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【地獄の出入り口〜李信との再会】



【地獄の出入り口〜李信との再会】

閻魔大王に一礼したカンダタは獄卒であるかつての主君、子嬰と共に地獄の出入り口へと歩みをはじめた。
カンダタの身を縛っていた首輪も、手足の枷はもうない。

鎖は外され、薄汚い褌も脱ぎ捨て、今のカンダタは質素ながらも清潔な作務衣をまとい、歩いていた。

「……次の転生先は、東夷の島国、倭国かあ、、、」

カンダタは一言こう呟いた。

「うむ。今は“日本”と呼ばれておるなあ。だが、なかなか悪くはない国だ。唐の面影を残す奈良や京都もある。お前のような者には、心の拠り所にもなるやもしれぬ」

「左様でございますか……」

子嬰は一歩前を歩きながら続ける。

「だがなカンダタ。中華にせよ倭国にせよ、所詮は人の世。善も悪も紙一重だ。心して歩まねば、再び地獄の門をくぐることになるぞ」

「はい。肝に銘じております」

やがて彼らは、巨大な黒鉄の門――地獄の出入り口に辿り着いた。

そこではすでに一人の男が待っていた。

男は2人の姿を見つけるとまずは獄卒、子嬰に跪き一礼した。

「子嬰様、お久しぶりでございます。」

それから立ち上がってカンダタに語りかけた。

「おい、カンダタァ!! やっと出てくるのかよ!」

軽快で、風のようにまっすぐな声。
その男の顔を見た瞬間、カンダタの目が見開かれた。

「李信……!」

「よう、元気そうじゃねぇか。いや、元気ってのも変か。……まあ、生きてねぇしな、まだ」

「……お前、なんでここに」

「お前が出てくるって聞いてな。あえて降りてきたんだよ、上から」

「“上”って、もしかして――」

「そう。輪廻から外れて、俺は今は縁覚声聞界だ。でもお前が地獄から出るって聞いてな、これは行かなきゃと思ってさ」

「……相変わらずだな、お前は」

「お前こそ変わってねぇな、カンダタ。外見はボロボロだが、根っこはまだ腐ってねぇ。――その目してりゃ、まだやれるよ」

カンダタはうつむいた。

「素直にすげぇ、李信はほんまに真っ直ぐだしココロに邪なとこ全く無いもんなあ⭐︎」

「へへ、まぁお前は唐の時代……ほんまにやりすぎたな、、、せめて唐の時代に俺もお前と共に転生していれば、、、」

「言うな」

二人は目を合わせて、少しだけ笑った。
それは戦場を共に駆け抜けた者同士にしか交わせない、魂の会話だった。

李信は、ふっと表情を引き締めると拳をカンダタの胸に軽く当てて言った。

「俺からは特に何も言わねぇ。――人間界でしっかり生きて、絶対更に上がって来い。二度と地獄になんか戻るなよ!」

「わかった、ありがとう」

「ははっ、そんときゃ上の世界で飲むぜ。秦の酒でも唐の酒でもお望みのもの出してやるよ。あの頃みてぇにな」

二人は固く拳をぶつけ合った。

そして、李信はひらりと手を挙げて、霧の中へと消えていった。

「……あいつ、ほんとに風みてぇなやつだな」

カンダタがぽつりと呟くと、後ろで子嬰が一歩進み出た。

「さあ、門が開く。行くがよい」

「……ありがとうございました、子嬰様」

深く一礼し、カンダタは地獄の門をくぐる。

その背中に、もはや鉄の枷はない。
だが彼はまだ知らない。

あのとき閻魔大王が子嬰に枷の解除を命じた後――
自らの手を静かにかざし、見えぬ枷を魂に刻んだことを。

それが、**「発達障害」**という名の、生まれつき背負う課題であることも。

だがそれでも、カンダタは顔を上げる。
地獄から抜けた風が、彼の髪を揺らす。

「李信…いずれまた会おう、、、」

その想いを胸に彼は地獄の門を抜け現世へと歩き出した。

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