【舞台脚本】花は巡りて(公園に集まる変人たちのドタバタ人情喜劇)
(あらすじ)
幼い頃から慣れ親しんできた公園がなくなるかもしれない。
そう聞いた舞台役者のあざみは、公園のイメージをアップさせて廃園を阻止しようとする。
ホームレス男性を追い出したり、勝手に商売する詩人や占い師にも注意を向ける。ヤクザとも遭遇し、トラブルに巻き込まれてしまう。
なんとか乗り越えるが、その中でホームレス男性の家庭事情を知る。
別れた妻と娘がこの町に住んでるらしい。情けないので会って話は出来ないが、遠くからでも顔が見たいとのこと。
あずみは思いつく。
公園でゲリラ的にお芝居をして、妻と娘を来させようと計画。
役者仲間はもちろん、さっきまで迷惑に思っていた詩人や占い師、ヤクザも仲間に入れて一世一代のステージに乗り出す。
(時代)
2000年夏~秋頃。
(場所)
公園。
遊具・ベンチ・ゴミ箱・花壇など配置。
端の奥に段ボールハウスの一角。
(人物)
・あざみ(23)・・・♀ 舞台役者。
・源三郎(79)・・・♂ あざみの祖父。公園の管理人。
・雄助(25)・・・・♂ 舞台役者。
・カスミ(22)・・・♀ 舞台役者。
・原田(35)・・・・♂ チンピラ。
・エリカ(29)・・・♀ 原田の彼女。キャバ嬢。
・山本(57)・・・・♂ ホームレス。
・のぶを(26)・・・♂ 路上詩人。
・薔薇美(48)・・・♀ 占い師。
・北川(27)・・・・♀ 市役所勤務。
・中村(40)・・・・♂ 社長秘書。
・大道寺(57)・・・♂ 大企業の社長。
・宮原(36)・・・・♀ 仕分け人。
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【1】公園の危機
※暗転中
◎効果音「ラジオ体操」(イントロ)
☆照明フェードイン・やや暗め+橙
(源三郎、センターで後ろ向きに立っている)
◎効果音「子供の笑い声」~「自転車のベル」~「とうふ屋のラッパ」
あざみ「(登場)おじいちゃん」
(源三郎、気づかず)
あざみ「おじいちゃんっ!」
☆普通照明(地明かり)
源三郎「あっ。何だあざみか。すまんちょっと色々思い出してて…」
あざみ「もう~早く気づいてよぉ。後ろ姿けっこうやばかったよ?」
源三郎「ええ?」
あざみ「何か独特のオーラっていうか。一歩間違えたら町の七不思議的存在にされそうな。あれだよ、口裂け女に続いて、公園ジジイとか言われそう!」
源三郎「公園ジジイってそれ普通のじいさんだろ」
あざみ「え? あ~そっかそっか! この前やった芝居がさ、そういう都市伝説の話だったから、ついそっち寄りに考えちゃった」
源三郎「あの舞台、あざみも頑張ってたなあ。目頭裂け女だっけ? お前の役」
あざみ「そうそう。役作り難しかったな~。ココを切開し過ぎた女」
源三郎「そういう人テレビでもたくさん見るよな。例えば、」
あざみ「もっと頑張る私! うちの劇団まだまだ小さいから」
源三郎「おう。応援してるぞ」
あざみ「でもね、お客さんの中にはすごく厳しい人がいて、舞台見ながらずっとメモしてるの。それで最後にたくさん文句を書いた紙を席に置いて帰るわけ」
源三郎「厳しいなあ」
あざみ「前なんか、私の演技を酷評して帰ってって」
源三郎「なんて奴だ! 俺の可愛い孫に…ぶったたいてやる!」
あざみ「もう顔覚えちゃったよ。ピンクの手帳を持った女の人」
源三郎「どうせ見る目が無いんだ。気にしないで稽古頑張れ!」
あざみ「うん。ありがと! 今日も稽古だから頑張ってくる!」
源三郎「そうかそうか。家から稽古場が近いと便利だな」
あざみ「うん! でもまだ他の団体が使ってるからさ、この公園でセリフの練習しようと思って来たんだ。劇団の仲間もね、そういう時よくここで一緒に練習すんの。これからも使わせてね!」
源三郎「…うぅん」
あざみ「あれ、どうしたの?」
源三郎「あのぉ、そのぉ…(あざみを見つめる)」
あざみ「嘘…。おじいちゃん、私だよ? あざみ!」
源三郎「いや認知症発動したわけじゃないよ」
あざみ「え、違うの? 良かった~何か複雑な表情だったからさ」
源三郎「まあ、複雑な気持ちなのは確かだけど」
あざみ「何? 何かあったの?」
源三郎「…ああ。実はこの公園だけどな、もしかしたら閉鎖するかもしれない」
あざみ「ええ!」
北川「(登場・カードケースをぶら下げてる)こんにちは」
源三郎「あ~こんにちは。(あざみに)市役所の北川さんだ」
あざみ「市役所?」
北川「源三郎さん、そちらの方は?」
源三郎「あぁ、孫のあざみだよ」
北川「へぇ~! どうも初めまして。私、市役所の都市整備部公園課に勤める北川と申します」
あざみ「あ、どうも。劇団・朝からケンタッキーのあざみです」
北川「胃が重い名前ですね…。役者さんなんですか?」
あざみ「はい。良かったら見に来てください! チケットノルマえげつないんで」
北川「あ~、行けたら行きます」
あざみ「それ来ないやつだー」
源三郎「コラ。何だその態度は。来てくれるのが当たり前じゃないんだぞ?」
あざみ「はい…ごめんなさい」
北川「そんな良いですって」
源三郎「ところで北川さん、どうだった? 会議の結果」
北川「う~ん正直ちょっと厳しいです」
源三郎「そうかぁ」
あざみ「え、何の話?」
源三郎「この公園だよ」
あざみ「あっ、さっき言ってた、閉鎖するかもってやつ?」
源三郎「そうだ」
北川「私も何とか廃止しないように訴えたんですが、やっぱり」
あざみ「ねえ何で? 何で無くなっちゃうの? おじいちゃんこの公園の管理人として一生懸命やってたのに、ひどくない?」
源三郎「まあ、色々あってな」
あざみ「色々じゃ分かんないよ! ねえ北川さん教えてよ」
北川「はい。来年の2001年に向けて、都市開発の計画が進んでまして、新しい施設をいくつか建てる予定なんです。その候補地として、この花畑公園がある場所も含まれてて」
あざみ「そんなあ! 公園が無くなったら子供とか遊べないじゃん!」
北川「いやあ、実はその子供達が相次いでこの公園でケガをしてて、遊び場としての評判はあまり良くないんです…」
あざみ「そうなの?」
北川「はい。去年は、すべり台のすべりが悪過ぎて、ズボンとパンツが破け、お尻にすり傷が出来た子が何人も」
あざみ「マジで? 紙やすりのレベルじゃん」
北川「ブランコが最高潮の時に鎖が外れて、隣町まで飛んでった子もいます」
あざみ「嘘ぉ!」
北川「(体をねじ曲げながら)ジャングルジムでこう、無理な体勢取ってボキーッていっちゃった子もいるし」
あざみ「それ自分のせいじゃない?」
北川「砂場も深過ぎて、奥底まで吸い込まれ、別の公園の砂場から出てきた子もいます」
あざみ「地下どうなってんの…」
源三郎「だから、遊具の修理が出来ないか頼んだんだけどな」
あざみ「そうだよ。直せば良いだけじゃん」
北川「ただ、それらの事故をきっかけに、この公園が必要なのかどうか見直しが始まって」
あざみ「見直し?」
源三郎「そうなんだよ」
北川「ちょっと先を行った所に別の公園もあって、そっちは立地条件的にもけっこう利用者がいるんです。大人も子供も。それに比べてこの花畑公園は…」
あざみ「確かに、ちょっと寂しいかも」
北川「しかも、ホームレスの方も住み着いてるし」
あざみ「あ~3週間くらい前からいるね」
北川「あと、変な商売をする人もいるでしょう?」
あざみ「あの人達かぁ。たまに見るけど」
北川「そういう事がうちの課長や他の人の耳にも入って、果たして修繕費や維持費をかけてまで存続させる価値があるのかっていう空気になっちゃいまして」
源三郎「そうなるとなぁ…」
北川「いっその事なくしちゃって、駐車場とか違うものを作った方が市にもお金が入るんじゃないかって話になったんです」
源三郎「で、最近この北川さんと、どうにか公園を続けていけないか相談してたんだ」
あざみ「北川さんも、この公園をつぶしたくないの?」
北川「はい。私も、小さい頃からこの公園で遊んでましたし。もし結婚して子供が出来たら、連れて来て一緒に遊びたいな~って思ってるんです」
あざみ「そうだったんだ」
北川「でも力及ばず…私も最後まで粘って説得したんですが、『お前はあの公園で育ったから意見が偏ってる』と言われちゃいまして」
あざみ「嫌な上司~。その人達はこの公園に来た事あるの?」
北川「ありません。他にも色々仕事があって」
あざみ「うわ~お役所仕事って感じぃ。書類や規則だけと向き合って、現場にいる人間の空気とか何も知らないみたいなさー」
源三郎「そう言うなって。現に北川さんみたいに頑張ってくれてる人もいるんだ」
あざみ「さーせん」
北川「いえいえ。まあそういう状況なので、今日別の方がこの公園を最終審査しに来る事になったんです」
源三郎「え?」
あざみ「最終審査?」
北川「はい。全国の公園を見て回り、そこが必要かどうかを判断する仕分け人の方がいるんですが、その人が国から派遣されてくるんです。今日はその報告に来ました」
あざみ「えっじゃあその仕分け人がOKって言えば公園は無くならないの?」
北川「おそらく、その方向で話が進むかと」
源三郎「逆に、その仕分け人がダメって言ったら」
北川「公園は閉鎖されます」
あざみ「いやでもたった一日見ただけで何の判断が出来るの?」
北川「確かにそうなんですけど、これもいわゆるお決まりで、お役所仕事ってやつの一つです」
源三郎「なるほどなあ」
あざみ「でもそれってさ、仕分け人が来るって聞いたらみんな良い公園に見せようとしてインチキしそうだよね」
北川「はい。だから本当は言っちゃいけないんです」
あざみ「え?」
北川「そのインチキをしてもらいたいんです。この花畑公園存続の為に!」
源三郎「北川さん、本気か?」
北川「はい。あいにく私はこれから別の仕事に行かなきゃいけないんで、直接は協力出来ないんですが、何とかこの情報だけでも伝えたくて」
源三郎「北川さん、いつか結婚して子供が出来たら、ここに連れてくるって言ってたよな…?」
北川「はい」
源三郎「その子供の父親、俺がなっても良いんだぞ」
あざみ「なに惚れてんのおじいちゃん!」
源三郎「あ、すまんつい。だって北川さんがずい分と良く力を貸してくれるから」
北川「いえ、これくらいしか出来ませんけど…」
あざみ「ねえ、ちなみにその仕分け人ってどんな人?」
北川「私も知らないんです。そこは秘密みたいで」
あざみ「そうかぁ。じゃあいつ何時も気を緩めちゃいけないってわけね。男か女かも分からない」
北川「はい。油断しないように」
あざみ「分かった」
北川「じゃあ私はこれで。来れそうだったらまた来ますので!(退場)」
あざみ「ありがと~。おじいちゃん、これって最後のチャンスって事だよね」
源三郎「そうだな…こうなったら、仕分け人に最高の公園を見せよう!」
あざみ「よぉし。頑張るぞ!」
あざみ・源三郎「(手を上げる)おー!」
◎効果音「グキッ」(骨折音)
(源三郎、音と同時にダメージ)
あざみ「あれ、おじいちゃん?」
◎効果音「グキッ」(骨折音)×3
(源三郎、その都度ダメージを受ける)
◎効果音「爆発」
(源三郎、大ダメージ)
あざみ「えーっ! 人間の音じゃないんだけど! 大丈夫おじいちゃん?」
源三郎「あざみぃ~(倒れる)」
あざみ「(抱きかかえる)おじいちゃんっ!」
源三郎「ちょっと腰やっちゃった…」
あざみ「たぶんちょっとじゃないよ…」
源三郎「この公園を、頼む」
あざみ「もちろんだよ。私だって、この公園で育ったんだもん。今だって!」
☆照明効果
◎BGM
源三郎「朝はラジオ体操、昼は子供が走り回り」
あざみ「読書やスポーツする人もいて」
源三郎「とうふ屋のラッパが鳴ったら帰ってく」
あざみ「夜はこっそり恋人達がデートして…」
源三郎「朝になるとまたみんな集まってくる」
あざみ「おじいちゃんともいっぱい遊んだ」
源三郎「ああ。楽しかったなぁ」
あざみ「色んな思い出が詰まった場所…」
源三郎「そんな所が無くなるなんて、寂しいじゃないか…(ガクッ)」
☆普通照明
◎BGMアウト
あざみ「おじいちゃん? おじいちゃーん!」
源三郎「中央接骨院に、」
あざみ「あぁ生きてた」
源三郎「(手を借りて起き上がり)とりあえず、腰を直さないとな。その間は何とかお前だけでつないどいてくれないか」
あざみ「大丈夫任せてよ! 劇団の仲間にも声かけて協力してもらう。早めにここらへん来てると思うから」
源三郎「頼んだぞ…」
あざみ「うん。とりあえず病院行こっ」
(あざみ・源三郎、退場)
【2】謎のホームレス
山本「(登場・左頬にホクロ。花冠持参)よおし。出来たぞ…」
大道寺「(登場・左頬にホクロ。スーツにノーネクタイ)おい、そこの」
山本「え?」
大道寺「あんたホームレス?」
山本「いや、そんなハッキリ言わなくても…」
大道寺「じゃあ、段ボーラー」
山本「う~ん…」
大道寺「野武士」
山本「ちょっとカッコ良過ぎじゃ…」
大道寺「ゴミ」
山本「おいっ。本当の事言うな」
大道寺「何でも良いだろ呼び方なんて」
山本「まあ、こうなったらそうだけど。何なんだよあんた?」
大道寺「この公園の住み心地はどうだ?」
山本「え? いやあ、どうだろうな。まあまあだけど」
大道寺「そうか。いや今ね、住みやすい公園を探してるんだよ」
山本「じゃあ、あんたもホームレス?」
大道寺「まあ、そんなとこだよ。どこが良いか選んでる途中だ」
山本「ほお」
大道寺「いくつか見たがどうもしっくり来なくて。これから他の物件も見に行くんだ」
山本「物件て」
大道寺「どっかオススメある?」
山本「あー。どういう所が希望?」
大道寺「出来れば角部屋が…」
山本「公園の角って事かな。たぶん1丁目の公園なら、角の部分もあんま人目につかなくて良いと思うけど。他には?」
大道寺「あと~、風呂トイレ別…」
山本「あ~確かあそこ水道はあったけど、トイレだけ2丁目の公園に行かないと無いんだよ」
大道寺「まあそれはそれで風呂トイレ別って事だもんな。よし。そこ間取りは?」
山本「1SBJ」
大道寺「1LDKみたいに言ったけど」
山本「すべり台のS、ブランコのB、ジャングルジムのJ、それぞれ1個ずつ」
大道寺「なるほど了解。そこ良いなあ。あんたは住まないの?」
山本「まあ、ここにいるって決めたからさ。ここにいれば、会えるかもしれなくて…」
大道寺「(見回しつつ)まあ確かにここも良いな。全然人が来ないから落ち着いて暮らせそうだ。あんな慌ただしい日々はもうごめんだから、むしろ俺にはこういう所が合ってるのかもしれん」
山本「それは、仕事就いてた時の事か?」
大道寺「まあそんなとこだ。待てよ? アンタもしや、この場所取られたくないから適当な情報言って追い払おうってんじゃないよな?」
山本「違うよ」
大道寺「そうか。なら良いんだ。色々どうも。じゃあ行ってくるわ(退場)」
山本「ああ。ったく教えてもらっといて何であんな態度がでかいんだよ(隅に行って座る)」
あざみ「(登場)ほらほら来て来てっ」
(雄助・カスミ、登場。ヤンキーの格好)
カスミ「ねえあざみ、何で私らがこんな格好しなきゃいけないの?」
あざみ「あーごめん急いでたから説明してなかったね。それが、ここを良い公園に見せる為の第一段階なの。まさか舞台の衣装がこんな風に役立つとはね」
雄助「えっ、でもこんなヤンキーがいたら、良い公園に見えないんじゃない?」
あざみ「そりゃヤンキーがいたらね。でも、ヤンキーよりもいて欲しくない存在がいるんだよね」
カスミ「それって、あそこにいる…」
雄助「段ボーラー?」
あざみ「何その呼び方。ホームレスでしょ。あのホームレスがいたら評価が激下がりする。だから、ヤンキーのふりして怖がらせるの」
カスミ「あ、それで追い出すってわけ?」
あざみ「そうっ」
雄助「頭良いねあざみちゃん! さすがだよ!」
あざみ「この作戦が上手く終わったら、今度は普通の格好に戻ってカップルが楽しんでる光景を演じて」
雄助「えっとぉ、ちなみそのカップルってのは、彼氏役は僕で、彼女役は…?」
あざみ「それもカスミにやってもらう。私は他にも色んな作戦を考えるから」
雄助「分かった…」
あざみ「後で美味しい物たくさんおごるからさ!」
カスミ「イェーィ」
あざみ「さてどのタイミングで…(山本の様子を見出す)」
カスミ「残念だったね。演技くらいじゃないとあざみが恋人になってくれたりなんかしないのに」
雄助「何だよそれ」
カスミ「まあまあ照れんなって。私が言ってあげよっか? 好きだって」
雄助「そんなんじゃないって!」
カスミ「ねえあざみ!」
雄助「おいっ」
あざみ「何?」
雄助「バカやめろって」
カスミ「あのね、雄助があざみの事、」
雄助「(間に入ってごまかす)イェーイ♪」
カスミ「あざみの事、」
雄助「ガオーッ」
カスミ「あざみ、」
雄助「(手でバツを作り)ブッブー」
カスミ「あざ、」
雄助「もしもーし?」
カスミ「あ、」
雄助「びよーん」
カスミ「あ、」
雄助「かめはめぇ~」
あざみ「うるさいなあっ。ふざけないでよ雄助」
雄助「えっ…」
カスミ「私から強く言っとく」
あざみ「ありがと(山本の様子を見出す)」
雄助「何でそうなるのぉ」
カスミ「ごめん。うまくいかなかった」
あざみ「よし。ホームレスも気を抜いてる! 脅すなら今」
カスミ「もう出番かぁ」
雄助「えっとぉ、怖がらせればいいんだよね?」
あざみ「そう。ヤンキーがどれだけ恐ろしい奴かをアピールして追い出すの」
カスミ「了解」
雄助「台本もなくて出来るかな」
あざみ「役者でしょ? ドリブルかましてよ」
(雄助、カスミの顔を見る)
カスミ「アドリブ」
雄助「そうか…分かった。役者として修行にもなるもんね!」
あざみ「頼もしい! じゃあ私ちょっとだけおじいちゃんの様子見に行ってくるから、少しの間任せたよ? すぐ戻ってくるから。頑張って!(退場)」
雄助「行ってらっしゃい!」
カスミ「じゃあ雄助、私らも行こうか」
雄助「OK」
(雄助・カスミ、悪ぶって山本に近づく)
雄助「オウオウオウオウ!」
山本「ん?」
雄助「俺マジで怖ぇぞ~」
カスミ「そうだよ~」
雄助「今からこの公園は俺とカスミの貸切だ」
カスミ「余計な人間は出てった方が身の為だよ!」
山本「こ、公園はみんなのもんだろ…」
カスミ「良いのかな~? 雄助怒らせるとやばいよ~?」
山本「な、何だっていうんだよ…」
カスミ「雄助」
雄助「おう(ゴミ箱からペットボトルを取り出す※いろはす風)これで良いか」
カスミ「見せてやんな」
雄助「いくぜ?(山本に見せつけるように片手でペットボトルをつぶす)」
山本「…え?」
カスミ「怪力だよ~? あんたもこうなるんだからねっ!」
山本「いや俺でも出来るぞ。リサイクル用のだろ」
雄助「こいつ、ビビッてねえ」
カスミ「もっと見せてやんな!(ペットボトルを捨て、ベンチの上にあるジャンプを取って渡す)ほら!」
雄助「おう。行くぜ? ふんっ! ん~!(ジャンプを破こうとするが出来ず、やめてジャンプを山本に見せつけ)シワつけてやったぜ」
カスミ「今週号だよ~? 新品でも躊躇しないんだからねっ!」
山本「すごくねえよ。普通破るとかだろ」
雄助「何だと?」
カスミ「雄助、何か雑誌破れない?」
雄助「えっとぉ…フリーペーパーある?」
山本「薄いだろそれ」
雄助「くそお!」
カスミ「雄助っ、何とかして!」
雄助「あのぉ、俺そのぉ、そうだフラッシュ暗算できる!」
カスミ「3ケタ台だよ~? 普通は2ケタ台でワーッってなっちゃうんだからねっ!」
山本「すごいなーとはなるけど怖くは無いぞ」
雄助「ちゅ、中学でおねしょは卒業したし!」
カスミ・山本「遅えよ!」
雄助「えっそうなの!? しまったあ…もうどうすりゃ良いんだよおっ」
【3】恐怖のヤクザ
(原田・エリカ、登場。雄助達を見る※原田はグラサン着用)
カスミ「(原田達に気づかず)あーもう! とにかく雄助は怖くてやばくて最強なんだよっ!」
雄助「そ、そうだそうだ! この公園は俺のもんだこの野郎! 他の奴は出て行けこんちくしょう!」
原田「じゃあ俺らも出て行った方が良いのか?」
雄助「ああん?(言いながら振り向く)うおぉ~!(ビビる)」
エリカ「私達ぃ、ここでのんびりしようとしてたんだけどぉ」
雄助「いや、あの~」
原田「おめえ、怖くてやばくて最強なの?」
雄助「へ? いや、そのですねぇ。どうしよぉ~?(カスミに)」
カスミ「無理無理! もう本物じゃん!」
山本「ん? 何だ本物って」
エリカ「ケンちゃんより怖くてやばくて最強な人なんているのー?」
原田「おうエリカ、気になるよなあ?(雄助に詰め寄る)」
カスミ「あの! すいません実は…」
あざみ「(登場)ただいま~(光景を見て)ええ! 本物のチンピラ…」
原田「あん? 『実は…』何だってんだよぉ!(カスミにも詰め寄る)」
あざみ「(端に待機)やばい!」
雄助「お前なんか眼中にねーんだよ!」
カスミ「え?」
原田「はあ?」
あざみ「お~やるじゃん雄助! そのまま追っ払え!」
雄助「そ、そんなグラサンしてたって怖くねーぞ! 変なのー!」
エリカ「ひどぉーい」
原田「(グラサンをはずす)てめえ。このグラサンはエリカがくれた高級品なんだよバカにすんな! おい持っとけ(グラサンをエリカに渡す)俺はマジで怒ったぞ」
雄助「ビビらそうとしても無駄だ! とっとと出て行け!」
山本「さっきのしどろもどろとは大違いだ」
エリカ「ねえこいつ絶対イキがってるだけだと思う」
雄助「黙れコラ!」
(原田、とっさにエリカをかばう)
あざみ「お~カッコ良い!」
カスミ「よし。行け行け!」
雄助「はっはっは。女子供年寄り、全員かかって来い」
山本「弱いのばっかりだな」
原田「てめえ俺の女に怒鳴ってんじゃねえぞ!(胸ぐらをつかむ)」
雄助「ひっ!」
あざみ「雄助!」
雄助「…良いのかな~? そんな事してぇ」
原田「ああん?」
雄助「俺のバックに誰がついてるかも知らず」
原田「(手を離し)だ、誰がついてんだよ」
雄助「…ソニー」
原田「えっ」
エリカ「やばいよケンちゃん大企業だよ!」
雄助「日立、東芝、象印」
原田「何だとっ」
エリカ「やばいよ炊飯器メーカー中心に攻めてきたよ!」
あざみ「良いぞ良いぞ。その調子でホームレスもまとめて追い出して」
原田「負けねえ。どんな大企業がバックについてても、俺はエリカを守る!」
エリカ「ケンちゃん…」
雄助「自民党」
原田「負けた!!」
エリカ「ずるいよ! 与党出してくるなんてずるいよ!」
山本「おいおい。いくら何でもそんなの嘘だって、」
原田「知らねえ! 俺は民主党に投票する! 今日はエリカとここで過ごすって決めたんだ。お前らだけに譲ってたまるか!」
雄助「(舌打ち)なかなか手強い。どうしよう…」
あざみ「雄助が押され始めた」
エリカ「ケンちゃんの言う通りだよ。あんた達がどっか行きな!」
カスミ「嫌だね。そっちが出てって!」
原田「この野郎~こうなったら男らしく、相撲で決着つけようぜ!」
カスミ「相撲?」
雄助「え、本当に?」
原田「おう!」
雄助「そ、そんなの痛そうだから嫌だ!」
原田「情けねえ事言ってねえで来いこの野郎!(雄助に近づく)」
雄助「(逃げながら)嫌だよ! 口でごまかせない範囲の事は断る!」
原田「てめえ来いこの野郎!(追いかける)」
雄助「嫌だあ!(逃げ回る)」
エリカ「待て腰抜け!(追いかける)」
カスミ「ズルイよあんたまで!(追いかける)」
あざみ「え? ちょっと何この状況」
雄助「助けて!(山本に駆け寄る)」
山本「何で俺なんだよ!」
原田「(構えて)はっけよ~い、のこった!(突進)」
雄助「えい!(山本を前に押し出す)」
(原田が山本に体当たり)
山本「ぐわあっ!(吹っ飛んで倒れる)」
あざみ「あっ! ホームレス…」
原田「何だよきたねえおっさん出てくんなよ!」
山本「痛てててて…(泣)何すんだよこんちくしょう! お前らなんて、適当にイチャついて、とっとと出てけ!(退場)」
カスミ「あ、いなくなった」
原田「何だアイツ…まあいい。こっちはこっちで勝負つけようぜ。はっけよ~い」
雄助「も、もうやめてくれえ!(退場)」
原田「逃がすかあ!(退場)」
エリカ「あっ、ケンちゃん待ってよぉ(退場)」
あざみ「雄助っ(端から表に出てくる)」
カスミ「(あざみに気づいて)あーあざみ!」
あざみ「雄助どうしよう!」
カスミ「あいつすばしっこいから逃げれるよ」
あざみ「だと良いんだけど…」
カスミ「ねえ、これはこれでミッション達成なんじゃない?」
あざみ「え?…あーそっか! ホームレスもチンピラもいなくなったし。やったぁ! ありがとうカスミ。助かったよ。たっぷりお礼する!」
カスミ「どうも」
あざみ「ナイス演技でしたあ」
カスミ「えへへー。そう?」
あざみ「って言うかカスミと雄助のカップル、けっこうお似合いだったよ? 本当に付き合うのも悪くないかも! ほら、カスミ案外あーいうのタイプじゃん。私、オススメするよ」
カスミ「えっ、いやでも雄助はさ…」
あざみ「ん?」
カスミ「何でもない! おじいちゃんの様子どうだった?」
あざみ「家で休んでたから平気」
カスミ「そっか。じゃあ私、自転車あるから追いかけて、雄助見つけたら一緒に戻って来るわ」
あざみ「お! 頼りになる」
カスミ「で、普通の格好になって来れば良いんだよね?」
あざみ「そう。いつ仕分け人が来るか分からないから、なる早で…」
カスミ「仕分け人?」
あざみ「あ~公園を調査する人」
カスミ「そうなんだ。OKじゃあまた後で!(退場)」
あざみ「ありがとう! よ~し第二段階。どうにかして公園が盛り上がってるように見せないと」
【4】ポエマーと占い師
のぶを「(登場)ふぅー。良い天気だぁ」
あざみ「げっ! アイツたまに来る路上詩人…」
のぶを「今日はご主人様が見つかると良いね(売り場のセッティング)」
あざみ「あの~」
のぶを「いらっしゃい! どうぞ見てって下さい。みんな良い子ですよ」
あざみ「良い子って。ただの詩でしょ」
のぶを「(微笑む)…言霊って知ってますか?」
あざみ「はい?」
のぶを「言葉は、その人の口から発せられた瞬間に魂が宿ってさまよう。いわば、命を宿した子供と同じ。僕は、その子達を必要としてる皆さんにお届けしてるんだ。いわば、コウノトリみたいなものかな」
あざみ「へぇ」
のぶを「最近は携帯電話で、メールというものが出来るようになったでしょ? だから、文字がどんどん流されて軽くなってしまった。でも僕は、」
あざみ「話の途中なんですけど、ここでそれを売るのやめてもらいたいんですよ」
のぶを「え?」
あざみ「子供が遊ぶスペース取っちゃうし、怪しくて誰も入ってこなくなるんです」
のぶを「君がいるじゃないか」
あざみ「いや、私はこの公園の管理人をしてるおじいちゃんに頼まれて、今こうやって変な人を注意してて」
のぶを「変な人?」
あざみ「あぁえっとまあ、」
のぶを「今の君にピッタリの子がいるよ(色紙を取り出す)」
あざみ「は?」
のぶを「(色紙を読む)『和気あいあい。脇にどけずに、和気あいあい。のぶを』(色紙を見せる)」
あざみ「いや見せられても…。あの、もう変なイメージついちゃうんでどっか行って下さい。こっちもあんま時間ないんで」
のぶを「(色紙を取って読む)『あせらなくて良い。ゆっくりと。しっかりと。のぶを』(笑顔の押しつけのように色紙を見せる)」
あざみ「いるいるそうやって言う人。よくある慰め言葉を文字にしただけでしょ」
のぶを「『アボカドに、お醤油かけて、トロみたい。のぶを』(色紙)」
あざみ「急に何それ。趣旨変わってんじゃん」
のぶを「(色紙を取って眺め)…『のぶを』(見せる)」
あざみ「いやそれだけ? 、もうさ、相田みつをの劣化版じゃん」
のぶを「(色紙)『人間は、機械じゃないから、劣化しない。しいて言うなら…』」
あざみ「(ビッシリと文字が書かれた色紙を取って見せる)いやいや長い長い。もう小論文じゃん。だいたいこんなのいくらで売ってんの?」
のぶを「値段はその人に決めてもらってるんだ」
あざみ「じゃあコレ全部1円で買うから出てってよ」
のぶを「はあ?」
あざみ「買うんだから私が値段決めて良いんでしょ?」
のぶを「嫌です! あなたにこの子達を預けられない」
あざみ「何が子供だよ。子供に値段つけて売ってるなんて人身売買じゃん」
のぶを「そ、そんな事ない! 命の値段は僕には決められない」
あざみ「だったら売ったりしないでタダであげれば良いでしょ? 設定ブレてんじゃん」
のぶを「うるさい! 今の君にピッタリのやつがあるよっ(色紙に殴り書きして見せる)『帰れ! のぶを』」
あざみ「もうそれあんたが帰れって言われてるように見えるけど」
のぶを「あっ…」
薔薇美「(登場)見えた! 今日は波乱が巻き起こる…」
あざみ「うわまた来た」
薔薇美「さてと(占いのセッティング)」
あざみ「あのあのすいません」
薔薇美「いらっしゃい。生年月日とお名前は?」
あざみ「いや別に占いをして欲しいわけじゃなくて。他でやってもらえますか?」
薔薇美「え? どうして?」
あざみ「よく分からない商売されると困るんですよ」
薔薇美「でも他の公園じゃ取り締まりが厳しくて出来ないから」
のぶを「そうそう。ここしかないんだよ。駅前も路地裏も厳しくて、ここだけ穴場なんだ」
あざみ「その穴を普通の人達で埋めて良い感じにしたいの! あなた達みたいな人だけ来ても逆に評価が下がるでしょ? 公園の修繕費が下りないの、誰のせいだと思ってるんですか」
薔薇美「修繕費? そう言われてみれば、ここの遊具はどれもボロボロだね」
あざみ「でしょ。だいたいココにいてお客さんなんて来た?」
のぶを「…いや、ほとんど」
薔薇美「ずっと前はいたけど」
あざみ「今はいない。だからこの公園も閉鎖するかもしれないの」
のぶを・薔薇美「えーっ!」
あざみ「ね? だから、あなた達のような人が、」
のぶを「じゃあ頑張らないと!」
あざみ「へ?」
薔薇美「私達が頑張って、いっぱい人を集められるような公園にする!」
あざみ「いや、そうじゃなくて」
中村「(登場)はぁ~…」
のぶを「ほら来た! 良い子達を紹介して、その評判を広げてもらうよ。そうすれば公園には人がいっぱい!(中村に駆け寄る)」
あざみ「いやちょっと!」
のぶを「いらっしゃーい。良い子いますよ」
あざみ「キャバクラじゃないんだから」
中村「良い子?」
(のぶを、色紙を選んでる)
あざみ「…ちょっと待って。あのスーツ、いかにもお堅い仕事って感じ。もしかして仕分け人じゃ」
薔薇美「仕分け人?」
のぶを「この子なんてどうでしょう?『愉快、爽快、帝王切開。のぶを』(色紙)」
あざみ「やめて本当に」
中村「すいません私ちょっと疲れてまして、そういうの読まれてもよく…」
のぶを「なら、今の気分にピッタリの子がいます。『パンの耳って、何で耳って言うんだろう? 口や鼻じゃ、ダメなのかなあ? のぶを』(色紙)」
あざみ「いやその人がどんな気分に見えてそれ出したの。あのすいません、ご迷惑ですよね」
中村「いえ、何だか和みました」
あざみ「えっ」
のぶを「ありがとうございます! お値段はいくらでもけっこうです!」
中村「買いませんけどね」
のぶを「えぇ!」
薔薇美「じゃあ今度は私ね。占い師の薔薇美といいます。占ってあげましょう」
あざみ「もうやめてよ~」
薔薇美「予言的中の占い師がいる公園なんて知られたら、きっと大盛り上がりでしょ」
あざみ「ダメダメ! 雄助やカスミがインチキだって言ってたし」
薔薇美「失礼ね~。そんな事言われたら私本気出すよ?」
中村「私は興味ありますね」
薔薇美「あらどうもぉ」
中村「じゃあ、日本の将来について占ってもらえますか?」
薇美「はい、結構ですよ。ん~(目を閉じて念を込める)」
中村「私、けっこう占い好きなんですよ」
あざみ「あ、そうなんですか…(のぶをに)じゃあチャンスかもね」
のぶを「チャンス?」
あざみ「薔薇美さん、良い予言かまして!」
のぶを「う~ん何だかうさんくさいなぁ」
あざみ「あんたもだよ」
のぶを「いやだってさ、去年もノストラダムスの予言はずれたじゃん。1999年、7の月がどーのこーのってやつ。だから占いなんて、」
薔薇美「見えた! 近い将来、48人のアイドルグループが出来る!」
のぶを「プッ、48人て! 多過ぎだよ。絶対売れないでしょ」
中村「さすがにそれは…」
あざみ「あちゃー。もっとこうピンと来るような予言ないかな」
薔薇美「見えた! 近い将来、彦麻呂がお口の中でIT革命を起こす!」
のぶを「どういう事?」
中村「SF映画ですか?」
あざみ「あ~もう頑張ってよ薔薇美さぁん」
薔薇美「(苦しそうに)う~ん…ドラえもんの声がっ、わさびになるっ」
のぶを「意味分かんないよ」
中村「辛そうだなぁ」
あざみ「もっと、日本全体を象徴するような事で何か起きないの?」
薔薇美「う~っ。日本人が次々にこの言葉を口にする…じぇじぇじぇ!」
のぶを「何だそれっ」
中村「日本は絶滅するんでしょうか…」
あざみ「やっぱり当てになんなかった」
薔薇美「待って待って! ハンターハンターの作者がめっちゃ休む!」
のぶを「すでにそうなってるよ」
薔薇美「はぁ…」
中村「というより、先の事を占っても、まだ起きてないから当たってるか分からないんですよね」
あざみ「あーそっか」
中村「ごめんなさい。今度は身近な事を占ってもらって良いですか? ちょっと困った事がありまして」
薔薇美「もう厳しいわ。だいぶ力使ったから」
中村「あぁ、そうですか。無理を言ってすみませんでした」
あざみ「やばい、このままだと評価が…」
のぶを「身近な事じゃ適当にホラ吹けないもんね」
薔薇美「見えた。あんた性格悪い」
のぶを「なっ、何だよそれ! 占いでも何でもないよ!」
【5】起死回生のチャンス
あざみ「あの~、仕分け人さん」
中村「…えっ私の事ですか? 何ですか仕分け人って」
あざみ「あー違う違う! 失礼しました今のは忘れて下さい」
中村「はぁ」
あざみ「そのですね、今、ちょっと困った事があるって言いましたよね?」
中村「はい」
あざみ「もし良かったら聞かせて頂けませんか? ほら、力になれるかもしれないし!」
のぶを「君、僕への態度と全然違うね」
中村「ありがとうございます。実は私、大道寺建設という会社で社長の秘書をやってる、中村という者です(名刺を出す)」
あざみ「(名刺を見て)え、社長秘書?」
中村「以後、お見知り置きを」
あざみ「仕分け人じゃなかったんだ…」
中村「仕分け人?」
あざみ「いえ何でも! 続けて下さい」
中村「はい。それで、この度うちの社長が行方不明になってしまって」
薔薇美「あらら」
中村「前にも何回かあったんです。仕事で忙しくなると、急に逃げ出してどこかの公園に隠れ、ホームレスのような生活をし出すんです」
あざみ「ホームレス?」
中村「はい。だから今会社周辺の町で、まだ住んでない公園を回ってるんですが」
のぶを「そんなんでよく社長が勤まるなぁ」
中村「まあ、自由奔放で乱暴な方ですが、やる気を出せばものすごい手腕を発揮するんです。私も尊敬し、忠誠を誓っております」
薔薇美「昭和の大物って感じだねぇ」
中村「ホームレス生活をしてるから、見た目も変わってるかもしれなくて、なかなか探すのに苦労してるんです」
あざみ「あのすいません、社長さんはいつ頃いなくなったんですか?」
中村「ちょうど3週間前です」
あざみ「3週間前…あのホームレスと同じだ!」
中村「え、心当たりが?」
あざみ「ええ。この公園に、同じ時期に住み着いたホームレスがいて!」
薔薇美「あ~何かいたね!」
のぶを「僕も見たよ」
中村「あの、その方は、左のほっぺたにホクロあります?」
あざみ「…ありました! さっきまでこの公園に!」
中村「ええ! 今はどちらに?」
あざみ「それが、どっか行っちゃいまして。でもまだ遠くには行ってないはず。あっちに行きました!」
中村「あ、ありがとうございますっ!(退場)」
あざみ「わあ~。あのホームレスが社長だったとはね。あんな乱暴に追い出して悪かったかな」
薔薇美「追い出しちゃったの? もったいない」
あざみ「え、何でもったいないの?」
のぶを「もったいないよ。だって、この公園が閉鎖する原因の一つって、修繕費が下りなかったからでしょ? それでボロボロになって人も来なくなって」
あざみ「そうだけど」
のぶを「もしその社長にさ、いくらでも公園にいて良いからって言えば、修繕費を寄付してもらえるかもしれなかったんだよ?」
あざみ「え?」
薔薇美「そうそう。自分が住んでる公園が無くなるのは嫌だろうし。そもそも会社ほっぽり出しちゃうような人でしょ? 財産なんていくらでも投げ出しちゃうと思う」
あざみ「その手があったか…社長を連れ戻して住ませれば、修繕費ゲット!」
のぶを「そしたら公園も元通り。人も集まって閉鎖もされなくなるよきっと!」
あざみ「そっかぁ。仕分け人の評価なんかより、実際にお金の目処が立てば役所も考え直してくれるかもね。よ~しプラン変更! 早速ホームレスを取り戻さないと!」
(雄助・カスミ、登場。2人とも普段着に着替えてる)
雄助「ただいま~」
あざみ「お~お帰り!」
雄助「あ、インチキ占い師だ」
薔薇美「誰がインチキだって!」
カスミ「痛い路上詩人もいる」
のぶを「痛いだって?」
あざみ「無事に逃げ切れたみたいで良かったね」
雄助「楽勝だよ!」
カスミ「やっぱ雄助足速いわ」
雄助「それでさ、戻って来る途中にこれ(グラサン)拾ったんだけど、もしかしてあいつのかな? さっきのチンピラ」
あざみ「あ~自慢のグラサン。たぶんそうじゃない?」
カスミ「高級品とか言ってたよね」
あざみ「ちょうど今度のお芝居でグラサン使うから、黙って借りちゃえば?」
雄助「そうしちゃおっかな」
のぶを「え、君達お芝居やってんの?」
あざみ「そうだけど…」
のぶを「な~んだ僕と変わんないじゃん! 自称表現者」
あざみ「あんたよりマシだわ!」
のぶを「そうかなあ? どうせ仲間内だけで楽しんでる集団でしょ? 友達や家族しか見に来ないから、たいした批判もされず」
カスミ「いや厳しい批判とかもあるし!」
あざみ「ピンク手帳の女ね。いちいち何かメモ書いてて」
雄助「きっとさ、普段から色んなものにケチつけてんだろうね。レストラン行った時も味の批判とか」
あざみ「してそ~」
薔薇美「ねえそんな話してる場合なの?」
カスミ「あっそうだった。あざみ、この後どうすればいいの?」
あざみ「えっとね、さっきのホームレスを連れ戻す!」
雄助・カスミ「ええ!?」
カスミ「せっかく追い出したのに?」
あざみ「事情が変わったの。実は彼、大会社の社長だった」
雄助・カスミ「そうなの?」
あざみ「ここに住まわせてもてなせば、お金たくさんくれるかもしれないの」
カスミ「わぁ。お小遣い?」
あざみ「そんなとこ。余りが出たら分けてあげる」
カスミ「マジで? やった!」
のぶを「ねえ、僕も協力するから、またここで詩の販売っ、あ~この子達のお届けをしても良いかな?」
あざみ「まあ仕方ない。社長からお金が下りたらね」
薔薇美「私も力を貸す。ちょうど力が回復してきたからね。ん~(念じる)」
雄助「俺も頑張るよ!」
あざみ「サンキュ。じゃあ探しに行こう。見つけたらみんなで手厚くもてなそう」
全員「うん!」※薔薇美以外
薔薇美「見えた! その人物はあっち側にいる!」
あざみ「じゃあこっちだ。みんな行こう!」
(あざみ達、薔薇美が指した方向と逆側に退場)
薔薇美「あっちょっと! 何で信じないのまったくぅ(自分が指した側に退場)」
原田「(登場)どこ行きやがったあ!」
エリカ「(登場)ねえケンちゃん、預かってたグラサン無くしちゃった…」
原田「ええ?」
エリカ「どっかで落としたみたい。ごめんなさい…」
原田「何してんだよぉ」
エリカ「誰か拾ったかなぁ。高級品だから、取られちゃったかも!」
原田「そんな事するような奴がいたらぶっ飛ばしてやるよ! エリカがくれた大事な物を横取りされてたまるか。ほら行くぞ(退場)」
エリカ「あぁ待って(退場)」
【6】大出世!
(あざみ達、探しに行った側から登場)
あざみ「いなかったぁ」
雄助「別の方を探す?」
(薔薇美・山本、探しに行った側から登場)
薔薇美「見つけたよ」
全員「おお!」
薔薇美「だから言ったでしょう」
のぶを「きっとマグレだよ」
山本「本当だ。さっきのチンピラはもういない…」
雄助「はい。俺が巻いたんで」
山本「君は…?」
あざみ「んも~! どこに行ってらしたんですかあ?」
山本「え?」
あざみ「まあまあまあ。どうぞベンチにお座りになって下さい」
山本「いや、良いの?」
あざみ「どうぞどうぞ。この公園の大切な利用者様でございますから」
山本「まあ確かに利用はしてるけど、普通は疎まれないか?」
あざみ「とんでもありません。私この公園の管理人代理のあざみです。よろしく」
山本「はあ」
雄助「あの~先ほどは大変失礼しましたあ」
山本「あっ、やっぱりそうだよな? よく見なきゃ分かんなかったけど」
カスミ「どうもすみませんでした」
山本「さっきとずい分な変わりようだな…格好も雰囲気も」
カスミ「ちょっとね、先ほどはまだ我々も思春期だったもので。触るもの皆傷つけていました」
山本「思春期って。来るの遅いし終わるの早いな…」
あざみ「そうだ! 肩おもみしますぅ(山本の肩をもむ)」
山本「おお。そんな事まで? 何だか悪いな」
カスミ「雄助、あれも差し上げちゃいなよ。さっき拾った」
雄助「え? あ~そうだね。もし良かったらこちらどうぞ。先ほどのお詫びに、高級サングラスです」
山本「お~いいのか? 昼間は日差しが強いから助かるよ(おでこにかける)」
あざみ「お似合い~」
のぶを「僕も良い物を差し上げます。『黒歴史っていうほど、君の人生は深くない。のぶを』(色紙)」
あざみ「ちょっと何でそれチョイスしたの?」
カスミ「深くないとか人生の先輩に失礼でしょ」
山本「いいよ。どうせそうだから…」
あざみ「違います違います! そんな事ありませんって~」
薔薇美「では今度は私が占って差し上げます。ん~」
あざみ「薔薇美さん今度は頼むよ?」
薔薇美「見えた! あなたに会いたがってる人が、ここに現れる!」
山本「え?」
あざみ「嘘! 秘書の中村さん? 見つかったら連れて行かれちゃうよ」
カスミ「大丈夫当たんないから」
薔薇美「うるさいねえ」
あざみ「(山本の肩をもみながら)もう嘘でも良いから良い事いっぱい言って!」
山本「いや真後ろでそれ言っちゃうって」
薔薇美「(やる気なく)あなたは今後カッコ良くなってモテモテになるでしょう」
山本「それ嘘って悲しいよ」
薔薇美「ヒザに水もたまらないし前歯も取れないでしょう」
山本「俺ヒザに水たまって前歯取れちゃうの!?」
あざみ「あ~気にしないで下さい♪ 誰か盛り上げて!」
雄助「俺いきます! 役者として、人を楽しませるのが仕事」
山本「役者だったのか」
雄助「はいじゃあモノマネしまーす。エスカレーターの手すりを拭いてる人(両手でぞうきんを手すりに当てて体重かけてる姿)」
あざみ「うわ地味…」
山本「だっはっはっはっは!(以降笑い続ける)」
カスミ「ウケた!」
あざみ「ツボだったみたい。もっともっと!」
雄助「え~無理して心霊写真にしようとする人(すまし顔で片手だけ遠くに離してピースしてる姿)」
山本「だっはっはっはっは!」
雄助「え~相手にタバコの煙がいかないようにする人(タバコを吸って吐く時に口だけひょっとこのように曲げて斜め上に煙を出す姿)」
山本「だっはっはっはっは!」
雄助「え~グリコ(グリコのポーズ)」
(山本、真顔)
カスミ「あぁ今のダメだったみたい」
雄助「やっちゃった…」
カスミ「じゃあ、同じく役者の私が!」
山本「君もだったんだ」
カスミ「えっと~(山本の前に立ち、客席に背を向ける)面白い顔!」
山本「だーはっはっはっは!」
雄助「すごい…」
あざみ「目と鼻の位置がほぼ逆…」
のぶを「ベロが時速50キロで回転している…」
薔薇美「むしろホラーだ」
カスミ「(前を向いて顔を整える)ふぅー」
山本「いや~最高だったよ」
あざみ「カスミグッジョブ!」
カスミ「イェーィ」
雄助「ありがとう助かったよ!」
カスミ「いや、やめてよ。あんな変な顔はすぐに忘れて」
雄助「え?」
カスミ「あ、何でもない」
のぶを「(カスミと雄助を見て)…ん?」
【7】大降格・・・
あざみ「どうですぅ? この公園の居心地はぁ」
山本「なかなか良いよ」
あざみ「じゃあもし~、この公園が閉鎖されたら嫌ですよね~?」
山本「え、閉鎖するのか?」
あざみ「このままいくとそうなんですけどぉ、お金があればぁ、色々と直せてぇ、存続できるかもしれないんですよねぇー」
(全員でアイコンタクトをし合う)
山本「せっかく会えると思ったけど…無理か」
あざみ「お金があればな~。どっかに余ってないかな~。ポンと寄付してくれる人がいると良いな~。そんな人が~」
大道寺「(登場)あ、いたいた!」
山本「おう、さっきの」
大道寺「おいどうなってんだよまったく!」
山本「え?」
あざみ「何このおじさん」
山本「俺と同じホームレスだ」
あざみ「あぁ。普通のホームレスか。珍しいねスーツなんか着て」
大道寺「あんたが教えてくれた公園、最悪だったぞ!」
山本「何でだよ」
大道寺「角には物置が建ってるし、凶暴な猫に引っ掻かれるしよ。あと1SBJって言ってたけど遊具が増えてて、たくさん人が来てうるさくてしょうがいない」
あざみ「あ~1丁目の公園かな」
山本「まあ、俺も正確に覚えてたわけじゃないし、時間が経って変わったんじゃないか?」
大道寺「白々しい。お前やっぱりこの場所取られたくないから、適当な事言って俺を追い返したんだろ!」
山本「そんな事ないよ」
大道寺「出てけ! ここは今日から俺が住む!」
山本「えっ!」
あざみ「いやちょっと! いきなり来て何なんですか?」
雄助「そうですよ。この方が先に住まわれてたんですよ?」
大道寺「何だお前ら?」
あざみ「この公園の管理人代理です。悪いけど、あなたみたいなホームレスには即刻出て行ってもらいたい!」
大道寺「こいつだってホームレスだろ」
雄助「この人は特別です」
大道寺「何でだよ」
薔薇美「見えた! この人に災いが降ってくる!」
雄助「それは当たってそうだな」
大道寺「適当な事言ってんじゃねえよ!」
カスミ「もういいからあっち行ってよ!」
大道寺「この野郎。俺を誰だって思ってんだよ!」
あざみ「ホームレスじゃん」
大道寺「今はそうしてるけど本当は、」
あざみ「さあ~引き続き肩をおもみしますぅ」
山本「ありがとう」
大道寺「おいおい。そいつのもむんだったら俺のもんだ方が得だぞ?」
カスミ「うるさいねえ! 梅干しでも貼っときなっ」
大道寺「なっ…ばばあじゃねえかそれ!」
のぶを「(山本に)さあさあこの子どうです?『四角形は止まるけど、丸は転がり進んでく。のぶを』」
山本「ほう。人もおんなじだよな。とんがってないで、丸くなった方が何事も見通しが開けてくる。なかなか良いじゃないか」
のぶを「お値段はいくらでもけっこうです!」
大道寺「おい俺に売り込んだ方が得するぞ」
のぶを「(力強く乱暴な字の色紙を見せる)『三角形の角にぶち刺され!! のぶを』」
大道寺「態度変わり過ぎだろ!」
あざみ「…かーえーれ。かーえーれ」
大道寺「はあ?」
全員「かーえーれっ。かーえーれっ」※山本以外
大道寺「何だよそれ! ふざけんな!」
全員「かーえーれっ! かーえーれっ!」※山本以外
山本「やめるんだみんな!」
全員「…」
山本「彼も我々と同じ人間だ。差別は良くない」
あざみ「先生…」
大道寺「いつから先生になったんだよ」
山本「君もだいぶ傷ついただろう。可哀想に」
大道寺「ああん?」
カスミ「自分を追い出そうとした人間に対して、いたわりの言葉を!」
山本「ウチのもの達が迷惑をかけた」
雄助「そんなっ、先生が謝らんといて下さい!」
山本「良いんだ下がってろ」
雄助「はい…」
大道寺「何だこいつら」
山本「そうだ。これをあげるから許しておくれ(グラサン)」
雄助「それはっ、」
山本「静かに。幸せの種はみんなで分け合うものだ」
のぶを「教祖様…」
大道寺「これ、けっこう良いやつじゃないか」
山本「さあ、かけてごらん? 公園に住んでいると、昼間は日差しもまぶしかろうて」
大道寺「何でお前がこんな物…」
薔薇美「ほらっ、せっかく下すったんだ。早くかけたらどうだい!」
大道寺「分かったよ(かける)」
山本「おお。よく似合ってる」
大道寺「まあ、俺もこういうの好きだからな。もらっといてやるよ」
山本「さあ、それで他の公園に行っても安心だな」
大道寺「は?」
あざみ「では、お引き取り下さい」
大道寺「いやそれとこれとは別だよ」
カスミ「愚か者!」
雄助「これ以上何かを恵んでもらうつもりか!」
大道寺「もう何なんだよその茶番は! いい加減にしろ!」
山本「落ち着け浮浪者」
大道寺「お前に言われたくない! だいたいホームレスのくせに、調子乗ってんじゃねえよ!(山本を突き飛ばす)」
全員「ああっ!(山本を支える)」
あざみ「何すんのあんた!」
大道寺「それはこっちのセリフだ!」
(原田・エリカ、登場。大道寺達を見てる)
大道寺「この俺に向かって無礼な態度を取りやがって!」
エリカ「ねえあれケンちゃんのグラサンじゃない?」
原田「ん?」
大道寺「今に見てろ!」
原田「本当だ!」
大道寺「痛い目に遭わせてやるからな!」
原田「コラてめえ!」
大道寺「あ?」
あざみ「さっきのチンピラ!」
原田「俺のグラサン奪いやがってタダじゃおかねえぞっ」
大道寺「何言ってんだ。これは俺がもらったんだ」
原田「てめえ…こうなったら相撲で決着つけてやる!」
大道寺「ええ?」
カスミ「また?」
原田「はっけよーい、のこったあ!(大道寺に突進)」
大道寺「やめろお!(逃げて退場)」
(原田、追いかけて退場)
エリカ「あ、待ってよケンちゃあん!(退場)」
あざみ「あのチンピラさっきもあーやって出てったな」
薔薇美「騒がしいカップルだねえ…」
のぶを「まあよく分かんないけど良かったじゃん! 余計なおっさんもいなくなったし」
雄助「あいつ、俺達の事は分かってなかったみたいだね」
カスミ「何であんな相撲にこだわるんだろ」
山本「そうか。彼は君達を追いかけてたもんな」
雄助「きっとこの公園にもまた探しに来たんでしょうね」
山本「グラサンあげといて良かった」
あざみ「そっか。あのおっさんにグラサンあげたおかげで、チンピラが目をつけて追い払えたんだ…さすがです!」
山本「いやいやいや。たまたまだよ」
カスミ「そうだあざみ!」
あざみ「うん?」
カスミ「もう稽古始まる時間だよ!」
あざみ「本当に!?」
雄助「どうする? 公園の事もあるし、言えば休ませてもらえるかも」
カスミ「今日はあざみの出るシーンの稽古そんなに無かったから、大丈夫なんじゃない? あっちに公衆電話あるからかける?」
あざみ「いやでも、稽古場には行こうと思う。それで事情を話して、早めに上がらせてもらえたら…」
カスミ「そっか。じゃあ早く行こう!」
あざみ「うん。あの、出来るだけ早く戻ってきますんで、どうぞごゆっくりしてて下さい」
山本「ああ」
あざみ「2人とも、くれぐれも留守の間よろしくね」
のぶを「任せてよ」
薔薇美「この公園の為だもん」
あざみ「じゃあまた後で!」
(あざみ・雄助・カスミ、退場)
【8】ピンク手帳の女
のぶを「最初は追い出そうとしてた僕らに、今では留守番を頼むなんて」
薔薇美「永久に仕事場を確保できそうかもね」
宮原「(登場・ピンクの手帳にメモしてる)利用者、3名。他の公園よりは少なめ。だが、この公園の悪い評判に対しては多め」
のぶを「ん? 何だあの人」
宮原「(メモ)利用者の内訳。ホームレス1人、フリーター1人」
のぶを「はあ?」
宮原「意味不明1人」
薔薇美「何あれ! いま私の事言ってた?」
のぶを「フリーターって一口にまとめられるのは嫌だな」
宮原「(メモ)遊具の状態、劣悪。ケガの恐れ多し」
のぶを「何か文句みたいの書いてる?」
宮原「(山本達に)あのーすみません」
のぶを「…はい」
宮原「この公園をよく利用されてます?」
のぶを「まあ」
薔薇美「ちょこちょこ」
山本「俺はずっと」
宮原「(メモ)利用者、愛想なし」
のぶを「何ですかそれっ」
薔薇美「あんただって愛想ないでしょ!」
宮原「(メモ)怒りの沸点高し。親子連れは警戒すべし」
のぶを「いやいやあなたが失礼な事を言うからですよ?」
宮原「この公園の居心地はいかがですか?」
のぶを「人の話聞いてる?」
山本「まあまあ。居心地は最高ですよ。だってこの人達がとても良くしてくれるからね」
薔薇美「とんでもない」
宮原「(メモ)浮浪者を甘やかして増加を促す行為がなされている。日本経済に深刻な影響を及ぼしかねない」
薔薇美「いやこの人はただの浮浪者じゃないんだから!」
山本「良いって良いって。そう言われても仕方ない」
薔薇美「だってこの人さっきから悪口ばっかり言ってきて」
山本「悪口は連鎖する。どこかで止めれば、もう回ってこない」
のぶを「教祖様…」
宮原「(メモ)新興宗教を立ち上げてる模様」
のぶを「いや違いますよ! これはその、一種のノリみたいなもので!」
宮原「ノリですか。罪の意識が生まれにくい。それが一番怖い」
のぶを「もう何なんですかあなた。さっきから文句言ったりメモしたり。だいたい僕フリーターじゃないですからね」
宮原「では、何のご職業を?」
のぶを「人に物を聞く時はまず自分から言ったらどうです? そうやって上から目線の態度ばかり取って、さぞご立派な職業なんでしょうね~」
宮原「国家公務員です」
のぶを「えぇっ」
宮原「あなたは?」
のぶを「いや、まあ、その…物書きです」
(薔薇美、少し驚いた顔でのぶをを見て)
宮原「物書き。曖昧な表現ですね。ちゃんと稼いでる人なら自信を持って、小説家やルポライターなどと表現しますが」
山本「言われてみれば…」
宮原「小劇団の作家でもそういう人がいました。つまらない作品で自己満足に浸っているが、結局はバイトしなければ暮らせないフリーター。それに引け目を感じ、物書きと言ってお茶を濁す」
薔薇美「またずい分な言い様だけど」
宮原「まあ私は舞台というものを見た事がないので、今のは人から聞いた話ですけど」
のぶを「小説家! 小説家なんですよ僕。それでちゃんと稼いでますから」
薔薇美「(小声で)ちょっとぉ。見栄張んのやめなよ」
宮原「なるほど。差し支えなければ、作品名など教えて頂けます?」
のぶを「いいですよ? えっとぉ…ノルウェイの森」
薔薇美「バカ…」
宮原「あなた村上春樹さんだったんですか」
のぶを「そうです」
宮原「今おいくつですか?」
のぶを「26ですけど」
宮原「では小学生の時にあの作品を書いたんですか。すごいですね~」
のぶを「4月生まれだからね。周りと比べてちょっと成長早かったんだ」
薔薇美「もうやめなってバレバレなんだから」
宮原「そちらの方は?」
薔薇美「えっ、私? 私はその…気象予報士です」
のぶを「(小声で)そっちだって見栄張ってんじゃん!」
山本「もうそんな張り合う事ないだろう」
宮原「まあそちらの方は聞かなくても無職だと分かりますが」
のぶを「おっとっとぉ。そうじゃないんだな~。今はこんな格好してるけど、普段はね、大企業の社長様なんだよ」
山本「はい?」
薔薇美「そう。だから見下すのは禁物」
山本「待ってくれ。俺は社長なんかじゃないし、前からホームレス生活なんだけど」
のぶを・薔薇美「え?」
山本「見れば分かるだろ?」
のぶを「いやいやご冗談を。社長でしょ? あの~確か、大道寺建設の」
山本「大道寺建設だって? 縁もゆかりもないよ」
薔薇美「ねえ大丈夫。私達別に、あなたを見つけたって会社の人に連絡したりしないから。その代わり、この公園の修繕費をね」
のぶを「そうそう。ついでに僕らの活動資金なんかも…」
山本「何を言ってるんだ?」
薔薇美「とぼけないでよ大道寺社長」
山本「俺、山本だけど」
のぶを・薔薇美「はい?」
山本「…そうかあ。誰かと勘違いしてたのか! だからこんなに手厚くもてなされて」
のぶを「えっ、本当に違うの?」
山本「うん」
薔薇美「3週間前まで社長やってたんじゃないの?」
山本「ここに来たのが3週間前ってだけで、もっと前からホームレスやってたよ」
薔薇美「何それ!」
のぶを「マジかよ~」
宮原「(メモ)利用者の知能指数は低め」
のぶを「うるさいよ!」
宮原「私は他にもチェックする箇所があるんで、失礼します(公園の中を見て回る)」
のぶを「何がチェックだよ」
源三郎「(登場・杖をついてる)痛てててて…」
薔薇美「あら、源三郎さん」
源三郎「あ、薔薇美さん」
薔薇美「腰どうしたの?」
源三郎「ちょっとね。本当は動いちゃいけないんだけど」
薔薇美「あららら。じゃあベンチ座ってなよ。(山本に)ほらどきなさいアンタ!」
山本「何だよぉ。急に冷たくなって…(段ボールハウスに退場)」
源三郎「(座って)いやあ、どうしてもこの公園が気になって」
薔薇美「ああ。代理の人から教えてもらったよ」
のぶを「え? という事は、この人はこの公園の管理人さん?」
薔薇美「そう。いつもね、私がここで商売してても、優しく見守ってくれて」
源三郎「あんたの事も知ってるぞ」
のぶを「あっ、お世話になってます」
源三郎「本当はな、公園で商売するの良くないらしいけど、俺の孫も夢に向かって頑張ってるから、同じような若者を見ると応援したくなって」
のぶを「ありがとうございます…」
薔薇美「まあ、私はもう若くないけど」
源三郎「ところで、俺の代理はどこ行った?」
薔薇美「あの女の子?」
源三郎「ああ。俺の孫であざみって言うんだけど」
薔薇美「お孫さんだったの?」
のぶを「へぇ~! あの子のおじいちゃん…」
薔薇美「あの子なら、今の時間だけ稽古場に行ってるよ。そのうち戻ってくると思うけど。一応私達がお留守番で」
源三郎「そうか。すまんね。何か変わりは無かったか?」
薔薇美「態度の大きいホームレスが来たんだけど、ちゃんと追い出した」
源三郎「それは助かる。あのホームレスはまだいるみたいだが…」
のぶを「態度が大きいと言えばあの人! さっきから色々な文句をメモして」
源三郎「文句をメモ…?」
のぶを「ただのヒマ人だよきっと」
源三郎「あっ! ピンクの手帳…」
薔薇美「え、どうかしたの?」
のぶを「そ~だ思い出した! ほら、あざみちゃん達が言ってたじゃん。お芝居の批判をしてくる人。ピンク手帳の女って! あの人だったりして」
源三郎「あいつが…いや、ただピンクの手帳ってだけで」
薔薇美「そう言えば言ってたね。さっきも何か、小劇団はつまらないのに自己満足してどーのこーのって」
源三郎「何だと! じゃあやっぱりあいつなのか!(立ち上がる)」
宮原「おっと。(メモ)老人1人追加」
源三郎「何が老人だ! この~(宮原に向かって行く)」
宮原「な、何ですかあなた!」
薔薇美「あれ、でもあの人舞台は見た事ないって言ってなかった?」
のぶを「そうだっけ?」
源三郎「俺はこの公園の管理人だ」
宮原「ほーあなたがここの」
源三郎「よくも俺の可愛い孫を酷評しやがったな!」
宮原「孫?」
のぶを「(源三郎に寄って来て)おじいちゃん落ち着いて」
宮原「(源三郎とのぶをを見比べ)あ~はいはい。そりゃそうですよ。厳しい事言うようですが、お孫さんの教育、もう少しちゃんとした方がよろしいかと」
源三郎「黙れこの野郎! ぶったたいてやる!(杖を振り上げる)」
宮原「ええ!」
源三郎「覚悟ぉ!」
宮原「やっ、やめてえ!(逃げて退場)」
(源三郎、追いかけて退場)
薔薇美「源三郎さんっ」
◎効果音「打撃」×3
のぶを「うわボコボコ…」
源三郎「(登場)うおお~!」
※宮原とお同じ服を着せて顔写真が貼ってある空気人形を持って来る。
(源三郎、宮原人形の足を持って頭部を地面にたたきつける)
宮原「(影マイク)うわ! ぎゃっ! うげっ!」
源三郎「(宮原人形をジャイアントスイングのように回す)ふんっ、ふんっ、ふんっ、おりゃあーっ!(袖に投げる)」
宮原「(影マイク・投げられると同時に)ぎゃあー!!」
源三郎「はっはっは。あざみの仇だあ!」
薔薇美「ちょっとそこまでして大丈夫なの!?」
源三郎「良いんだよ!」
のぶを「かっこ良かったよおじいちゃん! 僕スカッとした」
源三郎「そうだろう。あ、痛てててて!」
薔薇美「ほら無理するからぁ」
源三郎「大丈夫大丈夫…」
【9】末路
あざみ「(登場)あれ、おじいちゃん!」
源三郎「おぅあざみ」
あざみ「寝てなきゃダメじゃん」
源三郎「どうしても気になってな」
薔薇美「劇団の稽古は大丈夫なの?」
あざみ「うん。事情を話したら分かってもらえて」
のぶを「あの2人は?」
あざみ「雄助とカスミ? 自分達のシーンが終わったらまた来てくれるって」
のぶを「慌ただしいなぁ」
あざみ「あれ、社長は?」
薔薇美「あ~それがね! あのホームレス、本当にただのホームレスだったの!」
あざみ「え?」
源三郎「何の話だ?」
あざみ「嘘でしょ~。せっかく上手くいくと思ってたのにぃ。じゃあアレは? 仕分け人!」
のぶを「仕分け人?」
あざみ「あそっか2人には話してなかったか。あのね、」
大道寺「(登場・ボロボロ)コラあ!」
全員「え?」
あざみ「もう一人のホームレス!」
薔薇美「何でそんなにボロボロなの?」
大道寺「お前らがグラサンなんか渡すからこうなったんだ!」
のぶを「あ、あのチンピラに相撲でやられたのか!」
大道寺「絶対に許さないぞ!」
薔薇美「でも私は言ったよ。あなたに災いが降って来ると」
あざみ・のぶを・大道寺「…言った?」
薔薇美「言ったでしょうがあ! 何で当たったのに覚えてないの!」
中村「(登場)はぁ~疲れた…」
あざみ「あ、中村さん」
中村「どうも。社長見つかりませんでした(大道寺を見て)って社長!」
全員「え?」
大道寺「中村あ!」
あざみ「嘘…」
中村「探しましたよお!」
大道寺「悪かったなあ! 俺もちょうど、もうこんな事はやめて会社に戻ろうと思ってたとこなんだよ」
中村「それは良かったっ!」
あざみ「(やや呆けて)あれ~? よく見たらあのおじさん、左のほっぺたにホクロあるぞ~?」
薔薇美「私達、とんだ勘違いしちゃってたみたいね」
大道寺「こいつらな、俺にひどい仕打ちをたくさんしやがったんだ」
中村「本当ですか!」
のぶを「これはマズい」
山本「(登場)おいおい、あいつ社長だったのか」
大道寺「あの野郎! 聞いてくれ中村!(中村に色々と説明してる仕草)」
源三郎「一体何がどうなってるんだか…」
北川「(登場)こんにちはー」
あざみ「北川さん」
北川「時間が空いたので様子見に来ました。あれ、何か割りと人いますね」
あざみ「それがけっこう立て込んでて…」
中村「(大道寺から聞き終えて)それはひどい! あなた達なんて事をしてくれたんだ!」
北川「どうしたんですかこの人?」
源三郎「俺もよく分からない。なあそれより仕分け人は、」
宮原「(登場・ボロボロ)コラあ!」
のぶを「あ、さっきの」
あざみ「え、誰あの人?」
源三郎「へ? あざみの舞台を酷評した奴じゃないのか?」
あざみ「ううん。全然違う人」
源三郎・のぶを「ええー!」
薔薇美「やっぱそうじゃ~ん」
宮原「公園の仕分け人になってからいくつもの場所を見て回ったけど、こんなひどい所は初めてです!」
あざみ「え! この人が仕分け人?」
北川「何であんな風に」
源三郎「やべえ…」
宮原「公園も公園ですが、そこにいる人間も最悪です!」
源三郎「いやっ、ごめんなさいちょっとさっきのは人違いでやっちゃって」
宮原「人違いでボコボコにして良いんですか!」
源三郎「良くないっす」
あざみ「何おじいちゃんこの人ボコボコにしたの?」
源三郎「間違えてね」
北川「超絶最悪ですよ源三郎さん!」
源三郎「こっから巻き返そう」
北川「無理だわ!」
宮原「あなた、市役所の人?」
北川「は、はい。都市整備部公園課の北川です」
宮原「そう。私、国から派遣されて公園の仕分けをやってる宮原です。即刻、この公園を閉鎖する手続きを取ります」
あざみ「そんなあ!」
源三郎「申し訳なかった! お詫びに何でもする!」
宮原「謝って済むレベルじゃありません。こんな公園どこもボロボロで、人も最低で、有害でしかありません!」
あざみ「お願いします! もう一度チャンスを!」
のぶを「僕もお願いします! ここが無くなったらどこに行けばいいか!」
薔薇美「私もお願いします!」
山本「俺も、この公園が無くなったら困る!」
大道寺「ほ~そうかそうか。みんなこの公園が好きなんだなあ」
あざみ「そうです! 思い出が詰まった場所なんです!」
大道寺「宮原さんって言ったっけ?」
宮原「はい」
大道寺「ここを無くすとしたら、遊具の撤去とか、色々お金かかるよな。それこそ、修繕費よりも高くつきそうだ」
北川「確かに」
宮原「まあそうですけど」
大道寺「撤去する為の予算なり何なり組んでる間、どうせ数日かかるんだろ? その間に、何かのきっかけでこの公園が大人気になったら?」
宮原「いや、そんな極端な事は…」
あざみ「あ~それ良いかも! ねえ例えばさ、この公園にツチノコが出るって噂を広めたりしたら」
薔薇美「人が集まりそう!」
大道寺「ほら、こいつらが言ってるような事が起きるかもしれないぞ?」
宮原「そんなっ、可能性としてはかなり低いですし」
あざみ「おじさん! ナイスアイディアだよありがとう! 残り数日、頑張ってこの公園を盛り上げてみせる!」
大道寺「そうかそうか希望に胸が高鳴るよなぁ。(だんだん激しく)だから俺はそれを全力で阻止してやるんだよおっ!」
全員「え?」
大道寺「俺は大道寺建設の社長。この公園をつぶす為なら撤去作業もタダでやってやる! お前らにチャンスの時間なんて与えない。明日にでも取り掛かってやるよ!」
宮原「本当ですか?」
中村「社長カッコ良い!」
のぶを「おかしいと思ったんだよっ。何か急にこっち寄りの意見出してきたと思ったらさ!」
薔薇美「上げて下げる、まさにそれ!」
山本「何て奴だ!」
大道寺「はっはっはっはっは! 俺をコケにした罰だ!」
宮原「社長さん、あなたに出会えて良かったです」
大道寺「私もです」
中村「よっ、ナイスコラボ!」
(大道寺と宮原、名刺交換)
源三郎「終わった…」
あざみ「おじいちゃん…」
北川「源三郎さん…」
大道寺「よおし中村、早速今から会社に戻って、公園破壊計画を立てるぞ!(退場)」
中村「ははぁ!(退場)」
宮原「さあ、私も市役所に行ってこの件を報告しなきゃね。北川さん、あなたも来なさい(退場)」
北川「あ、はい…(あざみ達に)あの、こうなってしまって、残念です。(お辞儀して退場)」
源三郎「俺のせいだ」
あざみ「そんな事っ…多少あるけど、でも半分は私のせいだよ。そこのホームレスを社長なんかと間違えたから」
山本「何かすいません」
のぶを「僕もです」
薔薇美「私も」
源三郎「まあ仕方ない。何事にも、始まりがあれば終わりもある。諦めよう」
あざみ「力になれなくて、ごめんなさい」
源三郎「良いんだよ。でも、最後にまた、この公園が笑顔の花で溢れてる光景が見たかったなあ。花畑公園っていう名前の通り…」
◎効果音「グキッ」(高速で8回)
薔薇美「何今の音?」
(源三郎、ゆっくり倒れる)
あざみ「おじいちゃん!(抱きかかえる)」
薔薇美「この人の体内から聞こえたの!?」
源三郎「調子に乗って暴れたからだ。もう一度中央接骨院に」
あざみ「分かった!」
(源三郎、起き上がり、あざみと共に退場)
薔薇美「お大事にね!」
【10】ホームレスの真実
(雄助・カスミ、登場)
雄助「ただいま!」
薔薇美「お帰りなさい」
カスミ「あれ、あざみは?」
のぶを「おじいちゃんを病院に連れて行ったよ」
カスミ「また?」
雄助「(山本に)あっ社長さん、新しいモノマネ考えてきました!」
山本「おお…」
のぶを「あーもうそれさっき終わったから」
雄助「え? 終わった?」
のぶを「あの人社長じゃなかった。その後おじいちゃんが国家公務員をボコボコにして、明日この公園は破壊される」
薔薇美「いやその説明ザックリし過ぎでしょ」
カスミ「国家公務員って、あざみが言ってた仕分け人の事かな。その人を、何かの手違いであざみのおじいちゃんが殴って、閉鎖が決定した…みたいな事?」
薔薇美「察しが良過ぎるねアンタ」
のぶを「合ってる合ってる」
カスミ「そう言えばさ、もう一人のホームレスってけっこう良いスーツ着てたよね。もしかしてあっちが本物の社長だったりして」
薔薇美「察しを通り越している!」
のぶを「その通りだよ。建設会社の社長だったから、すぐにでもここを撤去する段取りを組んでた」
雄助「そんな~。せっかくヤンキーの演技までして頑張ったのに! あのチンピラも本当に怖かった…」
あざみ「(登場)ただいま」
のぶを「あーお帰り。早かったね」
あざみ「すぐそこだったし。あっ雄助とカスミ稽古終わったんだ」
カスミ「うん」
薔薇美「源三郎さんは大丈夫だった?」
あざみ「平気」
カスミ「…あの、聞いたよ? 明日、破壊されるって」
あざみ「うん、そうなっちゃった…。色々と協力してくれたのに、こんな結果になってごめんね。みんな、力を貸してくれて、本当にありがとう」
雄助「あざみちゃん…」
山本「あの~」
のぶを「何か用ですか? ただのホームレスさん」
薔薇美「コラ。勝手に社長だって思い込んだのこっちなんだから」
山本「いや、どうもすみません。俺の存在が、色々と影響してこんな事になったんだと思います。本当に申し訳ありません」
カスミ「あんなにおもてなししたのが馬鹿らしいね」
山本「でもあの時は、久しぶりに人と楽しく触れ合えて、とても嬉しかった」
薔薇美「そう」
山本「雄助君とカスミちゃんだっけ。ヤンキーの演技、途中すごく良かったよ。役者で成功すると良いな。ずっと応援してるよ」
雄助・カスミ「どうも…」
山本「のぶを君も、とても良い詩を書くよな。才能あると思う。俺が金持ってたら、絶対に買ってたよ」
のぶを「え、初めてそんな事言われた…」
山本「あっそうだ。薔薇美さん、俺、あんたの占い全部当たってると思う。いつか証明されるよ」
薔薇美「あんた、分かってくれるのお?」
山本「それからあざみちゃん、君の元気はみんなを笑顔にするよな。最高だった。おじいちゃんとの大切な公園を、汚してすまない…」
あざみ「…もういいですよ。確かに、ホームレスの人に住み着かれちゃったのはマイナスだけど、でも、気に入ってくれたって事ですもんね。この公園を」
山本「ああ。昔から、好きだった」
あざみ「昔から?」
山本「うん」
薔薇美「山本さん、でしたっけ。昔からって言うけど、あなたここに来たの3週間前なんでしょ?」
山本「いや、実はもっと前に来てて。それも、20年以上前」
あざみ「うわ昔。その時にもここに住んでたの?」
山本「いや、その時はまだ家もあったよ。普通のサラリーマンで、妻と娘もいて」
全員「ええ!」
あざみ「それなのに何でホームレスになっちゃったの?」
山本「よくある話だよ。まず会社をクビになって、酒に溺れ、妻と娘に八つ当たり。2人は家を出て行って」
のぶを「あらら」
山本「それから日雇いの仕事をして、だんだん家賃が払えなくなってきた。気づいたら公園で寝泊まりしててさ、もう色んな所を回って、20年近くになる」
薔薇美「そういう人、意外といるよね」
カスミ「それ以来、奥さんと娘さんには会ってないんですか?」
山本「ああ。どこへ行ったのかも知らず、時間が経っていった」
あざみ「寂しいね…」
山本「家族が一緒の頃、ここらへんに暮らしてたんだよ。まだ小さかった娘と、この花畑公園でよく遊んだんだ」
あざみ「へぇ~じゃあ思い出の場所だったから住むように」
のぶを「あれ? でもさ、何で今になってここに来たんですか? そんな長いホームレス生活してて」
雄助「ああ。確かにもっと前からでもね」
山本「いや俺もさ、馴染みの公園なんか、逆に辛くなるから暮らそうと思ってなかったんだよ。ここの前は、知らない町の高架下に暮らしてたし」
のぶを「まあ、知ってる場所だとみじめな気持ちになりそうですもんね。知らない場所の方が開き直って暮らせるか」
山本「でもそんなある日、ホームレス仲間にさ、唯一持ってた家族写真を見せたんだ、妻と娘も写ってる。そしたら、似てる人を最近見たって言うんだよ。ちょうどそのまんま歳を取らせたような親子だったって」
薔薇美「もしかして、その親子を目撃した場所ってのが、この公園?」
山本「そう! そいつが空き缶拾いでこっちまで来た時に見たって。2人は買い物帰りみたいな様子で、おしゃべりしながら花冠を作ってたっていうんだ」
あざみ「花冠って、あそこにもあるよね。山本さんの段ボールハウス」
山本「ああ。(花冠を持って来る)俺が作った。娘が好きでね。だから、その親子は俺の家族に違いないって感じたんだよ。きっと、昔住んでた所に戻って来たんだって。この町を気に入ってたから…」
薔薇美「それで3週間前から」
カスミ「ここにいれば、奥さん達が来ると思って…」
山本「指輪はしてなかったらしいから、ずっと2人で苦労させたんだと思う。本当は会って謝りたいけど、こんな姿じゃ迷惑だろ? 周りの目もあるし。だから、せめて一目だけでも元気な様子を見たいなってさ」
雄助「なるほど」
山本「町でウロウロすると警察の取り締まりとか厄介だから、公園で待ってるしか、方法がなくて」
のぶを「幸いこの公園はまだ規制もゆるいし、セーフだったんですね」
山本「でもそんな都合良くは会えないと思って、半分は諦めてた。今日で公園も閉鎖されるし、これでもう未練は無くなったよ」
雄助「まあ、辛いですけどね…」
あざみ「まだ早くない?」
山本「え?」
あざみ「諦めるのまだ早いよ。会える可能性だってある」
カスミ「ちょっと待って。もしかしてその可能性って、昔の写真を頼りに本人達を探す…とかじゃないよね? 私そこまでは、」
あざみ「いやいや、それだと時間かかって、今日中に会えないじゃん」
カスミ「えっ今日中に会うの?」
あざみ「だって私、会うならこの公園で会ってもらいたいもん。思い出の場所が残ってる間にさ。コレ、理屈じゃなくて感覚の問題ね」
雄助「あざみちゃんのそういうトコ良いよな~」
カスミ「え? ああ…」
のぶを「(カスミと雄助を見て)…お?」
あざみ「そうだ! 奥さんと娘さんが、この公園に来るように仕向ければ良いんじゃない?」
山本「ええ?」
薔薇美「来るように仕向けるってどうやって」
あざみ「…ちょうど役者が揃ってるからねえ。ずばり、ゲリラ公演とかどう!」
のぶを「ゲリラ公演?」
あざみ「昔はよく公園で紙芝居やってたでしょ? それを紙じゃなくて、生でやるの。みんなで」
全員「ええ!」
あざみ「そうすれば人が集まってくるはずだよ! 奥さんと娘さんも!」
カスミ「いやいやお芝居って、台本は?」
雄助「劇団で使ったやつとか?」
あざみ「う~ん。ただ普通にやっても一部の人しか見に来ない。狙いは奥さんと娘さんだから、2人の好みにあった話を即興で作るしかない」
雄助「即興って、今から?」
あざみ「そうそう。さっきも何回かやってたじゃん。アドリブで」
カスミ「でもさっきのはお客さんとかいなかったからさ」
あざみ「できない理由よりできる方法を探すの! 石田純一も言ってたでしょ?」
カスミ「例に挙げる人それ?」
あざみ「どうする山本さん」
山本「…いや、嬉しいけど、いいのか? そこまでしてもらう義理は、」
あざみ「義理が無くちゃやっちゃいけないの? だって楽しそうじゃん!」
雄助「うん、楽しそうではあるよね」
あざみ「ほら!」
カスミ「そう言われちゃうと、やりたくなってきたかも」
あざみ「それでこそ役者!」
のぶを「まあ僕も? 人前に立つ事は嫌いじゃないし♪」
あざみ「あんたもやんの?」
のぶを「やるでしょ流れ的に! ねえ?」
薔薇美「私も? まあ、ヒロインだったら?」
あざみ「じゃあみんな出ちゃおう」
のぶを「あ~でも山本さんどうだろう」
山本「いやいや無理だよ! この格好だし、2人ともショック受ける…」
あざみ「それは仕方ない。じゃあ目標は、奥さんと娘さんをここに引き寄せて、元気な姿を山本さんに見せる!」
山本「本当にやってくれるのか…?」
あざみ「そう言ってるでしょ。じゃあ内容を決めよう。奥さんと娘さんが好きな話ってどんなのか覚えてる?」
山本「え? ああ。確か、妻は海外ドラマが好きだったな。アメリカの」
あざみ「なるほどね。娘さんは?」
山本「まだ小さかったからな。昔話の桃太郎とかを読み聞かせると喜んでたけど」
のぶを「桃太郎か。ちょっとベタ過ぎるね」
あざみ「まあ、27周回ってありかもね」
のぶを「えっ1周回ってありとかじゃなくて27周!?」
あざみ「じゃあ、2人の好みを合わせて、桃太郎・アメリカ版なんてどう?」
雄助「賛成!」
カスミ「公園でやる即興芝居だし、そのくらい分かりやすい方が良いね」
あざみ「じゃあ配役を決めよう。必要なのは、おじいさん、おばあさん、桃太郎、犬、猿、キジ、鬼…7人だ!」
のぶを「山本さんは出ないから、あと2人必要じゃん」
薔薇美「どうする…?」
(原田・エリカ、登場)
原田「話は聞かせてもらったぜえ」
雄助・カスミ・山本「うわっ…」
薔薇美「さっきのチンピラ!」
原田「役者の数が足りないって言うじゃねえか」
あざみ「え?」
エリカ「ちょうどここに2人いるけど?」
全員「…マジで?」
あざみ「何で急にそんな」
原田「妻と娘の元気な姿をひと目見たいなんて、泣かせるじゃねえか」
のぶを「いつからいたんだ?」
原田「けっこう前からだ。なあエリカ」
エリカ「グラサン取り返してぇ、この公園でデートし直そうって戻って来たの。そしたら何かモメててぇ、面白そうだからずっと聞いてた」
原田「だいたいの事情は把握したぜ。(雄助とカスミに)てめえらも、この公園の為にわざとヤンキーのふりして絡んできてたんだな?」
雄助「は、はい…」
原田「おっさん、さっきは突き飛ばして悪かったな。俺も協力するぜ」
山本「あ、ああ…」
原田「さあやろうぜ!」
カスミ「…どうする?」
あざみ「うーん。良いんじゃない? 人が多い方が盛り上がるし。どう?」
のぶを「まあ、人数は揃うけど」
薔薇美「やりましょうよ。やってくれるって言うんだし」
あざみ「うん。そうだよね。じゃあ決まり。よろしく!」
原田「おう!」
雄助・カスミ「(苦笑い)よろしく」
山本「ありがとうございます…」
あざみ「劇団花畑、ここに結成!」
原田「おー!」
【11】劇団花畑
あざみ「さあ! それでは改めて役を決めましょう。もう時間ないから適当に振っちゃうよ。のぶを君がおじいさん、薔薇美さんがおばあさん、雄助が桃太郎、私が犬、カスミが猿、エリカさん、だっけ? キジお願いね。(原田に)えっとぉ…」
原田「原田」
あざみ「じゃあ原田さんは鬼」
原田「分かった」
薔薇美「私おばあさんなの?」
のぶを「桃太郎が良かったなあ」
あざみ「文句言わない。では簡単に流れを確認しながら練習しましょう。さすがに全部アドリブだと危険だからね」
雄助「言えてる」
カスミ「了解」
あざみ「では皆さん流れに沿って演じて下さーい」
全員「はーい」
あざみ「桃太郎・アメリカ版。よおいスタートっ。ロングロングタイムアゴー」
山本「昔々って事か」
(以降、全員ところどころアメリカ風の演技)
あざみ「おじいさんは炭鉱で石炭を掘ってました」
のぶを「山へ芝刈りじゃないの?」
あざみ「アメリカっぽくしてるの。早くやって」
のぶを「はい(石炭を掘る仕草)」
あざみ「おばあさんはミシシッピ川で洗濯してました」
薔薇美「(洗う動きをしながら)ボブったらまたケチャップこぼしてるよ」
カスミ「良いね良いね。そういうの入れてこ」
あざみ「すると川上から、ジャイアントピーチが流れてきました」
薔薇美「WOW!」
あざみ「おばあさんはそれを拾ってモーテルに帰りました」
薔薇美「ヘイボブ! こんな大きな桃を拾ったよ!」
のぶを「良いね! ピーチパイでも作ろうか」
あざみ「はいそこで桃割ってー」
薔薇美「よいしょお(切る)」
あざみ「すると中から?」
雄助「ハッピバースデーイ」
あざみ「赤ちゃんが生まれてきました」
のぶを「名前はどうしようか? アメリカっぽく、ジョンなんてどうだい?」
薔薇美「桃から生まれた事も強調しなきゃ」
あざみ「という事で、赤ちゃんの名前はピーチジョンになりました。彼はどんどんたくましく育ち、ある日決心をしました」
雄助「おじいさん、おばあさん、アイムゴートゥ、鬼ウォーズ!」
あざみ「こうしてピーチジョンは鬼退治へと向かいました」
のぶを「え~これで僕の出番終わりぃ?」
あざみ「今は簡単にやってるだけ。本番でもうちょっと膨らませて平気だから」
のぶを「良かったあ」
あざみ「そして、道の途中で犬に会いました。はいここで私出ます。ワンワン!」
雄助「やあ、鬼退治の仲間になってくれ」
あざみ「YES I ワン!」
雄助「ありがとう。お礼にスニッカーズをあげるよ」
あざみ「はい次猿ー」
カスミ「ウッキィ!」
雄助「鬼退治の仲間になってくれ」
カスミ「オッケィ!」
雄助「お礼にダブルチーズバーガーをあげるよ」
あざみ「はい次キジー」
エリカ「ピヨピヨ」
のぶを「鳴き声それ?」
エリカ「だってキジ分かんないんだもん!」
雄助「鬼退治の仲間になってくれ」
エリカ「分かりましたピヨ」
雄助「お礼にチキンナゲットをあげるよ」
エリカ「複雑ぅ~。私鳥なんですけど」
あざみ「はいそしてとうとう鬼ランドに到着。すると早くも鬼が現れました」
原田「(ラッパーのような動きで)ヘイヘイ! お前の母ちゃんすげーでかケツで、便器がハマッたまま外歩いてるぅ!」
のぶを「アメリカの若者みたいな挑発だ」
雄助「ヘイヘイ!」
薔薇美「こっちもやるの?」
雄助「お前の母ちゃんすげーデブで、マイケルムーアにドキュメンタリー撮られてるぅ!」
あざみ・カスミ・エリカ「フゥ~♪」
原田「(お手上げ)負けたよ…」
雄助・あざみ・カスミ・エリカ「イェ~イ!(ハイタッチ)」
あざみ「めでたしめでたし」
山本「終わり!?」
のぶを「もうちょっと詰めた方が良くない?」
あざみ「そうだね。みんな本番までにもっと練習しよう」
全員「はい!」
山本「何も出来なくて申し訳ないなぁ」
あざみ「じゃあ次はさらに細かく作ってこう。セリフも増やして、感情込めて、動きも大きくして、」
カスミ「ねえもうそんな練習してる時間ないんじゃない? 奥さん達の買い物帰りのタイミング狙うとしたら、そろそろ宣伝しないと」
あざみ「あそっか! やばいね」
のぶを「なら駅前とか商店街に行って呼び込みした方が良いかな」
薔薇美「私、お店やってる知り合いにも声かけるよ。人が多い方が良いでしょ」
雄助「あ、じゃあ俺稽古場に行って、物置きから使えそうな道具とか持って来る」
あざみ「あ~あそこの物置き、色んな団体が衣装とか小道具置いてってるもんね。ちょっとくらい借りても平気か!」
カスミ「あ、じゃあ私も行く! 一人じゃ大変だと思うし」
雄助「ありがとう」
のぶを「(カスミと雄助を見て)ほお…」
あざみ「よろしく頼んだ! みんな合間を見て練習もしといてね」
(雄助・カスミ、退場)
のぶを「じゃあ、僕は客引きしてくるよ(退場)」
原田「俺はそっちの隅っこで自主練させてくれ」
エリカ「私もするー」
(原田・エリカ、退場)
薔薇美「…源三郎さんが言った通り、この公園が笑顔の花で溢れてる光景になると良いね」
あざみ「え? あーそっか。うん!」
薔薇美「源三郎さんにも見せてあげたら? もちろん無理しないで、体が動きそうだったら」
あざみ「そうだね」
薔薇美「私もお客さん集めてくるから、後でね(退場)」
あざみ「ありがとう薔薇美さん」
山本「あのお、あざみちゃん。何かごめんね色々。思ったより大変そうで、何てお礼を言ったら良いか」
あざみ「良いの良いの。最後に花火を打ち上げるみたいな、そんな機会をくれた山本さんにもありがとうって感じだよ」
山本「いやいや」
あざみ「でもちょっと見切り発車だったな~。勢いでこんな提案しちゃったけど、まだ全然中身が出来てないし。もうテンションで乗り切るしかないか」
山本「あの、それで思い出したんだけど」
あざみ「何?」
山本「うちの妻、海外ドラマだけじゃなくて、昼ドラとか、ドロドロしたやつも好きだった。あとスターウォーズとか、宇宙の話も」
あざみ「え、」
山本「あと娘だけど、魔法使いのアニメをよく見てた。それとジブリ!」
あざみ「ええ?」
山本「出来ればその要素も足して宣伝してもらった方が、食いついて見に来てくるかも」
あざみ「今から!?」
山本「あ、すまん。つい…」
あざみ「いや~ただでさえ時間ないし、中身もまとまってないのに」
山本「…そうだよな」
あざみ「あっ、いやいやでもやるって言ったし! そこも何とか、」
山本「何欲張ってんだ俺。ごめん。笑っちゃうよな。ずっと諦めてたのに、急に希望なんか持って」
あざみ「いや、そんな事は…」
山本「俺もバカだな! よく考えたら、2人が来るなんてありえないのに。あの~来なかったらみんながっかりさせちゃうし、やっぱやめないか?」
あざみ「はあ?」
山本「そもそも、何でみんなこんな俺の為に…」
あざみ「そりゃあ、知り合ったからでしょ」
山本「知り合ったから?」
あざみ「うん。もう他人じゃなくなって、色々聞いちゃったし。理由なんてさ、結局は頭で後から考えるもので、肝心なのはその時感じた気持ちだよ。みんなそれに従って行動してるんだよ」
山本「う~んでもやっぱり申し訳ない。どうせ期待してもロクな事ないんだ。今までだってそうだったし。もう、期待して裏切られるのは疲れたから…」
あざみ「ちょっとどうしたの急にネガティブになって」
山本「第一、俺の仲間が見たのだって、本当に妻と娘だって確証はないし、例えこの町に暮らしてたとしても、今日はどっか遠くに出かけてるかもしれないし」
あざみ「悪い方にばっか考えてどうすんの」
山本「良い方に考えるのが難しいよ」
あざみ「何でよ」
山本「だってたまたま2人が買い物してて、たまたま帰りに呼び込み聞いて、たまたまこの公園に来るなんて、おかしな話だ。本当にそうなったら、ご都合主義も甚だしいじゃないか」
あざみ「…ご都合主義で何が悪いの」
山本「え?」
あざみ「世の中都合に合わない事ばっかり起きてるんだから、たまにはその逆で、都合に合った事が起きても良いじゃん。だってみんな都合に合った事を実現させる為に頑張ってんじゃないの?」
山本「都合に合った事…」
あざみ「山本さんがここに来たのもそう。私達がお芝居の内容を考えて練習してるのもそう。みんなでお客さんを集めに行ってるのもそう。あとは、山本さんが信じて願う事。何怖がってんの。ここまで来たんだから、もう後には引けないよ。じゃあね(退場)」
山本「そんな事言ったって…」
原田「(登場)よお」
山本「あ、」
原田「気持ち分かるよ」
山本「え…」
原田「あんな小娘、まだ人生のちょっとしか生きてねえ。親のスネかじってる分際で、何を知った風にエラそうな事言ってんだって感じだよなー」
山本「んん…」
原田「おっさんぐらいの歳になりゃあ、諦め癖がついてんのも分かる」
山本「まあ」
原田「だいたい、諦めなかった奴全員の願いが叶うなんて事はねえ」
山本「ああ」
原田「ただ、諦めた奴の願いが叶う事は、もっとねえ」
山本「…えっ」
原田「どうせ人生なんて捨てたとか思ってんだろ。でもなあ、生きてる限り、人生は捨てられねんだよ」
エリカ「(登場)ケンちゃんっ、私の演技見てくれないの?」
原田「おうエリカ、今行くよ」
エリカ「早く来てっ(退場)」
原田「分かった分かった…(去り際)目を逸らすな。人生の大事な瞬間は、いつだって怖いもんだ(退場)」
山本「…ケンちゃん」
【12】本番スタート
(のぶを・薔薇美、登場)
のぶを「あ、山本さん!」
山本「お帰り」
のぶを「見て下さいけっこう人集まってきましたよ!」
山本「本当だ!」
薔薇美「何か今の時間のテレビ、どのチャンネルもゴルフと競馬の中継で、みんな外に出てきちゃったみたい」
のぶを「あざみちゃんから聞いて、宇宙と魔法とかの要素も入れるって宣伝したら、割りと食いつく人もいて」
薔薇美「その中にいたかもよ。山本さんの家族」
山本「何か、緊張してきた」
のぶを「緊張って。山本さんこっそり見てるだけなんだからその必要ないでしょ」
薔薇美「バカ。色んな感情があるんだから」
山本「(客席正面に向かって目を凝らし)…ああっ!!」
のぶを・薔薇美「ん?」
(山本、後ろ向きになる)
薔薇美「どうしたの?」
山本「いたぁ。妻と娘が…!」
のぶを・薔薇美「嘘お!」
薔薇美「(念じながら見る)ん~…分かった! あの親子でしょ? 白い服着た」
のぶを「ああ~。年齢的にもそんな感じ…そうなの山本さん?」
山本「そうだよっ(段ボールハウスに退場)」
薔薇美「あっ山本さん!」
(雄助・カスミ、登場)
雄助「衣装と小道具持って来たよ!」
カスミ「全部簡単なやつだけど、無いよりマシだから」
薔薇美「ありがとう」
雄助「あとラジカセもあるから、音も出せる」
(原田・エリカ、登場)
原田「こっちもだいぶ体温まってきたぞ」
エリカ「もう火照っちゃった」
あざみ「(登場)おまたせっ。おじいちゃんも連れてきた。あそこでお客さんと一緒になって楽しみにしてる」
のぶを「山本さんの奥さんと娘さんいるって」
あざみ・雄助・カスミ「ええ!」
のぶを「あそこの白い服着た親子」
あざみ「わあ。娘さん私と同じくらいの歳なんだ」
原田「都合が合ったじゃねえか」
あざみ「ねえ山本さん!」
薔薇美「ダメダメ。もう隠れちゃった」
あざみ「んも~仕方ないかぁ。よしじゃあこっからが始まりだよ? 2人の笑顔を山本さんに見せる」
薔薇美「それで山本さんの心も、少しは軽くなると良いね」
あざみ「山本さんにも笑ってもらって、笑顔の花で溢れてる光景、おじいちゃんに見せてあげなきゃ」
カスミ「頑張ろう」
あざみ「稽古の数は極端に少なかったけど、各自で練習はしてたと思うから、呼吸を合わせ、さっきより内容も膨らませて、パワーで押し切ろう! アメリカと昼ドラと宇宙と魔法とジブリの要素も何とかねじ込んで!」
全員「はい!」
あざみ「それじゃあもう始めるよっ。劇団花畑、最初で最後の公演、咲かせるぞ! フラワー!!」
全員「フラワー!!」
あざみ「準備開始!」
(あざみ以外全員退場)
あざみ「(正面に向かって)え~皆さん、本日はここ、花畑公園に来てくれてありがとうございます。これから私達で劇をやります。1回しか練習してないけど、全力でやりますので、どうぞ楽しんでって下さい。頑張りまーす(退場)」
◎効果音「拍手」
あざみ「(影マイク)桃太郎・アメリカ版・宇宙編・昼ドラ的・魔法使いスペシャル・ジブリMIX。はじまりはじまり~」
のぶを「(登場・白髪かつら・シャベルを持ってオーバーな演技)時は1800年! わしの名前はじいさん! 日々炭鉱で石炭を掘っている。粉塵にまみれ、体はボロボロ。しかし休む事は許されない。アメリカは自由の国じゃなかったのかー!!」
あざみ「(影マイク)アメリカクリア!」
薔薇美「(登場・白髪かつら)私の名前はばあさん。(服の乱れを直す様子で)早く服を着て出てっておくれ。もうすぐ旦那が帰ってくるんだ。こんなとこ見られたら…」
あざみ「(影マイク)昼ドラクリア!」
薔薇美「あら、川上から大きな桃が流れてきたわ(拾う)よいしょ。宇宙船に持って帰ろう」
あざみ「(影マイク)宇宙クリア!」
のぶを「大きな桃だな。早速割ってみよう」
薔薇美「ぱぴぷぺぴぴぴ。桃よ、真っ2つになれ~♪」
あざみ「(影マイク)魔法使いクリア!」
のぶを「お、割れた!」
雄助「(登場・はちまき)ハロー」
のぶを「桃から生まれたから、名前はピーチジョン・スカイウォーカー・キッズウォー・ハリーポッターだ」
あざみ「(影マイク)アメリカ・宇宙・昼ドラ・魔法使いまとめてクリア!」
薔薇美「ぐんぐん育つわね~」
雄助「おじいさん、おばあさん、僕、鬼退治に行きますよ」
薔薇美「この子、名前で色々背負ったせいかもはや普通に…」
のぶを「よし。頑張って来いよ」
のぶを・薔薇美「行ってらっしゃーい!」
(のぶを・薔薇美、退場)
雄助「でも、旅には仲間が欲しいな」
あざみ「(登場・簡単な犬のかぶりもの)ワンワン!」
雄助「犬だ! 良かったら、鬼退治の仲間になってくれないか?」
あざみ「YES I ワン!」
雄助「ありがとう。お礼にコレをあげるよ(おはじき)」
あざみ「これはぁ…ドロップ?」
雄助「あっ間違えた。それドロップやない。おはじきや!」
のぶを「(影マイク)ジブリクリア!」
雄助「はい、ドロップをおなめ」
あざみ「ありがとワン! パクっ」
雄助「さあ、先を急ごう」
カスミ「(登場・簡単な猿のかぶりもの)ウッキィ!」
雄助「猿だ! 良かったら、鬼退治の仲間になってくれ」
カスミ「オッケィ!」
雄助「ありがとう。お礼にヤンキース対レッドソックスのチケットをあげるよ」
カスミ「ありがとウッキィ!」
あざみ「急にアメリカナイズされたワン…」
雄助「さあ行こう!」
エリカ「(登場・簡単な鳥のかぶりもの)ピヨピヨ」
雄助「キジだ! 良かったら、鬼退治の仲間になってくれ」
エリカ「ピーヨ(いーよ)」
雄助「良いよって事か。ありがと。お礼にからあげクンとファミチキをあげるね」
エリカ「もう嫌がらせピヨ~」
雄助「さあ仲間も揃った。景気づけに、みんなで歌おう! せーのっ」
全員「ピ~チジョンスカイウォーカーキッズウォーハリーポッターさん♪ お腰につけた~きびだんごー♪ ひとつ~私にくださいな♪(最初の名前の部分だけ早口)」
雄助「もう面倒くさいから桃太郎で良いよ」
あざみ「その方が楽だワン」
雄助「はっはっはっはっは。よしよし(犬をなでる)」
カスミ「ウキィ…(指をくわえながら雄助とあざみの様子を見てる)」
エリカ「鬼を退治したら、いっぱいごほうび欲しいピヨ~」
雄助「きっともらえるさ。金銀財宝はもちろん。豪華な食事も。犬の好きな骨。猿の好きなバナナ。キジの好きな何か」
エリカ「何かって」
あざみ「やったワンね!」
カスミ「ウ…ウッキィ!」
のぶを「(影マイク)しかし、猿はバナナなんて欲しくなかった」
あざみ・カスミ・雄助・エリカ「(袖を見て)え?」
のぶを「(影マイク)猿が欲しいのは、桃太郎の愛だった」
カスミ「は!?」
あざみ「ちょっと何言ってるワン!」
のぶを「(登場)雄助君はあざみちゃんの事が…いや、桃太郎は犬の事が好きなんだと思いつつ、猿である君は、ずっとそばで桃太郎の事を見ていた」
カスミ「な、何を言ってるウッキィ!」
薔薇美「(登場)ちょっと何変な流れ作ってんの!」
あざみ「そうだったの…?」
のぶを「身を引いたりなんかしないで、ちゃんと自分の気持ちを打ち明けたらどうじゃ?」
雄助「おじいさん…」
カスミ「余計な事しないでウッキィ!」
雄助「本当なの?」
カスミ「えっ…」
あざみ「おじいさんの言ってる事、本当ワン?」
カスミ「そ、それは…」
エリカ「言っちゃいなピヨ!」
カスミ「…あーもう! そうだよっ、私前からあんたの事好きだったんだよっ!」
雄助「ええ!」
のぶを「…返事は、どうなんだ?」
雄助「…僕も好きだった」
カスミ「えっ!」
雄助「ずっと僕を支えてくれてたよね。本当に嬉しかった」
カスミ「でも、あんたはあざみの事が好きだったんじゃ」
雄助「いつそんな事言った? そうじゃないってずっと言ってただろ」
カスミ「本当に?」
雄助「本当だよ。僕が好きなのはカスミ、君だ!(カスミを抱きしめる)」
カスミ「ウキィー!(絶頂)」
あざみ「おめでとワン!」
(全員拍手)
原田「(登場・簡単な鬼のかぶりもの・ピストル2丁)オラオラア! いつまでもぬるい事やってんじゃねえよ!(撃つ)」
◎効果音「ピストル」連射
(全員撃たれて倒れる)
原田「はっはっはっはっは! 銃社会、アメリカあ!」
(全員立ち上がる)
雄助「そうは行くか!」
原田「何!」
雄助「アメリカはみんな防弾チョッキを着てるのさ!」
原田「しまったあっ」
雄助「行くぞみんな!」
(全員手をつなぐ)
雄助「せーのっ」
全員「バルス!」
原田「うわあー!(倒れる)」
雄助「やったっ!」
全員「バンザーイ!」
原田「負けちまった~」
カスミ「さあて、みんなを苦しめた鬼をどうしようウッキィ」
のぶを「火あぶりじゃ!」
薔薇美「八つ裂きよ!」
あざみ「釜茹でワン!」
原田「ああいいとも! ほらやれよ!」
雄助「待ってくれ。僕は君をそんな風に罰したいとは思わない。そうではなく、ちゃんとみんなの前で謝って欲しい」
全員「え…」
原田「そ、そんな事したって無駄だろ。いくら謝ったところで、壊した物は元に戻せない!」
雄助「そうかもしれない。でも、やり直す為の第一歩にはなるはずだ」
原田「え…」
薔薇美「桃太郎…」
雄助「さあ」
◎BGM
☆照明・夕方
原田「…(全員を見回し)みんな、今まで悪かった。宇宙からこの星にやって来て、本当は地球人と仲良くしたかったが、怖がられ、いつしか差別と迫害を受け、仕返しにこんな悪さばっかりするようになってしまった。本当にすまん!」
◎BGMアウト
エリカ「…私、鬼を許すピヨ」
原田「え?」
あざみ「…私もワン」
カスミ「私もウッキィ」
のぶを「わしもじゃ」
薔薇美「私も」
原田「みんな…ありがとう!」
【13】FLOWER
雄助「こうして、みんな幸せに暮らしましたとさ。めでたしめでたs…」
あざみ「ちょっと待った!」
全員「え?」
あざみ「もう1匹鬼がいる!」
カスミ「何言ってんの? もうこれで、」
あざみ「ほらこっち!(山本を引っ張り出す)」
山本「(登場)えっ、いやいや!」
カスミ「何やってんの!」
(あざみ、山本を前に押し出す)
山本「わあ!」
薔薇美「あざみちゃん!」
あざみ「…この鬼は、まだ謝ってないよ」
薔薇美「え?」
あざみ「ここにいる人に謝りたいって、そう思ってるんなら、ちゃんと謝んないと」
(山本、客席正面を見て「…」その後で逃げようとする)
原田「山本っ!」
(山本、止まる)
薔薇美「山本さん」
(山本、後ろ向きのまま)
あざみ「…待ってて(鬼のかぶりものを持って来て山本にかぶせ前を向かせる)」
山本「えっ…?」
あざみ「さあ鬼め! 懲らしめてやるワン!」
山本「おい(オタオタ)」
あざみ「みんな、どうするワン!」
のぶを「…火あぶりじゃ!」
薔薇美「八つ裂きよ!」
あざみ「釜茹でワン!」
山本「いや、」
雄助「待ってくれ。そんな風に罰したいとは思わない。ちゃんと話して、気持ちを伝えて欲しい」
山本「…」
あざみ「やっぱり串刺しワン!」
山本「(鬼の役になろうとして)やっ、やめてくれえいっ」
あざみ「…何だ鬼。言いたい事でもあるワン?」
山本「そ、そうだ」
あざみ「じゃあ、ちゃんと言ってみるワン」
山本「…俺は、とても悪い事をした。家族を、台無しにした」
あざみ「…なんて奴だワン!」
のぶを「それでお前は今まで、平気で過ごしていたのか!」
山本「いやっ、本当はやり直したかった! 父親として、夫として守っていきたかった…」
カスミ「でも、そう出来なかったウッキ?」
山本「ああ。妻と子供を、たった2人だけにしてその人生を背負わせて…」
薔薇美「きっと、色んな苦労をさせたはずだよ?」
山本「その通りだ。なのに俺は何も出来ず、ただただ時間が過ぎた」
エリカ「どうして、何もしなかったピヨ?」
山本「どうにかしようと思ったよ! でも、もうどこに行っても、何をやっても上手くいかなかった。いくら頑張って働いても。何で俺だけこうなるって…」
薔薇美「色んな悪い都合か重なっちゃったのね…」
山本「だから、俺は全てを諦めた。家族を取り戻す事も」
雄助「諦めたって言うけど、それは自分の罪から逃げたって事じゃないのか?」
山本「…そうだ。俺は逃げたんだ! 逃げて忘れようとしたけど、毎日毎日後悔が襲ってくる。どうしてこうなったんだって。一緒にいてやりたかったのに。授業参観も卒業式も、家族旅行や結婚記念日も! 何もしてやれずに…」
あざみ「もし今、その家族に会ったらどうするワン」
山本「…謝りたい。許してくれるなんて思わないし迷惑だと思うでもっ、こんな奴が父親で、こんな奴が夫で、本当にごめん」
原田「…俺も、同じ鬼としてな、許してやってくれとは言わねえ。そんだけ放っといて虫の良い話だ。でも、こんな姿にまでなってんだ。何も気にせず、のうのうと豊かに暮らしてるより、十分その罪を受け止めて反省はしてるはずだ。それだけは分かってくれ」
山本「…そうだ!(花冠を持ってる)これ! この公園で一緒に作ったんだ。俺が作ってやるとすごい喜んでさ。これ、これをあげたい。これぐらいなんだ。これくらいしか出来ないけど!(大きな袋を持って来て、中から次々と花冠を出しながら)ほら、娘が好きな黄色、妻が好きな紫、2人とも好きなピンク! 他にもたくさん、」
◎効果音「パトカーのサイレン」
あざみ「え、パトカー?」
◎効果音「車のドアの開閉」
エリカ「うわ何かいっぱい人出てきた」
雄助「全部警察? こっち歩いてくるよ?」
原田「俺何もしてねえぞ!」
カスミ「ちょっとっ、お客さん追い払わないでよ!」
北川「(登場・正面に向かって)あのっ、刑事さん違うんです!」
あざみ「北川さん! 来てたの?」
北川「あっはい。明日の段取りを兼ねて視察に来てたんですけど、(正面向いて)あの、さっきの銃声は、今やってたお芝居の中で使った音で、本物じゃないんです!」
あざみ「あ、それでか」
のぶを「近所の人に通報されちゃったんだ」
北川「(正面向き)はい、分かりました。私、市役所の者なので、代わりに注意しておきます。はいっ、お騒がせして申し訳ありません!」
(全員かぶりものを脱ぐ)
あざみ「すいませんでした…」
(全員それぞれお辞儀)
雄助「みんな、帰ってく」
カスミ「お客さんも…」
山本「あの、待ってくれっ」
中村「(登場)見苦しいマネはやめなさい」
あざみ「あ、秘書の人」
中村「私も視察で来ててね、途中まではお情けで見ててあげましたが…もうこれ以上住民に迷惑をかけてもらいたくない。土地の評判が悪くなったら、建設会社としても次の一手に出にくいんでね」
山本「これを、これだけでも!(袋を抱えて行こうとする)」
中村「やめなさいっ(袋を取る)何だこんな物(逆さにして中身を落とす)」
山本「ああっ!(拾う)」
原田「何すんだてめえ!」
中村「ただのゴミじゃないか。欲しがるわけないだろ。甘いんだよ考えが! 謝って気が済むのはあんただけだ。ねえ社長」
大道寺「(登場)感動したよ」
中村「ええっ!」
大道寺「俺にも分かれた妻と娘がいてな。気持ちは分かる」
中村「社長…」
大道寺「落ち着け中村。お前は家族を大事にしてるからな。怒りが湧くのも無理はない」
中村「すみません、つい感情的に」
大道寺「お前らの芝居や、ここに来た人達を見てな、公園ってのは色んな人生が集まった場所なんだって気づいたよ。そんな場所を無くすのは、やっぱり良くない」
あざみ「え?」
中村「いやでもっ、せっかくこの次はうちが優先的に建設をする方向なんですし、そもそも仕分け人の方がすでにそう決めたじゃないですか。ねえ宮原さん」
宮原「(登場)心打たれました」
中村「ええっ!」
宮原「私も、父親がいない家庭に育ちました。父を恨んだ事もありましたが、先日久しぶり会って、その年老いた顔を見た時、なぜか恨むに恨みきれませんでした。どうも、それと重なってしまい…」
中村「でも、公園を無くすのとそれは関係ないですよね?」
北川「あの! あれだけ人が集まってたんです! まだここも捨てたものじゃないと思います。再度、検討しませんか?」
宮原「そうですねぇ…」
源三郎「(登場)どうかお願いします!」
あざみ「おじいちゃん」
源三郎「老人会でゲートボール大会を企画したり、地域の交流に役立てますから!」
北川「良いですね交流の場。それを浸透させていって、寄付金を募れば修繕費が集まるかもしれません」
薔薇美「私も、占いで稼いだお金はちゃんと場所代として収めますので」
あざみ「またお芝居して人も集めるし!」
のぶを「それで投げ銭してもらって稼ぐのも手だね」
北川「どうでしょう! 宮原さん」
宮原「…じゃあ、それらを具体的にまとめるとして、とりあえずは猶予期間を設ける形で話を進めましょうか」
あざみ「やったあ!」
源三郎「ありがとうございます!」
中村「強引すぎる。なんて都合の良い話なんだ…」
薔薇美「それを奇跡と呼ぶのかもね」
中村「はい? そんなもの信じられるわけ、」
薔薇美「人の奇跡を疑う人に、奇跡は訪れない。いつかあなたにも訪れると良いわね」
中村「え…」
雄助「これで万事解決だ」
宮原「ただし!」
全員「え?」
宮原「やはり、ホームレスの方には立ち退いてもらわないと困ります」
あざみ「あぁ、それは…」
宮原「事情があるのは分かります。でもさすがに、そこは国としても指示せざるを得ません…」
源三郎「う~ん」
山本「出てくよ」
あざみ「山本さん!」
山本「そのつもりだったし平気だよ。今までだってそうやって来たんだ」
原田「まあ、そういうもんだろうとは思ったが」
山本「みんな今日は本当にありがとう。心から感謝してる」
カスミ「残念だけど」
のぶを「仕方ないのか」
あざみ「ねえ、何か仕事ないの? ホームレスを住まわせて仕事させるみたいな、そういうのたまに聞くじゃん」
北川「そういう制度もあるけど、不景気もあって最近はその活動も縮小してて。約束は出来ない状態です」
薔薇美「確かに最近は、どこも人を雇う余裕がないみたいだしね」
あざみ「そうなんだ…」
大道寺「うちの会社でも、清掃員や警備員とか、空きがないか聞いてやりたいが」
中村「管理は別の会社ですからね。ホームレスのあなたを雇ってくれるかどうかは、難しいです」
山本「いや、当たり前の事だ。こうなったのは自分の責任だから」
北川「あっでも、掛け合ってはみます! 路上生活をしてる人がどのくらいいるのか現状を調べて、改めて専門の部署に提案します」
山本「そんな事まで…ありがとうございます」
北川「いえ、町の人に笑顔になってもらうのが私の仕事ですから。さっきこの公園に来てた人達みたいに」
大道寺「ああ。芝居やってる時か」
中村「話は散らかってるし、グダグダしてましたけど」
宮原「みんなそれなりに微笑んでましたよ」
北川「私はハードル下げてたんで楽しめました」
源三郎「俺は最高だったぞ! あざみ!」
あざみ「ありがとうおじいちゃん!」
源三郎「笑顔の花でいっぱいだった! この公園の名前の通り」
薔薇美「恋の花も咲いたしね」
カスミ「え!」
雄助「いやあ、照れるなあ」
のぶを「次はいつやる?」
あざみ「またアンタも?」
のぶを「良いじゃんかよぉ」
全員「はっはっはっは」
山本「…じゃあ、俺は段ボール片付けて、行くよ」
雄助「これから、どこか探すんですか?」
山本「ああ。住めそうな所をね。こんな俺でも」
薔薇美「風邪引かないでね。毛布あげるから」
山本「恩に着るよ。それじゃあ、お世話になりました(源三郎とあざみにお辞儀)」
源三郎「ああ。あんたの気持ち、きっと奥さんと娘さんにも届いたよ」
◎BGM
(山本、撤収作業)
(全員、何か話したりしながらそれぞれ順に退場していく※山本以外)
(舞台上に1人残った山本、ふと正面に視線をやって何かを見つめる)
山本「…(花冠を強く握る)」
☆暗転
【終】
