吃音症の先輩との日々
まじめな話
なんだかまじめ〜なタイトルだなあ。
本当はもっと砕けててアヴァンギャルドなコピーをライティングしたいのにできないのはインプット不足がエクスプロージャーしてしまっているということなのでしょうか。
最近はいかにいけ好かない奴になれるかという遊びをやっているので横文字多めでお送りしております。ほんとに嫌われそうだからやめよ。
うちの職場さぁ
私が働いている職場は従業員数10名にも満たない中小企業です。業界的に若者が参入することは少なく、ダントツで若手の私はひとまわり以上歳上のおじさん達から蝶よ花よと大事に育てられています。そのおじさん'sの中でいちばん歳が近い先輩がいます。近い言うても10個歳上だけど。
今日はその先輩についての話。
その先輩は業界歴で言うと10年近く、今の会社に移ってから5.6年経ってるはず。
それなのに貫禄という貫禄は無く、先輩達からいじられキャラとして認知されています。
しばらく一緒に仕事をしていると、処理能力こそ高いものの(国立大卒)、とにかく感が鈍く、対人コミュニケーションに難がある印象でした。
その最たるものが吃音(きつおん)。どもるというやつですね。
とにかく先輩は誰と何を話すにしても最初の一言がなかなか言えず、痺れを切らした上司に怒鳴られたり呆れたりされている。
電話をしようものなら話の要旨を掻い摘んで端的に伝える他無く、細かなニュアンスが伝わらないせいでいつも話題から一歩遅れてしまう。
自分は後輩という立場でありながらそんな先輩の様子に苛立ちを覚えたり、安易に無視しようとしたりした時期もありました。なんという傲慢さ。
それでも仕事は時に協力しながら進めていかなくてはならないので、この人がスムーズに仕事をするためには一体何が必要なのかを考えながら生活していると、少しずつ理解できた部分も出てきました。
分からないことはいつも本が教えてくれる
私は分からないことはまず関連する本から情報を仕入れて生活に反映するようにしています。
今回参考にしたのが「吃音の合理的配慮」菊池良和著。
基本的には吃音の症状が現れ始めた子どもに接する教師や親に向けて書かれていますが、内容は十分応用できるものでした。
その中で特に参考になったのが、
・発話しにくい特定の単語がある
・ほどよい緊張の時、最も吃音が減る
・発話意欲を削がない環境作りが重要
この3点です。
これらを意識しながら先輩と接していると、
吃音を発症しやすい条件が全て揃っている事に気が付きました。
お願いします は高度テク
私たちの職種は一人で完結する業務は少なく、同僚や同業者と協力する場面が少なくありません。
その場面を円滑に進めていくためには、「お願いします」、「ありがとうございます」
この二言が非常によく登場します。
ぶっちゃけ、これらをデカい声でハキハキ伝えていればなんとかなります。
でも先輩の場合、母音の「あ」と「お」が苦手なようで、どうしても「おっおっ……お願いします」というようにスムーズに発話ができません。
私たちがもはや無意識に使っている言葉ですらも困難さを抱えている人がいるのです。
しょうもなさに救われる
そうやって観察していると、人間どうしても情が湧いてくるもの。
個人的な話もするようになり、他の同僚と比べて会話をする機会が増えました。休みの日何してた、今日の昼飯はどうする、明日休みにならないかな…などなどとりとめのない話。
すると…あれ?どもってなくない??
先輩は私とどうでもいい話をする時に限っては、全くどもる事なくスムーズに会話ができていました!
しかしこと業務的な会話や上司への報告となると、
今までと変わらずに時間をかけてつっかえながらなんとか言葉を発していました。
ああこれは、本人が緊張を感じる相手や話題ほどどもってしまうんだなとやっと気が付きました。
程よく緊張しなくて済む相手となら、雑談に興じられるほどリラックスして会話を楽しめる。
そして、自分がその会話を引き出せたことが少し誇らしく思えました。
それでもまだまだ逆のパターンが多く、どんどん発話しにくくなっていく場面もあります。
負のループ
高圧的な相手と話す時などは特に顕著です。
ただでさえどもってしまうのに、相手がそのテンポの悪さから苛立ちをぶつけ、さらにその様子に怯えてより言葉が出てこなくなる…
もう悪循環です。
相手が自分に対して敵意や苛立ちを向けていると気付いてしまったらその時点から防衛意識から来る緊張がどんどん高まる。
そして発話できないでいるうちに会話の主導権を握られ、気づいた時には自分の理解の及ばない話題まで進行してしまっている。
置いていかれたのはこっちなのに、相手からは呆れられ、会話そのものを放棄される。
本人も、「もう下手に話さずに相手に委ねてしまおう」とそもそも発言をしなくなる。
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もう、ここまで来ると単なるコミュニケーション不全に留まらず、必要な情報を受け取る機会を失い、「無能」のレッテルを貼られる事態に陥る。
そんなことあって良いはずがない。
正義感☆発動!
自分は比較的コミュニケーション能力はある方だと思うので、先輩の言うことを代弁まではできなくとも、せめて発話しやすい環境を作ってあげられないかといらんお節介をしはじめました。
まずは「待つ」こと。
ちゃんと「あなたの話を聴きたいです 」
という態度を示すこと。これは大前提。
そして、変に配慮しないこと。
「ゆっくりでいいですよ」とか言ってしまうと、自分の吃音のせいで相手に気を遣わせてしまっている、という意識が働くので逆効果でした。
それより、どもってても気にしない、ただ話終わるまでちゃんと聴く。
受け入れられるという実感
そのスタイルでいったお陰かは分かりませんが、
雑談に限らず業務的な会話もスムーズに行えるようになり、チームワークが向上したとして評価されるようになりました。
あとはこれを積み重ねて、
「しっかり話を聴いてくれる人がいる」こと、
「たとえどもったとしてもちゃんとコミュニケーションができる」という自信をつけること。
これを本人が培っていけばより積極的で今までよりマシな職場になるんじゃないかな…と思っています。
まあ職場には他にもクセが強い面子が揃っているので一筋縄ではいきませんが、その分試行錯誤の甲斐があって面白いです。
仕事の話なんてめったにしないけど、良かったらまた聞いてください。
その時はあなたのことも聴かせてくだいね。
最後まで聴かせてもらいます。
では
