ジュエリー市場の今とこれから(前編)
※この記事はHASUNAのPodcast番組「Gemstone Journey 宝石と旅に出よう」2026年1月21日配信分の要約です。
いま、世界のジュエリーマーケットで起きていること
こんにちは、ジュエリーブランドHASUNAの白木夏子です。
今日は、世界のジュエリー市場がどんな状況にあるのか、そしてこれからどこに向かっていくのかを、少し俯瞰しながらお話ししたいと思います。この業界に携わって約17年、変化の波をたくさん見てきましたが、いまほどダイナミックに動いているタイミングは珍しいかもしれません。
世界全体のジュエリー市場は、2024年時点でおよそ2329億ドル、日本円にして約35兆円規模に達していると推定されています。成長率も比較的安定していて、2032年頃まで年平均約5.1%で拡大していくという予測も出ており、「ジュエリー」というカテゴリー自体はグローバルではしっかり成長産業として位置づけられています。
成長を引っ張るのはアジアのパワー
「ジュエリー市場」と聞くと、アメリカやヨーロッパを思い浮かべる方も多いかもしれませんが、いま成長を強く牽引しているのはアジア太平洋地域です。特に中国とインドの存在感が非常に大きく、富裕層だけでなく中間層の拡大が需要を押し上げる大きなドライバーになっています。
インドではもともとジュエリー、特にゴールドジュエリーの需要が非常に高く、日常から指輪やバングルをたくさん身に着けている文化があります。小さな頃からピアスや鼻ピアスをつけることも一般的で、「特別なときだけのジュエリー」というより、暮らしや祈り、アイデンティティに深く根ざした存在として愛されているのが特徴です。
一方で、中国はここ数年、とくに2025年あたりからやや景気の陰りが見え始めていると言われていますが、それでも中長期で見ると市場規模は依然として大きく、アジア全体の成長を支える重要なプレーヤーであることに変わりはありません。
ヨーロッパとアメリカで起きていること
ヨーロッパのジュエリーマーケットは、派手な急成長ではないものの、堅調に右肩上がりを続けているという印象です。伝統的なハイジュエリーメゾンからコンテンポラリーなブランドまで、多様なブランドが共存しながら、クラフトマンシップやデザイン性を重んじる土壌が安定した需要を支えています。
一方で、アメリカの状況は少し異なります。物価上昇やパンデミック後の消費の冷え込みなどの影響を受けて、ブランドショップやアパレルと同様に、実店舗の閉鎖やリストラのニュースが相次いでいます。オンラインへのシフトは確実に進んでいますが、ジュエリーは単価も高く、「実物を見られないことへの不安」がどうしても付きまといます。そのため、EC化を進めながらも、お客さまに安心していただけるリアルな体験をどう提供するか、そのバランスが大きな課題になっていると感じます。
日本のジュエリー市場とインバウンドの追い風
では、日本国内のジュエリー市場はどうでしょうか。2024年の日本のジュエリー小売市場は、約1兆953億円と推計されていて、前年からおよそ4.7%増加したとされています。コロナ禍からの回復とインバウンド需要の戻りが、この成長を大きく後押ししました。
表参道を歩いていても、海外からのお客さまがぐっと増えたことを肌で感じますし、ポップアップや百貨店のイベントでも、海外の方がふらりと立ち寄ってくださることが明らかに増えました。円安と金価格・地金価格の高騰によって販売単価が押し上げられたこともあり、数字のうえでは売上にプラスに働いている側面があります。特に富裕層による高額ジュエリーの購入は堅調で、「ハイエンドなジュエリー」は引き続き強いニーズを持って受け止められているようです。
それでも、ジュエリーをもっと身近な存在にしたい
全体の市場規模が伸びていると聞くと、「景気がよくて何より」と感じる方もいるかもしれませんが、同時に少し距離を感じる、という声も聞こえてきます。実際、富裕層向けの高額ジュエリーが好調な一方で、中価格帯以下のブランドや若い世代の購買行動に目を向けると、まったく別の工夫やアプローチが求められているのも事実です。
HASUNAとしては、「特別な誰かだけのもの」ではなく、もっと多くの方にとって、自分らしさや想いを託せる身近な存在としてジュエリーを届けたいと考えています。そのために、価格帯の設計、オンラインとオフラインの体験づくり、そして何より“なぜ今このジュエリーを身につけるのか”というストーリーを、これからも丁寧にお届けしていきたいと思っています。
今日はマクロな数字を交えながら、世界と日本のジュエリー市場の全体像をお話ししました。次回は、「いま、ブランドには何が問われているのか」「どんな価値を持ったジュエリーがこれから選ばれていくのか」といったテーマを、もう少し具体的に掘り下げてお届けしますので、ぜひ楽しみにお待ちいただけたらうれしいです。
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