堆積する時間【シロクマ文芸部|お題「思い出の」】
小牧さん、お題をありがとうございます。貼付記事以下、参ります。
(作品本文字数:453字)

思い出の時間を語れ。
そう言われて、これまで辿ってきた時間を頭の中で遡ってみる。
辿っても辿っても、手ですくった砂のように、心からこぼれ落ちていき、口から声に出してそれを告げることができない。
あれほどの喜びと悲しみ、そして憤りは、どこに消えてしまったのか。
ああ、そうだった。
心の奥底に閉じ込め、押しつぶしてきたものたちは、既に思い出の形をしてはいなかった。わたしはあのときに、語るべきことと求めるべきものを投げ出してしまったのだ。
今、ここにあるいびつな残骸を抱え、わたしはしばし呆然とする。
呆然としたままで、夜空を見つめ、ただ朝が来るのを待っていた。

思い出のできごとは、言葉にはならなかった。
姿形が崩れ、個々の形を保てなくなったそれは、わたしを構成する時間、その過去に堆積物となって固く積もっている。
わたしの内部は過去から作られている。
わたしの皮膚、髪、顔は。
今日と明日を過ごすわたしと、わたしの傍らにいてくれる人たち、その営みで今正に作られつつあった。
過去は沈み、なれど消えない。
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©2023-2025 Harunaga Mutsuki


【ご説明とお詫び】
2025/09/12早朝に投稿した「シロクマ文芸部」投稿作は、お題の選択を取り違えておりました。一旦下書きに戻し、しかるべき時に投稿し直す予定です。いいね、コメント、ご閲覧くださいました方に感謝と御礼を。失礼の段、何卒お許しくださいませ。
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