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宇多田ヒカル・THE FIRST TAKE、2曲。

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YouTubeのTHE FIRST TAKE。様々なアーティストが登場、その場で「一発録り」して歌を披露するYouTubeチャンネルです。Singerの貴重な生の歌声を聴くことができ、アルバムとは違う面、コンサートよりも日常寄りの姿を垣間見ることができます。



前段として


THE FIRST TAKEに登場した宇多田ヒカル。二曲を披露しています。十代でリリースした初期の名曲「First Love」と、新曲「Mine or Yours」です。


First Take、一発録りなので、ヒカルがピアニストと出だしの確認をするなど、しばし無音の近い部分が冒頭にあります。「Mine or Yours」について取り上げた解説記事をリンクします👇

THE FIRST TAKE
この瞬間は、二度とない。

宇多田ヒカル – Mine or Yours / THE FIRST TAKE – THE FIRST TIMES  より引用


成熟した「First Love」

「First Love」から宇多田ヒカルを好きになったファン、リスナー層も多いのではないかと思われる名曲です。
FIRST TAKE の録音に表れたヒカルは、収録時期が夏だったのか、ノースリーブで涼しげでありつつ全身ブラックで固めた衣装で登場(パンツルック)。

「First Love」は、通常とは逆パターン的に、この曲にインスパイアされてNetflixオリジナルドラマ「First Love 初恋」が生まれるなど、多くの方面・人々から愛されるロングセラー曲。
歌われるのは、戻らない初恋への想いです。

ロングセラー曲、各種方面で優秀なレビューが挙がっているので、ここでは私見を。印象的に感じる1センテンスを引用します。

最後のキスは
タバコの flavor がした

First Love    作詞作曲:宇多田ヒカル  歌:宇多田ヒカル  より引用

覚えがあるなぁ……。心当たりがある方(今の20代前半以下の方ですと、ご時世的に該当せぬと思いますが)おられるのでは?と。
「おい、もっと他の箇所を挙げろ」との声を頂戴するやもしませんが。こうした何気なく感じるところに、宇多田ヒカルの言語センスが光ると思うのです。特別な単語は使っていないのに(今風に綴れば)「刺さる」ものが。

こうした、失ってからより深く濃く刻まれる記憶と想い。それを切なく歌い上げるバラードであり、グルーブ感に貫かれたボーカル。印象的に使われる低音、要所要所に用いられるファルセットは、ビブラートと共にはかなさと危うさ(消えそうで消えない)が漂います。
10代のヒカルは、そのただ中でじっとたたずんでいた。そして、40代である今、一発録りに望んだ宇多田ヒカルは。
その記憶を抱きしめ新たな愛を獲得しつつ、喪失のただ中にいる聞き手にそっと手を伸ばしている。

10代と40代の違い、それは「他者という存在の有無」なのではないだろうか。ヒカルが長期休業から復帰して、私はその思いを強くしています。

YouTubeなどでプロフェショナル(ボイストレーナー等)が見解を述べておられたのですが、ヒカルは「歌い上げない」のですよね。極力溜め込み、抑えている=情感を込めつつ、それを押し出さない。この「溜め」が切なさを増幅させているのかもしれません。


消費される自由「Mine or Yours」

First Love 収録より後に録られたこのTAKEでは、パステルイエローのニットにナチュラルホワイトのパンツ。日常着という面持ちで登場しています。ピアニストと視線で確認をした後、しばしリズムを整えて、歌が始まります。聴く私たちにはコーラスが重なり聞こえますが、実際のスタジオでは恐らくピアノだけでしょう(リスニングに用いるヘッドフォン内で伴奏を聴いていると思われますが)。

「Mine or Yours」は綾鷹のCMに採用されたことでも知られる、2025年初リリース曲。解説は以下より👇

曲の背景もあるのか、よりリラックスムードが全編を覆う、上記から言葉を借りれば「シティメロウ」な曲です。
「First Love」の段でも綴りましたが、復帰後の宇多田ヒカル、その歌詞の世界には「僕と君」が存在します。この二人は。
付かず離れず、そして、どこかが「ずれて」いる。「Mine or Yours」=わたしのもの?それともあなたのもの?」  とでも訳したら良いでしょうか。私のもの、あなたのもの。それは別々のもので。

昨日の僕は
僕が思う僕とはかけ離れていた
素直になれず君を泣かせる
やつには失望している

「Mine or Yours」作詞作曲:宇多田ヒカル 歌唱:宇多田ヒカル より引用

自分で自分(の行動)が掴めない。相手に応えることができない。理想とかけ離れ、掛け違っていく「ふたり」。それは悲しいことにも見えます。ですが、違っていても、すれ違っても、近くにいることはできる。そんな淡い希望も感じます。

そして「自由ということ」。
不自由、何かに縛られていた時は、そこへ不満をぶつければよかったけれど、その障害が取り除かれたとき、わたしたちは何を選ぶのだろう。何を思うのだろうか。

自由に慣れれば慣れるほど
不自由だって、どうして誰も
僕らに教えてくれなかったの
君はコーヒー 僕は緑茶、いつもの

「Mine or Yours」作詞作曲:宇多田ヒカル 歌唱:宇多田ヒカル より引用

「夫婦別姓」の語が歌われ、そこばかりに焦点が当てられてしまう「Mine or Yours」ですが、柱はやはり上記のセンテンスではないでしょうか。

これは私見ですが。
「自由をうたう」事柄が溢れかえる現代。幾ばくかの手間と金銭を費やせばそれが手に入るようにも見えます。けれど、それで埋まるものは、恐らく即興的で。その「効き目」が終わったあとで、強くなる空虚感。
だから選べない。あるけれど、本当のものが見つからない。それではない、の繰り返し。この段で記した「消費される自由」を私はそう見ています。

かつて、宇多田ヒカルは歌の中で、こう歌いました。

自由になる自由がある

真夏の通り雨       作詞作曲:宇多田ヒカル   歌唱:宇多田ヒカル  より引用

その自由は心を解放してくれるものではなく。けれど「Mine or Yours」は「First Love」のような悲痛さを湛える世界ではありません。歌の冒頭で「僕」が自分とは思えぬ行動を取ってしまうように、自分の心理もままならず、他者も世の中もままならない。けれど「いつもの」お茶を飲む平穏がある。この二律背反は、私たちの現実そのもののような気がします。
そうしたことを冷静に見つめる目を持つアーティスト。それが宇多田ヒカルなのだと私は感じるのです。


卓越したメロディメーカーであり、リズムに優れた曲を作るアーティスト、宇多田ヒカルの曲について、一素人が殊更に歌詞の意味を問うのはナンセンスだと考えますので、歌詞について考えるのはこの辺りで。

「Mine or Yours」は全編リラックスムードを大切に歌われます。出だしの柔らかなハミングから低音へと歌声が始まり、要所要所に軽やかなファルセットとコブシ、甘い声のハミングなどが曲に魅力的な表情を与えていると感じます。
心地よくリズムに揺られて聴きたい曲です。

収録最後、歌い終わりフッと呼吸を収めて、歌の世界から日常に戻った宇多田ヒカル。「ありがとうございました」とペコンと軽く会釈をする様子が印象的でした(これも普段の感じが出ていて素敵です)。


横に座るけれど、手も開けているけれど。
背中を押したり励ましたりはしない。
お茶は、淹れてくれるのでしょうけれど、きっと。

ずっと一緒にいたいけれど
毎日一緒はしんどいかも
なにかいるかい? 買って行くよ
君はコーヒー 僕は緑茶、いつもの

「Mine or Yours」作詞作曲:宇多田ヒカル 歌唱:宇多田ヒカル より引用

そんな距離感で。

それが「令和のUtada Hikaruサウンド」だ。そんな風に感じた THE FIRST TAKE、二曲でした。
私見独断、ここまでお付き合いいただきありがとうございました。

©2023-2025 Harunaga Mutsuki

余談:
レビューを書くと、どうしても3000字以上になってしまう💦私はPCで見る(読む)ことがほとんどですが、みなさまはスマホ閲覧でしょうか。1記事の文字数、適正量ってどの位なのでしょう……(自分で1000字縛りをしているのですが、縛られなくてもいいのかな🤔)長文が読みにくかったなら、申し訳ない次第です。

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春永睦月 拙稿をお心のどこかに置いて頂ければ、これ以上の喜びはありません。ありがとうございます。