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寄せる波のように【シロクマ文芸部:お題「砂浜で」】

小牧さん、お題をありがとうございます。貼付記事以下、参ります。

(本文701字)


砂浜で折れた枝を拾い、落書きを書いてみた。打ち寄せる波が、それを直ぐにかき消して、砂浜は元の姿に戻っていく。
雨上がりの朝、海岸へと足を向けた。目的は特にない。ただ、風に吹かれてみたかったのだ。

かつては巨大な岩盤だったかもしれぬこの砂粒が、その形まで削られ磨かれ、ここに運ばれて積もり、やがてこの砂浜となった。その果てしない歳月を思えば、自分が懊悩を抱えつつ歩んできたこれまでの時間など、打ち寄せる波の間隔、そのひとつにも及ばぬ観測できぬほどの瞬間であるのだろう。

些細な日常に振り回される、ちっぽけで意味を持たぬ存在。そして、どこまでも愛しい存在。哲学者めいた思考を笑いながら、しばしその思いに浸っていた。

積もる砂は、やがては地層となるものもあるのかもしれない。例えば地球の地殻変動により、長き時を経て地面が移動すること、あるいはマグマの噴出により海底に沈み、隆起により再び地表と化すといったようなことが。


人の言葉は時に無粋である。淡々と流れゆく時間、時にうねるそれをただそれとしてあらわすことができない。言葉をついやせば費やすごとに、目の前の光景、その真実からは遠ざかっていく。

そんなもどかしいものを媒介にして、私たちは繋がっていくのだ。

だから言葉はいまいましく、愛おしい。それを使う人間と同じように。

書物に記されることはない眼前の砂浜、その波が寄せては返す。私に関わりなく繰り返されるそれは、実は私の命、その源でもあるのだ。

形を得、その形を変え、目には見えぬ分子にまで分解され、その分子が集う。人も、人の社会も、それを生かす太陽系第3惑星も。

離れてはまた集う。

流れの中で、永遠の旅をしている。


このVTRを聴きながら書きました。


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©2023-2025 Harunaga Mutsuki


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春永睦月 拙稿をお心のどこかに置いて頂ければ、これ以上の喜びはありません。ありがとうございます。