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生身の人間として

人生について学びなさい。人生を学べば、作るべき作品のスタイルは後からついてくる。(タル・ベーラ)

小田香さんの撮ったドキュメンタリー『FUKUSHIMA with BÉLA TARR』を観たという連絡を、昨年末、『アフリカ』や『WSマガジン』と縁の深いある方から受けました。これは伝えないと! と思われたんでしょう。上映されていたのは大阪のシネ・ヌーヴォで、私もかつてよく通った映画館です。その日、1回だけの上映だったそうです。さすが、渋いな! と思いました。

ハンガリーの映画監督、タル・ベーラを福島に招いて行った映画製作のドキュメンタリーだそうですけど、私は何を隠そうタル・ベーラの映画を1本も観たことがない。でも、話を聞いて、とても興味を持ちました。

そもそも、小田香という映画作家の話を、その人と少し前にしていたんです。というのも、小田さんの最近の映画製作を手伝っているらしい人たちと、私は以前、少し縁があったんです。新刊『夢の中で目を覚まして』にも出てくるんですけど、かつて空族の映画の撮影を担っていた高野貴子さんが、小田監督の作品にかかわっていたから、とりえず伝えなきゃ! と思われたのでしょう。

その小田香監督の新作『Underground』が3/1に公開になるのに先駆けて、東京は渋谷のユーロスペースで、これまでの小田作品をズラッと特集上映するらしい。それも観たいのですが、その前週(つまり今週)に、タル・ベーラのワークショップから生まれた作品集と、その噂に聞いていたドキュメンタリーが1週間限定上映されるというので、今日、まとめて観ました。

観て、やっぱり、というか、映画も、小説も、どんな芸術ジャンルであれ、ベースとなる考え方には変わりがないと思いました。タル・ベーラがそういうことしか言っていないことに、参加者として出てくる7名の映画作家たちは(その時には)気づいていないかもしれません。

彼は、自分がこういうことを言うと、相手がどう思うか、なんてことは重々承知のうえで言っているんです。

なぜ私がそんなことをわかるのかって? それは、もちろん、自分のやってきた、書くワークショップの経験から、そう確信できるんです。あの人は、この人かな、というパターン化すら出来る。でも、その人自身と接するときには、そんなパターン化の考えを捨て、生身の人間として付き合うんです。

それをタル・ベーラは身をもって示し、演じあげました。それが出来たのは、彼の信頼する弟子である撮影者(小田香)がそこにいたからでしょう。たったの1シーン、一瞬のことですけど、彼がクルッとカメラの方を向き、「あなたもそうだけどね!」と悪態をつく(?)ところがとっても印象深かった。信頼関係の中でしか起こりえない瞬間を、私も自分のこととして思い出したというか。

この話は、おそらく、『アフリカ』次号でじっくり、と思っています。

ところで、来週の「おかやまZINEスタジアム」でお会いするだろう小説家の本を、少しずつ読んでいました。今日、映画館で斜め前に座っている人が横顔を見せる瞬間があって、チラッと目に入ったのですけど、アッ! となりました。写真で見せてもらっていた、その小説家の顔、そのまんまなんです。思わず声をかけそうになりましたが、向こうは私のことを知らないはずだし、映画には集中したいし、その前に、ただのそっくりさんである可能性が高い。今回も昨年と同様、イベント参加は"ついで"の話であって、旅がメインです。映画館で幻に見るくらい集中してきたな、と思ってほくそ笑んでいるところです。

(つづく)

夜の航海(撮影・守安涼)

守安涼の新刊『夜の航海』、発売したばかりです。著者が昨年久しぶりに発表した短篇「センダンの向こうに」掲載の『アフリカ』vol.36とのおトクなセット販売もあり。他、下窪俊哉『夢の中で目を覚まして - 『アフリカ』を続けて①』ナドいろいろあり〼


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