【#シロクマ文芸部 2月③】お題:昨日から
シロクマ文芸部の1カ月の全お題を使って一つの物語を作っています。レギュラー部員は月初めにお題を全部教えてもらえるので思いつきました。今年で3年目の挑戦となります。
1回目は20字小説、2回目以降は文字数制限のないお話というスタイルで毎月挑戦中です。
第1回はこちら👇
第2回目はこちら👇
「昨日からずっと怪異にかかりきりで遅れた」
「か、怪異?」
スッと引き締めた表情に似合わない単語が彼女の口から飛び出したので、私は驚きました。
なにそのふざけた理由!
元々ふざけた人間だと感じていましたが、待ち合わせ場所に遅れてきた理由がそれ……?
長い間、冷凍庫のような建物内で待たされた私は、今だ歯の根が合いません。怪異という言葉さえ、気をつけて口を動かさなければ舌を噛んでしまうほどガタガタと震えています。
本当は「遅刻を怪異のせいにするなー!」と勢いよく怒鳴りたいところですが、ゆっくりと、しかも単語しか発することができないのです。
ええ~い私の口!
もどかしい!
寒さで顔が強ばっている私にお構いなく彼女は話を続けます。
「この異常な寒さは怪異によって起きたもの。本当だったらここも暖かかったのよ」
う、嘘をつけ~いっ!
ツッコミを入れたいが腕は数ミリ程度しか動かず……悔しさを噛みしめ、いや噛みしめるべき歯は震えっぱなしなのですが。
「は、はやっく、暖かっいとこっ、へ、移動、しまっしまっハ~ックショイ!」
上品さからほど遠い大きなくしゃみをして、私は思わず赤面しました。それを見た彼女はクスクスと笑います
「ごめんごめん、寒かったんだ」
とパチンと指を鳴らすと。
ポウっと彼女の指から炎が現れました。凍っていた暖炉に炎がともり、ランプも輝き始めます。あっという間に部屋は暖かくなりました。
「できるなら早くやってよ!」
憤る私を見て、彼女はゲラゲラと笑います。
「だってあなた、自分で温かくできたでしょ?」
「他人様のうちで好き勝手はできません!」
常識人として当然だとばかり、威張ってみせてやりました。私はこれまでも彼女の非常識に振り回されてきたのです。
「あなたが?常識人?」
腹を抱えてゲラゲラ笑っていた彼女を私はいまいましそうに見つめ、腹立たしそうに口を開きました。
「で、なんで呼び出したの?」
不機嫌さを隠そうともせず尋ねる私に、彼女はニヤリと笑いかけ、こう言い放ちます。
「ここは私たちの事務所です」
「事務所?」
(つづく)
ホラーにしようかなと思いましたが、ファンタジーで行きます。
怖くないので安心してください。
小牧幸助部長、今週もありがとうございました。
