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T先生と「The Sting」

ロバート・レッドフォードが亡くなったというので、何年かぶりにAmazon Primeで「スティング」を観た。人生で一番好きな映画は? と言われたら「明日に向かって撃て!」だし、一番びっくりした映画は? と聞かれたら「スティング」だと答える。ポール・ニューマンとロバート・レッドフォードのコンビというのは、実に絶妙で、なんというか、ボクにとっては男として憧れる関係性なのである。

いまから38年前の1987年。ボクは高校2年生だった。通っていた県立高校は、どことなくユルいというか自由というか、「おまえら勝手にやれや」という雰囲気が漂ってる高校で、先生たちも、少し歳の離れた従兄弟のお兄ちゃんみたいな人ばかり。学園祭で生徒のバンドの中にボーカルで登場する先生がいたりして。それはそれで大好きだった。

2年生の時の担任は英語のT先生。谷村新司に似ている人で、表情の豊かさとか、「顔芸」の豊かさも谷村新司に負けていないw 人だった。

当時、なんという時間だったのか全然思い出せないのだけど、普通の学習教科とも、体育や美術とかの教科とも違う、クラスのための時間のようなものが、確か週に1時間だけあった。指導は担任の先生だったと思う。その時間を、「視聴覚室で映画を見ようぜ」と言って、よく映画を見ていた。実に呑気な時代だなあと思うんだけど、あれはT先生の仕業だったのだろうか。

仲代達也の「熱海殺人事件」とか、松田優作の「それから」とかを観た記憶があるんだけど……いや、もしかしたら記憶が錯綜しているのかもしれない。

ある時、この時間で「スティング」を観ようということになった。これはたぶんボクが提案したもので、その1〜2年前、夜中の(確か年末の)テレビ映画で初めて見て、とにかくドンデン返しにびっくりしたのを、クラスのみんなにも見てもらいたくて提案したら、あっさり通ってしまったのだ。

当時からしても15年以上前の映画だったし、「トップガン」や「バック・トゥ・ザ・フューチャー」が公開されていた時代に、こんな古い映画を知ってるクラスメイトもいなかったと思う。でも、やけに賛同してくれたのはT先生だったような気がする(ボクは嬉しかった)。そして、言い出しっぺのボクが地元のビデオショップに行ってVHSビデオを借りてくることになった。

で、その時間。
提案してしまったのはいいが、こんなに古くて「渋い」映画、みんな見てくれるのだろうか? というボクの心配をよそに、周りを見回してみると、けっこうみんな「引き込まれて」いる。列車の中のポーカーのシーンあたりだろうか。よしよし、いいぞ!

「その」時間は、高校の授業なので50分で終わってしまう。「残りは放課後に見よう」ということになった。

で、5限か6限の、現国だか何かの時間が終わって教室の掃除をしてたら、「おーい、はやく続きを見るぞー!」と言って、T先生が廊下の窓から叫んでいる。手には例のビデオテープを持っていた。

鑑賞再開後も、みんなが興味を持つかどうかが気になって、ボクはキョロキョロ、クラスメイトの動向を気にしながら本編を観ていた。

そしてラストシーン。ロバート・レッドフォードがポール・ニューマンに撃たれ、ポール・ニューマンがFBI捜査官に撃たれるシーン。ほぼ全員が、固唾を呑んで画面を見ていた。よしっ!

そう、そしてドンデン返し。

ふと見ると……、クラスメイトの誰よりも楽しそうに、且つ、とてもいい顔をしてw そのドンデン返し&ラストシーンを見ていたのは、まぎれもないT先生だった。

瞬く間に38年が経った今日、その同じラストシーンを観ながら、T先生の、実に楽しそうな横顔を思い出していた。もうとっくにボクらも、あの時の先生の歳を越えちゃいましたよ。もう80歳ぐらいかなあ、元気にしてるといいんだけど。

そして、ロバート・レッドフォード安らかに。

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