不思議な訪問者【毎週ショートショートnote「告りびと」】
(584字)
「あなたにお伝えするべきことを預かりましたので、お訪ねしたのです」
突然現れた人物は、唐突にそう告げた。誰だ、そう問う前に、それは続けて語りかけてくる。
「託された言葉を伝える前に、まずは見てほしいものがあるのです」
着いてきてください。
そう言って、それは私を誘った。
誘われ、辿り着いたのは、小さな丘の頂だった。見上げれば空、見おろせば街並み。何ということもない風景が広がる。こんなところで一体何をしようというのだ、こいつは。
「まだ思い出せませんか?それとも……もう忘れてしまったのかしら」
思い出す……何を思い出せというのだ。……いや、これは……もしかしたら……
ああ。そうか、そうだったのか。
「面差しが随分変わっていたから、直ぐには分からなかった。わざわざ確かめに来たのか?こんなところまで……玄武」
妙齢の女性にしか見えぬ冬の守り手は、私の言葉を聞いて笑った。
「私の心から預かった言葉を伝えるために来たのよ。確かめるまでもないでしょう……朱雀」
私は夏、彼女は冬の守り手。この世界に身を潜ませ、人の姿に身を変えながら、時の巡りを維持する者だ。
「次の間合いがいつになるのかは分からないが。その時が来たら一時お前と過ごそう。改めて誓うよ」
人ならぬ身。人ならぬからこそ、人以上に愛しさを抱く。時の守り手が担った臨時の役割。その名は、告りびと。
参考:
「名告り(なのり)」の意味や使い方 わかりやすく解説 Weblio辞書
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