見知らぬ毒に恋をする【毎週ショートショートnote:お題「曼珠沙華は恋をする」】
たらはさん、お題をありがとうございます。貼付記事以下、参ります。
(493字)
manjusaka、天界に咲く赤い花。人の生きる大地ではなく天に咲くというならば、それは散華であるのかもしれない。蓮の花よりも、ヒガンバナ、曼珠沙華の方がそれにはずっとふさわしい。
暑さ冷めやらぬ日々、夏という牢獄に閉じ込められている。照りつける太陽を見つめることは適わず、足元に視線を落としながら、とぼとぼと歩いていた。たどり着くのは袋小路のそのまた奥で、先の展望など、どこにもありはしなかった。
したたり落ち、顎から地面へと垂れていく汗に西日があたる。透明なはずの液体が、どことなく血の色を帯びているように見えた。
曼珠沙華は罪作り。
昔どこかで聴いた記憶のある流行歌の一節が、耳朶をゆらして消えた。
あの花をLycorisと名付けた人は、きっとすごい嘘つきね。
私にそう呟いた人は、どこに消えてしまったのだろう。赤い夕日が似合う人だった。ヒガンバナが好きだと言った人だった。
曼珠沙華、リコリスの学名を持つ不思議な花は、やがてその根元に球根を宿らせる。地下にふくよかな毒を隠し持ち、私がそのlycorineを飲み下すのを、静かに待っているかのように。
#曼珠沙華は恋をする
#毎週ショートショートnote
#お題で書いてみた
#ショートショートnote
#ショートショート
#キリトリセカイ
#オリンパスカメラ
数年前、植物公園の温室で撮影した曼珠沙華、ヘッダー記事以外のものを。当地、北海道でヒガンバナの姿を直接見ることは(市販の株以外では)珍しいと思います。

©Harunaga Mutsuki
いいなと思ったら応援しよう!
拙稿をお心のどこかに置いて頂ければ、これ以上の喜びはありません。ありがとうございます。