映画「アジアのユニークな国」2025年日本(@大阪十三 シアターセブン)
脚本・監督・編集:山内ケンジ 上映時間77分。
城山羊の会の舞台で有名な劇作家・演出家の山内ケンジさん。時々、劇映画も制作をされている。最近は自主映画の手法で、半径数百メートルで作品を創っている。その最新作が大阪の映画館でも上映されており、見に行った。
見終わって、「汝の隣人を愛せよ」という言葉を思い出した。主人公である鄭亜美は聖母なのではないか?すべてを受け容れ赦す。鄭さんと岩谷健司のベッドでのシーンが嘆きのピエタ像にも見えてくる。鄭亜美は夫(金子岳憲)の実家に年老いた義父(山内政勝)と一緒に住んでいる。高齢の義父の世話をしながら夫が働きに出ている日中に、自宅で無免許での風俗営業を行っている。入れ替わり立ち替わり男が鄭のところにやって来て、その合間に義父の世話をする。その上顧客の一人が岩谷健司。
失われた30年を過ぎ、先進国ではもはやなくなった我が国。一流の先進国と言う思い込みが、いまだにこの国にあることが、この国をいびつなものにしているのではないか?もう、下り坂をそろそろと降りてアジアの一つの国として生きていけばいいのに!というメッセージが聴こえてくる。アジアのユニークな国という捉え方がユニーク。
この国には美味しいお肉もあるし美味しいお寿司もあるし、しかも簡単に手に入れることが出来るのも事実。
一流国であり続けなければならないという気持ちが分断を生み対立を生むのではないか?そんなことを忘れてもっと気楽にやっていきましょう!と逆説的におっしゃっているのではないか?包摂(Inclusion)という言葉があるが、いろんな人たちを包み込んで倫理観さへも乗り越えて生きて行きましょう!という偶像の姿が、まさに鄭亜美さんのことではないか?
同時に、その対立構造としての世間としての隣人が描かれる。鄭亜美の家の隣に住む離婚してシングルマザーになり、小学生の息子とくらしている岩本えり。彼女が頻繁に訪ねてくる男たちと二階の窓から聞こえてくる男女の喘ぎ声が気になって仕方がなくなっていく。この様子がSNSなどの監視社会のように思えてくる。
シニカルに現代日本の現実を見つめながら描かれる世界がどこか寓話的。演技のうまい俳優たちが自然体で真面くさって演じることが笑いになる。個人的な白眉のシーンは久兵衛の寿司のお土産の紙袋を手前に配置した濡れ場カット!笑
独特の後味を醸し出す、ある種の奇特で笑えるカルトな映画。これだけの俳優が集まって自主製作が出来ていることがすごい!大阪以外にも全国での上映が拡がっている。最近はこうした独自性のある映画を上映しようという映画館が全国に拡がっていると思うのだが、気のせいなのか?そうじゃないのか?詳細は以下

