【漫画×アニメ×ゲーム×音楽】「どろろ」を堪能する
手塚治虫作『どろろ』のTVアニメ化
手塚治虫の「どろろ」ですが、先日原作漫画と2019年に制作されたアニメを視聴しました。
漫画とアニメ版「どろろ」の内容に触れつつ、1クール目の主題歌である、「女王蜂」『火炎』の曲起こしも行いましたので、併せてご紹介します。
映画化実績ありの『どろろ』
「どろろ」の映像化で言うと、2007年に妻夫木聡と柴咲コウのW主演で実写映画化がされたイメージが強く、当時の人気俳優を使ったパンチのあるビジュアルと、Mr.Chidren『フェイク』が主題歌に起用されたこと等で、大いに評判だった印象ですが、
最新アニメ版「どろろ」では、百鬼丸・どろろ、共により現代的かつクールな造形で描かれています。

アニメ版どろろの印象的シーン:音響編
「どろろ」は、生まれた際に自身の身体の殆ど(48箇所)を魔物に捧げられた少年「百鬼丸」が、日本刀を仕込んだ義手をはじめとした、作り物の体で魔物と戦いながら、自身の肉体を取り戻していくストーリーです。
原作の百鬼丸は、耳は聞こえず、しゃべることも出来ないものの、人間の心の声を聞き取る力や、腹話術を使って、漫画上で幼子の「どろろ」らと会話(台詞の交換)が出来ています。

一方で、アニメ版初期のどろろにおいては、耳は一切聞こえず、しゃべることも一切ない、寡黙な青年として「百鬼丸」が描かれています。
アニメ版第4話にて、妖刀使いを退治することで、「百鬼丸」は初めて音を聴く"耳"を取り戻すこととなりますが、その際に、降りしきる雨や、泣き叫ぶ女の声、森にすむ生き物たちの鳴き声などが、音の爆弾となって「百鬼丸」を襲うシーンは、アニメならではの演出でもあり、音響効果的にも非常に印象的でした。

アニメ版どろろの印象的シーン:演出編
アニメ版でもう一点印象的であったシーンをご紹介します。
「百鬼丸」の身体を奪った魔像の置かれた「地獄堂」ですが、アニメ版では各地の魔物を倒すたび、「地獄堂」に設置された魔像が真っ二つに割れて倒壊する演出が加えられています。

これは原作漫画にはないもので、かつこの演出はゲーム「ワンダと巨像」で各エリアの巨像を倒した際のエフェクトと非常に近似しています。
いざ考えると、"失われた少女の魂を取り戻すために、16体の巨像を倒す"という「ワンダと巨像」のコンセプトもやや「どろろ」に近いものがありますし、アニメ版「どろろ」でのみ登場する、鳥の魔物や、空を飛ぶムカデの魔物なども、「ワンダと巨像」の巨像らと似たものを感じますので、
漫画「どろろ」⇒「ワンダと巨像」⇒アニメ版「どろろ」と後世の作品がそれぞれをオマージュしている構成になっているのやもしれません。

漫画「どろろ」の与えた影響
前述した「ワンダと巨像」以外にも、「どろろ」のクールな設定が後世に残したと思しき足跡を考えてみました。
幼子「どろろ」の背中には、盗賊である父「火袋」が残した、"大金のありかを示す刺青"が彫られており、「どろろ」はその大金を手に武士に対抗する農民たちの国を作り上げる運命を託されております。
この設定は、漫画「ゴールデンカムイ」において、"アイヌの少女アシリパが、独立国家を作るために父が残した、金塊のありかを示す刺青人皮を探す"という設定でオマージュされています。

なおアニメ版ではどろろの母親の背中に刺青が入る形に設定変更されていました。
また、原作版「百鬼丸」は両手の義手の中には日本刀、左足の義足には毒薬噴射器、作り物の鼻には爆弾が仕込まれていたりと、全身を武装しているのですが、
この設定は漫画「ベルセルク」の主人公「ガッツ」が義手の中に大砲を仕込んでいたり、ナイフや炸裂弾を全身に仕込んで魔物や使徒と闘う様によく似ています。

また、どろろ「鯖目/地獄変の巻」で登場する蛾の魔物(マイマイオンバ)は、"普段は美しい女性の見た目をしている""変貌すると蛾に似た魔物となる""火をもって祓われる"といった点が、
ベルセルクの「ロストチルドレン編」で登場する蛾の使徒「ロシーヌ」に似たところが感じられたりと、「どろろ」⇔「ベルセルク」も多くの点でリンクするものがあるように感じます。
なお、結果的に、ベルセルクの影響を多分に受けた、ゲーム「ダークソウル」シリーズにも、間接的に幾分か「どろろ」のエッセンスが流れ込んでいるように感じました。

女王蜂「火炎」について
最後に、アニメ「どろろ」のオープニングソングとなった、女王蜂「火炎」についてもご紹介します。
まずとにかく、びっくりするほどかっこいいです。
以下OP映像とともに聞いていただければわかりますが、バンドサウンドがきつくなく、音の詫び寂びが効いていることでモダンでありながら、独特の和テイストがあります。
ドラムなどのリズム体は電子音が多く、EDM寄りの楽曲でありながら、このテイストに仕上げられるのは女王蜂の類まれなる作曲センスを感じますし、
特に、「どろろ」全体の空気感としてある、独特のむなしさ・空っ風が吹くようなイメージと、相反する"闘争"や"人間の激情"といったイメージを、音圧の緩急を用いることで、共存可能にしている楽曲に思います。
私で曲を書き起こすにあたっては、この詫び寂び感を出すために、バイオリンを入れたりしてみたのですが、全体的にドラムやボーカル・ギターのエフェクト配分が難しく、あれこれと試行錯誤が出来て楽しかったです。

実際のリミックス結果はこちらからご確認頂ければと思います。
総評
今回は「どろろ」を中心に、音楽・アニメ・ゲーム・音楽の切り口で感想を綴ってみました。
音楽も加えた感想を書いたのは初めてでしたが、非常に楽しく筆を執ることが出来ましたので、またこういった様々な角度から文芸作品や音楽・映像作品に触れてみようと思います。
