や棚板に挟んで固定できます。

いちばん効いているのは、片手で抜けることでした。ふつうの充電器はケーブルを抜くときに本体を押さえる必要がありますが、これは挟んで固定されているので、片手で引くだけで外れます。合計最大65WでType-Cが3ポート、床に充電器が転がらないので掃除も楽になりました。

向かないのは、挟める縁がないデスクを使っている場合です。天板の厚みと、挟む場所があるかどうかを先に見てください。

② 同じ発想の、コンセント版:電源タップ ECT-1430BK

①のクリップという発想を、そのままAC電源に持ってきたのがこちらです。3個口・3mで、雷ガードとほこりシャッター、スイングプラグつき。

手元にもう一系統だけ電源がほしいとき、床のタップまで屈まずに済みます。10個口の親玉を1つ置くより、手元に3個口を挟むほうが早い場面は確かにあります。

③ デスクの裏の親玉:10個口タップ ECT-2620BK

差込口が足りない、という問題への回答です。10個口もあるのに細長く、隣のACアダプタと干渉しにくい間隔になっています。

決め手は裏面のマグネットでした。スチール製の脚や裏板にそのまま貼りつけられるので、タップが床に転がりません。マグネットが使えない木製デスクでも、吊り下げ穴があるのでフックで運用できます。雷ガードとほこりシャッターつき。

注意点は、10個口を全部埋めないことです。合計の消費電力には上限があります。

④ カバンの中で絡まない:巻き取り式USB-Cケーブル MPA-CCRLA07BK

週末にカフェでnoteを書くとき、カバンに入れるものは少ないほど良い、といつも思っています。

60W・20V/3AのUSB PD対応で、長さ70cmの巻き取り式。持ち出し用のノートPCとスマホのどちらにも使える出力で、短い分だけカバンの中で暴れません。

向かないのは、据え置きで長さが必要な人です。70cmは机の上で完結する長さなので、コンセントが遠い環境なら別のケーブルを選んでください。

⑤ ホコリを、寄せ付けなくする:除電ブラシ KBR-AM013AS

掃除しても掃除してもホコリが戻ってくるのは、静電気が引き寄せているからです。このブラシは帯電防止繊維で、静電気を抜きながら掃くようにできています。

広い面を撫でる柔らかい毛と、キーボードの隙間用の硬いブラシの2WAY。使わないときは毛先を本体に収納できるので、デスクに出しっぱなしでも毛が汚れません。水洗いできます。

モニターを一度撫でたあと、ホコリの付き方が明らかに変わりました。地味な製品ですが、僕の中では当たりです。

⑥ 指紋を、広げずに拭き取る:クリーニングクロス 超極細繊維 Lサイズ

100円ショップのクロスと何が違うのか、と思っていました。違いました。

超極細繊維で、水性の汚れにも油性の指紋にも対応します。力を入れなくていいのがこの製品のすべてで、スマホの画面を一撫でするだけで光沢が戻ります。普通の布だと指紋を広げてしまう場面で、これは差が出ます。

僕が使っているのは小さいサイズの3枚セットですが、モニターの全面やノートPCの天板を拭くならLサイズのほうが早いはずです。1枚で広い面を一気に往復できます。


6つ並べてみて、あらためて思います。どれも主役ではありません。挟む、貼る、巻き取る、静電気を抜く。すでにあるものを使いやすくするための形ばかりです。

2万点という数字は、こういう小さい穴が世の中に2万個あるということでもあります。

おわりに

日曜の夕方、棚板の充電器からケーブルを引き抜くとき、僕はもうこの会社のことを「無難な国内メーカー」とは思っていません。

自分では作らず、1日10個の新製品を出し、売れたものを自分で捨てながら、売り場の隙間を埋め続けている会社。その隙間の1つが、僕のデスクの下でした。

売り場で10分悩むのは、これからも変わらないと思います。それでも、何を選んでいて、何を選ばされているのかを知ったうえで手に取るのは、けっこう気分がいいものです。

関連記事:

Amazonのセール時に周辺機器をまとめ買いするなら、Prime無料体験の期間中が狙い目です。

この記事が面白かったら、スキとフォローをいただけると毎日更新の励みになります。売り場で「とりあえず」手に取ったものの型番、よかったらコメントで教えてください。


出典

  • ※1 ポーター賞「エレコム株式会社」受賞企業・事業レポート(2019年度 第19回受賞/対象事業=PCや携帯電話の周辺機器・アクセサリの開発、製造販売)。SKU約20,000/2018年度の新製品投入数3,739個・競合2社は300個前後/新商品開発の7割がサプライヤーによるODMで3割が自社開発/自社工場を持たないファブレス/売り上げの半分以上が家電小売り経由/ラウンダーによる陳列・演出/「常に鮮度と競争力を保つ…自ら陳腐化させ、改廃をすることを心掛けている」「多産多死で迅速な市場対応をする」。https://www.porterprize.org/pastwinner/2019/10/25105545.html数値は2018年度時点

  • ※2 日本経済新聞「エレコム最高益支える営業の精鋭200人 商品2万点、家電量販店に提案」(2026年5月)。https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF261AJ0W6A520C2000000/有料記事のため、本記事では見出しと公開部分に書かれた範囲=営業200人・商品2万点・2026年3月期の最高益・大阪の店舗での実演の描写のみを使用

  • ※3 ログミーFinance「【QAあり】エレコム、下期の粗利改善により2年連続で増収増益を達成」(決算説明会の書き起こし)。2025年3月期=売上高1,180億700万円・営業利益135億円/経営陣の発言「強いエレコムのSKUを育てていきます」「アイテムを増やしていきたいです」「売り場を広げて成長させていきたい」「パワーサプライとネットワークは負けている部分がある」。https://finance.logmi.jp/articles/381646

  • ※4 2026年3月期 連結業績=売上高1,321億円(前期比12.0%増)・営業利益155億円(同14.7%増)。エレコム公式サイトのIRページはアクセスが取得できなかったため、決算まとめ媒体の数値を採用しています。公開前に決算短信の原本で再確認します

※本記事の数値は2026年8月2日時点で確認できたものです。製品の型番・在庫・価格は変動します。筆者は記事中で挙げたエレコム製品を実際に使用していますが、それ以外の同社製品については評価していません。


フォロワー数が連続投稿122日目で0人→1000人を超えました!毎日更新継続の秘訣を書きました!

  • noteの毎日更新に挑戦して、挫折した経験がある人

  • ネタ出しと構成に時間がかかりすぎて、執筆が苦しくなっている人

  • AIを文章作成に使ってみたものの、「自分の声」が消えて違和感があった人

  • エンジニアではないけれど、Claude Codeを創作に活かしてみたい人

上記に一つでも当てはまる方がいたら、
なにかヒントが得られるかもしれません


僕のデスクセットアップで”ガチで”買ってよかったものをこちらで紹介しています。よかったら読んでください☺️

記事の誤字脱字の確認と修正、イラスト編集に生成AIを使用しています


X(旧Twitter)のアカウントはこちら!
良かったらフォローしてくれると嬉しいです😊

いいなと思ったら応援しよう!

はたけっち|テック&ガジェット雑学 よろしければ応援お願いします! いただいたチップはクリエイターとしての活動費に使わせていただきます!

この記事が参加している募集