「勝手に唾が出てくる甘さ」KAAT×城山羊の会(@KAAT中スタジオ)作・演出:山内ケンジ
「勝手に唾が出てくる甘さ」KAAT×城山羊の会(@KAAT中スタジオ)
作・演出:山内ケンジ
出演:松本まりか じろう(シソンヌ) 岩谷健司 、中山求一郎 湯川ひな 三木万侑加 岡部たかし

本公演は全席完売。しかし、当日券が若干出ているみたい。シソンヌのじろうさんのファンが多いような印象!いつもNHKのコント番組「LIFE!」でのじろうさんの芝居が素晴らしい。シソンヌの相方がじろうさんが舞台で演じることが好きでコンビでやること以上に芝居を優先するんです!とある番組でおっしゃっていた理由がこの舞台などを見るとよくわかる。東京03の角田さんなども含めて、お笑いの世界には俳優としての才能豊かな方がおられる。個性的で印象に残る。おおげさな芝居をせず、しかも高いレベルで芝居をすることが出来るお笑いの芸人さんがいる。
実は、最近、吉本興業の功罪について考える。特に、大阪に戻って感じるのが、吉本流的な方法論がデフォルトになっていて、それがある昭和な時代で止まっていること。そこからの多様性や新たなことなどがなかなか起きにくくなってきているのは、それを良しとして受け入れる、大阪人たちの民度なのかもしれない!そして、新たなことをやろうとする吉本などの芸人たちは結局、東京に行き活動している。これからは大阪の周縁から新たなものが生まれてくるのかもしれない。京都や豊岡などにはその可能性を感じる。そして商業主義的な方法論だけでは生まれないものを、昔の関西は旦那衆が面白がって育ててくれていた。今では、その部分がなくなってしまい、やや人口が多い地方都市なだけではこれからの希望が見えない。その功罪について考える。
そういう意味では、大阪では、本公演みたいなものが生まれにくいのではないか?KAAT×城山羊の会は3年前だったかKAATで上演されていて、その公演にもじろうさんが出演していた。https://haruharuy.exblog.jp/32877457/
そして、再度の登場をされたのは、本公演に出ることに意義や魅力をじろうさんが感じたからではないだろうか?商業的な観点だけだと大きなメリットはない公演かもしれないが、それを上回るような経験が得られるのだろう!この歳(63歳)になって思うのは、対価以上に、その経験によって得られる何か?人間的なるものやココロの栄養なるものに価値を見出す人も増えてきているのではないか?そういう意味ではこの国は成熟して来ているように思う。そうして、じろうさんファンが初めて舞台を見たりして、ああ、こんな世界があるんや、そしてじろうさんはそういうことを積極的にされているんや!ということが見えることも長い目で見るととても重要なことではないか?とこの歳(余命何年か???)になると思うのです!まさに一期一会。
アップライトピアノが置かれており、三木万侑加がその前に座りピアノの演奏が始まる。いきなり歌のシーンから始まるのは見てのお楽しみ。ここは音楽のレッスンスタジオでそこでじろうさんをはじめ、岡部たかしや、岩谷健司さんが一緒に歌の練習をしている。この曲を作曲した若き詩人の中山求一郎も立ち会っている。詩人の中山はピアニストの弟。
このキャストにじろうさんの妻の役の松本まりか。そして、岩谷さん(今回は歯科医の役)の娘の湯川ひな(彼女は詩人のファン)、の7人の芝居!折込に作・演出の山内ケンジさんがお書きになっていたが、まさにこのキャストだから出来ることは何か?どういう芝居をしてもらうのがいちばんいいのか?どういう人間関係を構築すると舞台が面白くなるのか?みたいなパズルを解くように創作されたのではないか?なので、キャストが変わるとその内容も変わる。いちばん純粋な創作のスタイル。商業主義的な事情がたくさんある制約の中で出来ることには限界がある。もちろん、それを面白がれる人もいるかもしれない。制約の中で、その怒りか何かのエネルギーからより面白いものをという「ラジオの時間」(三谷幸喜脚本の舞台で映画化もされた)的な展開が生まれればいいのだが…。
本作では今、しきりに言われるようになって来た、ルッキズムの問題(見た目を話題にすること)やセクシャリズムの問題などに関することが取り上げられている。いまは、そうしたことを口にすることがタブー!みたいな時代になってきている。私もその傾向が急進的になりすぎて、「そういうことを言うな!原理主義!」みたいになっている現状に息苦しさを感じている。それは、誰それの問題ではなくて、時代がそういう風になっていったということ。もちろん世代によっても変わるし、その人のキャラクターによっても変わってくる。岩谷さんはそんなことを気にせずに言うおじさんという設定。それらの設定をベースに会話や関係性の微妙な空気やずれが生まれてくる。笑いが起きる。そこは、まさにシチュエーションコメディである。大きな声で「ごめんくさーい!」と言わんでも、おもろくなるで!と原理的な大阪人たちに伝えたい(あくまで、私見です)。見たらわかる。ウッディ・アレンや、ビリー・ワイルダー的なおかしみもある種の品性のある笑いとしての普遍性がある!その関係性の変化を登場人物のキャラクターにうまく重ね合わせて描かれていることである種のリアリティが生まれ、それが観客を引き込み、その場の空気をダイレクトに感じられるようになる。生で見る演劇とはまさにそういうことなのでは?そして中スタジオという商業的にはキャパの小さな場所で行うからこその空気の共有ということも実は大切なことなのだ!ということが実感として伝わってくる。松本まりかの持つ大人のエロチシズム。(「花様年華」の映画のような。)そして、湯川ひなの持つ若さゆえの魅力、若い男の未成熟なあやうさ、そして大人の男たちの三者三様のキャラから発せられる言葉。ピアニストの姉の弟に対する想い!などがないまぜになって観客に迫ってきます!
そして、歌のシーンは山内さんが以前手掛けておられたコンコルドのシリーズのTVCM(静岡限定)を思い出した。
上演時間1時間50分、11月30日まで。公演詳細は以下、当日券情報も書いてあります。
https://www.kaat.jp/d/shiroyagi2025


