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【#あの日母になった私へ】母が私の母親になった話

お母さん、覚えていますか?

あなたの発した言葉がずっと心に残っています。マッサージが気持ちいいと目を細めつつ、こう言いましたよね。

「私、赤ちゃんの頃、あなたのこと可愛いって思えなかったの」

当時、あなたの病気が少しでもよくなって欲しくて、私は毎日必死にマッサージしていました。元気なころはすぐに手がダルくなったのに。病気になってからは1日中動かしても、手が疲れなかったのが不思議です。それだけあなたの病気を治したい気持ちが強かったのでしょう。人というものは、いつも手遅れになってから力を発揮するんですよね。

「え?ひっど!」

マッサージへの感謝に続いて出た思いもよらぬ言葉に、私はなぜか吹き出してしまいました。あなたも笑っていましたよね。

「だってね、生まれてすぐ、おばあちゃんが取り上げるから」

確かに祖母は私を溺愛していました。しかし、生後間もない頃に母親から嬰児を奪うなんて。

「お乳を飲ませる時しか渡してくれないんだもん。愛情も育たないよね」
「文句言えばよかったじゃん」

腰をもみながら私はツッコミをいれました。

「言えるわけないじゃない!おばあちゃん怖いもん!」

と答えるあなたに「嫁として母として闘え!」と笑いながら物騒なことを私が言うと、無理無理と笑いで返していましたっけ。

祖母は私を独り占めしたいがためにあなたに職場復帰を強くすすめたんでしたよね。幼稚園の頃、仕事を辞めて欲しいと訴える私に「おばあちゃんがね」とよく言っていたの覚えてます。

「家のことも孫も私が面倒みるから!」

男の子ばかりしか育ててこなかった祖母にとって、私は夢にまで見た女の子。女性も手に職をつけた方がいい、という正論で私を母から奪ったと散々文句を言っていたのも覚えていますよ。

「おばあちゃんになついちゃってさ。私が会社に行くとき知らんぷりなんだから」

肩を揉まれ気持ちよさそうにしながら、あなたは話を続けましたね。

「あのときは初めての子を取り上げられたと恨みもしたけど……結果的には定年まで仕事ができたのは良かったな。今はおばあちゃんに感謝している」
「ふーん、じゃあ今も私は可愛くないのかな?」

頭をマッサージしながら意地悪な質問をする私に、あなたは目をむいて怒ったなあ。あなたは本当にからかい甲斐がありました。あなたをからかうの楽しかったです。

「ばか!可愛いに決まってんでしょ!可愛くなったきっかけはね」

◇◇◇

「ままー!」

突き出された小さな手を見た瞬間、祖母から私を奪い取ったあなた。親戚の家に祖母と私だけが泊まることになり父と2人で帰ろうとしたとき、私が泣きじゃくったんですって?2歳の時だから覚えていませんが。

「私を求めて泣くあなたをみて、初めて可愛いと思った」

自分ではなく母親を選んだことで不機嫌な祖母を親戚宅へ残し、父と3人で家に帰ったとき、あなたは自分が母親になったと感じたとうれしそうに言ってくれました。

そんなことを聞いたら2歳まで可愛くなかったと言われても、怒るに気にもなりませんよ。その日のマッサージがいつもより長かったの、わかりました?

ねえ、お母さん。私はいつ母親になったのかしら?noteにそれを書かなきゃいけないの。いつかわからなくて困ってます。教えて欲しいです。お母さんみたいに母になった瞬間をはっきり覚えてなくて。もし、気づいていたら話して欲しかったです。どうして電話が通じないところへ逝ってしまったのでしょう。

母親になってくれてありがとう。私は元気です。

#あの日母になった私へ