もう少しだけ気づいてほしかった、と思う相手がいる
一生懸命やった。
誰かに頼まれたことじゃない。自分で「これをやっておこう」と思って、少し早く準備を終わらせた。細かいところまで、きちんと整えておいた。
それを見ていてほしかった相手が、一人だけいた。
「ありがとう」が来なかったわけじゃない。ただ、その人は気づかなかった。声に出して言いたかったわけでもない。ただ、あの人にだけは、もう少しだけ気づいてほしかった。
そう思っている自分を、すぐに打ち消した。「見返りが欲しくてやったわけじゃない」と。
でも夜になって、その「気づいてほしかった」が、少しだけ胸に残っていた。
特定の誰かに気づいてほしいと思うこと。それは、その人をそれだけ大事に思っているということでもある。どうでもいい相手になら、気づかれなくても何も感じない。
気づいてほしかった、と思える相手がいる。それは、関係がまだ生きている証だ。
頑張ったのに、その人に届かなかった日は、ちゃんとさみしい。そのさみしさを「大したことない」にしなくていい。
今夜は、自分だけが知っている。あの準備を、あの気づかいを、自分が確かにやったことを。
その人がいつか気づくかどうかは、今夜は手放していい。やったという事実は、誰かの目に映らなくても、ちゃんとここに残っている。
