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残された鼓動【毎週ショートショートnote:お題「カウントダウンする脈拍」】

たらはさん、お題をありがとうございます。貼付記事以下、参ります。

(  654 字)


「期限付きなんだ。時限、と言い換えた方がいいのかもしれない。それでも……会いたかった。もう1度だけ」

「あなた……本当にあなたなの?」と尋ねる前に、彼はそんな言葉で、この邂逅が叶った理由を話し始めた。


実際のところ、私には彼がこの世の住人ではなくなってしまったという実感が、いまだに持てずにいるのだ。この町を離れ、一時の旅路の中、永遠とわに旅立ってしまったなどと、聞かされたところで実感の持ちようがなかった。

「なんつーかさ、『お試し期間』なんだってさ。現世へのサービスってヤツ?まあ、よく分かんないだが。何にせよ、こうして君の隣りに少しの間いられることになった、というわけだ」
「……あの世も営業っぽいのね、ノリが」

彼は苦笑いしながら状況を語り、私はそれを聞いてクスリと笑う。本当は笑っている場合ではないのだろうけれど。二人で笑えるならば、それでいいではないか、そんな気がしていた。

いつもと同じように過ごしたいと願う彼の気持ちに添い、いつもと変わらぬ夕食のメニューをテーブルに並べた。カレーライス、リーフサラダ、ほうじ茶。ごくごく普通の。

「それがいいんだよ。ずっと……そんな君でいてくれよ」

眠りにつく前に、私の耳に届いた彼の言葉。聴き慣れた言葉が、本当の最後になった。目覚めたとき、わたしの胸の鼓動だけが、カウントダウンのように不規則なリズムを刻んで響いていた。


朝の光が窓から差し込んでくる。それを感じながら身を起こす。温もりと鼓動。それはひとりになっても、ひとつではなかった。不思議で忘れられぬ奇跡と共に。


   —  Fin —


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春永睦月 拙稿をお心のどこかに置いて頂ければ、これ以上の喜びはありません。ありがとうございます。