【H×H考察】ゴンはなぜカイトの死にあそこまで怒ったのか?「付き合いが短いのにキレすぎ」への違和感
キメラアント編におけるゴンの変貌。
ネフェルピトーによってカイトを奪われたゴンは、最後には自分の未来すら投げ捨てるほどの怒りを爆発させました。
いわゆる「ゴンさん」へと至る、あの場面です。
しかし、この展開について一つの疑問を見かけることがあります。
「ゴンとカイトって、そこまで長い付き合いじゃないよね?」
確かに、単純に一緒にいた時間だけを数えればそうかもしれません。
それなのに、なぜゴンは自分の人生を投げ捨てるほど怒ったのでしょうか。
ですが個人的には、ここにそれほど矛盾を感じません。
むしろゴンという少年は最初から、人との関係を「付き合った時間」で決める人物ではなかったのではないでしょうか。
ゴンにとって「何年付き合ったか」は重要ではない
その分かりやすい例がキルアです。
二人が出会ったのはハンター試験。
当然ながら最初は赤の他人です。
しかしゴンとキルアはすぐに打ち解け、その後は親友と呼べるほどの関係になっていきます。
もちろん、その後の二人は長く行動を共にしています。
ただ、重要なのはその「長さ」だけではないでしょう。
ハンター試験という特殊な環境で出会い、命の危険すらある試験を一緒に経験する。
その後も天空闘技場、ヨークシン、グリードアイランドと、普通の友人関係とは比較にならないほど濃密な経験を重ねています。
つまりゴンにとって重要なのは、
「何年知っているか」ではなく、「その相手と何を経験し、自分にとってどんな存在になったのか」
なのではないでしょうか。
そう考えると、カイトとの関係も見え方が変わってきます。
カイトは単なる「ジンの知り合い」ではない
カイトはゴンにとって、ただの知り合いのハンターではありません。
そもそもゴンが幼い頃、ジンが生きていてハンターをしていることを知るきっかけになった人物がカイトでした。
つまり、
ゴンがジンを追いかける旅の入口にいた人物
でもあります。
そしてキメラアント編で再会したカイトは、ジンの弟子としてゴンと行動を共にします。
ゴンからすれば、自分がずっと追い続けてきた父親と同じ世界を知っている人物です。
憧れている父親の知り合いであり、自分が目指してきたプロハンターでもある。
当然、親近感も湧くでしょう。
さらにカイト自身もゴンがジンの息子であることを知っています。
単なる初対面同士とは違います。
二人の間には最初から**「ジン」という強烈な接点**が存在しているのです。
会った回数だけを数えれば少なく見える。
しかし、その一回一回の意味は非常に重い。
ゴンとカイトの関係は、
時間は短くても密度が濃かった
と考えた方が自然ではないでしょうか。
しかもカイトはゴンたちを守って倒れた
さらに忘れてはいけないのが、カイトがピトーと戦うことになった経緯です。
ピトーの圧倒的なオーラを前にして、カイトはゴンとキルアを逃がします。
その結果、カイトはピトーに敗れました。
ゴンからすれば、
「自分たちを逃がすためにカイトが犠牲になった」
という構図になります。
ここには悲しみだけではなく、強烈な罪悪感もあったのではないでしょうか。
それでもゴンはカイトが生きていると信じ続けます。
カイトを元に戻せる。
まだ助けられる。
そう信じていた。
だからこそピトーのもとへ向かったわけです。
ところが、そこで突きつけられたのが、
「カイトはもう死んでいる」
という現実でした。
自分たちを守ったためにカイトが倒れた。
それでも助けられると思っていた。
その最後の希望まで完全に消えた。
それまで押し込めていた罪悪感、悲しみ、怒り、絶望。
それらが一気に噴き出した結果が、あのゴンだったのではないでしょうか。
「キルアはいいよね 冷静でいられて 関係ないから」
そして、ゴンにとってカイトがどれほど特別だったのか。
それを象徴しているのが、ピトーを前にしたゴンとキルアのやり取りだと思います。
ゴンはキルアに対して、
「キルアはいいよね 冷静でいられて 関係ないから」
と言います。
この言葉はキルアを深く傷つけました。
当然でしょう。
キルアだってカイトと行動を共にしています。
ピトーが現れたときもその場にいました。
その後もゴンと一緒にカイトを助けようとしてきました。
だから文字通り「キルアには関係がない」という話ではありません。
では、なぜゴンはこんなことを言ったのでしょうか。
ここで重要なのは、「関係ないから」だけではなく、その前にある、
「冷静でいられて」
という言葉ではないでしょうか。
ゴン自身は、カイトのことになるともう冷静ではいられない。
それに対してキルアは、ピトーを前にしても状況を冷静に判断しようとしている。
そんなキルアを見たゴンには、
「キルアが冷静でいられるのは、俺ほどカイトに特別な感情を持っていないからだ」
と映ってしまったのではないでしょうか。
つまりゴンの「関係ない」は、
「カイトを失うこの苦しみは、キルアには分からない」
という感情に近かったのではないかと思います。
キルアとカイトは「大切さのベクトル」が違う
もちろん、だからといってキルアがゴンにとって大切ではないわけではありません。
むしろキルアは、それまで数々の冒険を共にしてきた最高の親友です。
ただし、キルアとカイトではゴンにとっての意味が違います。
キルアは、自分で出会い、自分で選び、一緒に冒険してきた親友。
一方のカイトは、
ジンへとつながる人物であり、ゴンがハンターとして旅を始める原点にもいた存在。
どちらが大切かという話ではありません。
大切さのベクトルそのものが違う。
だからこそ、カイトを失ったゴンの感情の中には、普段キルアと共有している世界とは別のものがあったのではないでしょうか。
ゴンは悪気なくキルアを傷つけた
そして、この場面が非常にゴンらしいと思う理由があります。
ゴンは良くも悪くも真っ直ぐです。
好きなら好き。
友達なら友達。
助けたいなら助ける。
普段はその純粋さが人を惹きつけています。
ところが極限状態になると、その真っ直ぐさは残酷さにもなります。
ゴンはあのとき、キルアを傷つけるために言葉を選んだわけではなかったのかもしれません。
むしろ逆です。
自分が感じていることを、そのまま口にしてしまった。
「俺はこんなに苦しいのに、キルアは冷静でいられる。キルアには俺の気持ちは分からない」
ゴン自身が自分の感情でいっぱいになっていたからこそ、キルアがどれほど自分を心配し、どれほど一緒に苦しんできたのかまで考えられなくなっていた。
だからこそ、キルアには余計につらい。
キルアはゴンのために命を懸けるほど彼を大切にしている。
それなのにゴンから「関係ない」と言われてしまう。
ゴンには悪意がなく、キルアには悪意がないことも分かっている。
それでも傷つく。
このすれ違いをわずかな言葉で描いているのが、あの場面なのだと思います。
むしろ「関係ない」がカイトの特別さを表している
そして今回のテーマから見ると、この場面にはもう一つ重要な意味があります。
「カイトとは付き合いが短いのに、なぜゴンはあそこまで怒ったのか?」
その答えの一部を、ゴン自身がすでに口にしているとも考えられるからです。
ゴンはカイトを失ったことで、キルアにすら共有できないと思うほどの感情を抱えていました。
もしカイトが単なる「最近知り合ったハンター」にすぎなかったのであれば、ここまで感情的になったでしょうか。
「冷静でいられて」
「関係ないから」
この言葉そのものが、逆説的に、
ゴンにとってカイトがどれほど特別な存在になっていたのか
を表しているようにも思えます。
ゴンは人間関係を「時間」ではなく「密度」で作る
こうして考えると、
「カイトとは付き合いが短いのに、ゴンがあそこまで怒るのはおかしい」
という疑問そのものが、ゴンという人物の人間関係の作り方とは少しズレているように感じます。
ゴン自身が、付き合った年月で人の大切さを決める人物ではないからです。
キルアとも出会ってすぐに打ち解けました。
カイトとも短期間ながら濃密な経験をしています。
そしてカイトの場合、そこへさらに「ジン」という特別な存在までつながっています。
ゴンにとってカイトは、
単に最近知り合ったハンターではありません。
自分がハンターになる原点にいた人物。
憧れ続けた父親につながる人物。
一緒に行動した先輩ハンター。
そして最後には、自分たちを守るためにピトーと戦った人物。
それだけの意味を持つ人間を失ったのです。
ならば、あの怒りは本当に不自然だったのでしょうか。
少なくとも私は、そうは思いません。
むしろゴンという少年が、それまで見せてきた人とのつながり方を考えるほど、
あそこまで壊れてしまった理由が見えてくるように思います。
人間関係の深さは、必ずしも一緒にいた時間では決まらない。
ゴンとカイトの関係は、そのことを強烈に描いた一例だったのではないでしょうか。
