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【名盤列伝:37枚目】The Hassles(Billy Joel)『Hour of the Wolf (2nd)』ビリー・ジョエル物語② text by Starman

世間はゴールデンウィーク真っ只中!

最近はイラン情勢による物価高の影響もあり、遠出せず自宅でのんびり過ごす方も多いそうです。平凡な日常に変化を付けるなら、是非レコードに針を落としてみるのはいかがでしょうか?

かくいう筆者も、連日盤を回し続け、ゴールデンウィークならぬ「♪ ゴールデンイヤーズ」とも言うべき毎日を過ごしております。そして!本日も、五月病を吹き飛ばすようなエネルギーに満ち溢れた盤を御紹介致しますので、最後までお付き合いの程、よろしくお願いいたします。

以前、ビリー・ジョエルが在籍していたバンド「The Hassles」の1stアルバムを御紹介致しましたが(お読みでない読者様は以下をどうぞ!)

こちらは、その次のアルバム。1968年にリリースされた「Hour of the Wolf」で彼らの2ndアルバムになります。

中心に大きな狼をデザインしたサイケなジャケット

前作同様、国内キングレコードからリシューされたアルバムですが、2ndアルバムである本作に「イン・ザ・ビギニング」と言う邦題が付けられているのに対し、1stアルバムである前作の方に「イン・ザ・ビギニング Vol.2」と書かれている逆転現象が起きております。当時の担当者が1stと2ndを間違えた可能性も否めませんが、「2ndアルバムの方を優先して聴いてほしい」という思惑があったのでは無いかと推測しております。

邦題は「ビリー・ジョエル・イン・ザ・ビギニング」

前作ではビリーのオリジナル曲は3曲のみでしたが、なんと!本作では収録されている8曲全てに「W.Joel」とクレジットされております。たった1年でここまでソングライターとしての才能を発揮するとは!と後の大活躍を考えれば納得してしまいますが、そのサウンドは如何に!?それでは盤に針を落としていきましょう!

A-1「Country Boy」最初から聞こえてくるビリー・ジョエルのヴォーカルはどうでしょう!前作以上に堂々としており、ソングライターとしてのみでなく、ヴォーカリストとしての実力も格段に上がっている事が良く分かります。John Dizekとの掛け合いも健在で、1曲目から、汗のほとばしるロックサウンドとなっております。サウンドのアプローチはオルガンを中心としたヴァニラ・ファッジ的なものであり、前作におけるトラフィックの影響から、少しずつ「アメリカンロック」としてのサウンドを確立してきたと言えるでしょう。エンディングでフェードアウトする直前、ビリーによるシンプルなピアノソロが入っています。この曲では、ピアノの音は最後にしか入っていないのですが、短いながらも哀愁があり、実に粋なアレンジです。これはビートルズの「Magical Mystery Tour」を意識したものではないか?と推測しております。

A-2「Night After Day」は、アコースティック・ギターとベースの伴奏に、クラシック的なホーンが加えられたシンプルなサウンドです。ビリーの少し鼻にかかったヴォーカルは、後々のスタイルに通じておりますが、ソロ作品に比べるとシンプルでリラックスしたアレンジで、カントリー的な土の香りもします。その「ゆるさ」が「The Hassles」ならではの魅力と言えるでしょう。

A-3「Hour of the Wolf」は、アルバムのタイトルにもなった12分に及ぶ大作。ここではビリー・ジョエルのピアニスト&ソングライターとしての存在感が「やりすぎ」と感じる程に大爆発しております。当時10分、20分を超える長尺の曲を録音するバンドは多かったですが、この曲に関しては「ビリーが書いたメインとなる曲」の間に、ギターやドラムソロ、更には犬の鳴き声風のヴォーカル(曲名のWolfからすると狼の鳴き声か?)や笑い声を加え、何とか長尺の曲に仕上げたような印象です。

Richard McKennaの歪んだリードギターも存在感を示そうと頑張っており、程良いサイケ感を出していますが、ビリーの叩きつけるような、時にクラシカルで激しいピアノプレイの独自性の前に霞んでしまう印象です。当時のアメリカン・ロックで、ここまでピアノ・ソロを全面に押し出したサウンドは珍しかったと思うのですが、本作が全く売れず、日の目を浴びなかった事が悔やまれます。

A-4「Four O'Clock in the Morning」は、ブルース的なシンプルなコード進行で、黒人を意識して歌うビリーは非常にリラックスしており楽しそうです。これまでビリーの存在感が全面に出ていた本作において「バンド」としての纏まりを感じさせる曲でしょう。

後のソロ作品では「ブラックミュージック」の要素を薄め、非常に洗練されたロック・サウンドを作り上げた一方、この曲のようなシンプルでルーツ色の強いサウンドが聞かれなくなった事を残念に思います。

それはB-1「Cat」でも同じ事が言えるでしょう。この曲ではジャズの要素を取り入れ、ゆったりとスウィングしたサウンドは、本作の中でも格別の出来です。ライブで「New York State of Mind」を歌う際にサングラスを着用する程、レイ・チャールズをリスペクトしているビリーですが、この曲では「軽く歌う時のレイ・チャールズ」の歌声を明らかに意識しております。「憧れのミュージシャンのように歌いたい!」と言う気持ちは痛い程分かります。

そして!ビリーの流れるような美しいオルガンソロに続く、Richard McKennaによるギターソロが実に素晴らしい!バンド内では音を歪め、当時の音楽シーンに寄せたサイケデリックなサウンドを作り出していますが、実は元々ジャズの人だったんじゃないかと思う程の出来栄えです。この曲のように「ジャズを中心とした方向性」でアルバムを制作すればどうなっていたか・・・・と、決して聴く事の出来ない幻のサウンドを想像する筆者です。

その後、B-2「Hotel St. George」、B-3「Land of Despair」、B-4「Further Than Heaven」と続きます。どの曲も後のビリー・ジョエルに通ずる美しいメロディを持っております。B面ではピアノの音が殆ど入っておらず、ビリーのオルガンの音がが全面に出ております。特に後半はその傾向が強いですが、逆に言うとアレンジがほぼ同じになっており、ビリー以外のメンバーの演奏が目立たなくなっているように感じます。

・・・全てを聴き終えた印象としては、まず、前作において、ビリー・ジョエルと共にリードヴォーカルを務め、さながらサム&デイヴ的な熱い掛け合いしていたJohn Dizekの歌声がほとんど聞かれません。1stアルバムでは、各メンバーが非常にバランス良く存在感を発揮し、デビュー作特有の初々しさとほとばしるエネルギーを感じましたが、本作では、ビリーの個性が強く出ている分、1バンドとしての統一感が失われているように感じます。

ビリー・ジョエル個人のファンからすれば、当然、「全曲オリジナル&リードボーカル」の本作、2ndアルバムを好む傾向が強いでしょう。だからこそ当時の日本では、本作を「イン・ザ・ビギニング」として最初に再発したのでは無いでしょうか。勿論、ピアノやオルガンの音が多く、メロディも豊富ですので、プレイヤー的にもソングライター的にも学びのあるアルバムだと感じました。

しかし!バンドとしての魅力、そしてロックミュージックとしてのエネルギーを感じるのは断然「1stアルバム」と言えるしょう!

この両方のアルバムを順番に聴くことで「希望を抱き、成功を夢見た若者達」が「何か新しいサウンドを作らないと」と模索する中で、メンバーのパワーバランスが崩れ、解散へ向かうまでのリアルな人間模様が痛い程に伝わってきます

僅か二枚のアルバムを残し、ロックシーンから消えて去ってしまった「The Hassles」。しかし、そのレコードに刻まれたサウンドから、「前に進む為のエネルギー」を感じ取る事が出来るのでは無いでしょうか。「ビリー・ジョエルが在籍していたバンド」としてでは無く、一つのバンドとして、改めてその熱いサウンドを聴いて頂ければ幸いです。

アナログ盤で見かけたら買いですよ!

今回も最後までありがとうございました!

編集部ライター『Starman A』(P)2026

編集長『MASH』が経営するギター専門店『Jerry's Guitar』公式サイトはコチラ

編集長『MASH』と『Starman』のバンド『マッシュルーム・ハイ』活動ホームページ!

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