【#創作大賞感想】あわいの名手が描く現世(うつしよ)にひたれ!
本日は、穂音いづみさんの「おかえり、あんちゃん」の感想文を書かせていただきます。
noteでは穂音さんで活動されています。物と物との間にあるみえないもの、感情のゆらぎや気配を描く「あわい」を描くのが大変お上手な方です。noteで知り合ってから穂音さんの「あわい」に惹かれつづけています。
TALESでのもうひとつの公開作品「ミズ・ミズテリオーザの事件簿」はnoteでのファンがかなり多い作品です。
元々、人と動物が対等である世界が魅力的な物語が、TALESへの投稿作でよりブラッシュアップされ、登場動物達の心の動きに泣かされました。こちらの感想文も書きたいところですが、今回は「おかえり、あんちゃん」に集中します。
「おかえり、あんちゃん」は昨年の「花畑お悩み相談所」にも出て来たバクさんのシリーズです。
こちらでは、バクさんが人間と対等に会話をし、仕事の契約も取るなど「あわい」の魅力を十分に発揮しております。「おかえり、あんちゃん」もバクさん登場とのことで、同じものを期待していたのですが。
読み終わっての最初の感想は「奥底に潜むものを見つけた時、人は正解は見つけられるのだろうか」というものでした。
こちらの作品を書くために、穂音さんはかなりの資料を読み込まれたそうです。そのため、物語は幾層にも重ねられ、薄紙を剥がすように繊細に進んでいきます。取り除かれるたびに明かされる「真実」や「真実ではないかと思われるもの」に夢中になりつつ、心がヒリヒリと痛みました。
感動的な物語で流す涙とは違うものを、私は読了後に流しました。人間は心の奥底に暗い思いをかかえている場合が多いです。特に激動の平和でない時代を生き抜き、現実にそれを持ち込まないようにしている方々の苦労がどれほどのものか、経験の少ない私には残念ながら推察できないのです。
きっと軽薄に、人語を操るバクさんに食べてもらえたら楽になるのでは、と提案してしまうかもしれません。なんて浅はかな私。想像しただけで顔から火が出ます。
物語の中で、奥底に抱える暗い思いについて穂音さんは、痛めつける面だけを持つものではないと訴えているとも感じました。ザラザラとした辛い気持ちも込めて、この物語は書かれたのではないでしょうか。間違っていたたらごめんなさい。
贖罪の思い
生きる支え
一見異なる考え方に感じるこれらは、心の奥底にある感情を簡単に消してはいけないと語り掛けてきます。私達が悪夢を食べるバクさんと簡単に出会えない理由は、人として深く生きるためなかもしれません。
良いことも悪いことも抱え、人間は生きています。今振り返ると間違っているように見える過去は、その時代の常識だったのです。
声高に全否定しない冷静さを私は持ち続けたい。
